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Visageまとめ考察

以下Visageのネタバレ・憶測を含む内容となっております。
閲覧は自己責任でお願いします。

3つの章+αで構成されているVisage。
先ずは3つの章のストーリーについてまとめていく。

ルーシーの章


ルーシーにはイマジナリーフレンドなる空想上のお友達がいた。

イマジナリーフレンドとは所謂、"空想上のお友達"。
主に児童期にみられる症状であり、成長に従って消失するとされている。

ある時、イマジナリーフレンドの命令で飼っていた鳥を殺したルーシー。
娘の奇行を心配した両親は、専門家(=精神科)にルーシーを診てもらうことに。

しかし、両親の努力も虚しくルーシーの症状は悪化。

ルーシーはイマジナリーフレンドの命令により、自身で自身の顎を引き裂いて自害した。

ドロレスの章


育児ノイローゼにより、統合失調症を始めとする様々な精神病を抱えていたドロレス。

夫・ジョージの献身的な支えも虚しく、やはり症状は悪化。
ジョージに殺されるという妄想に取り憑かれたドロレスは夫を殺害する。

そして、赤子を置いて首を吊り、ドロレス自身もこの世を去った。

ラカンの章


視線恐怖症を患っていたラカンは自宅で発砲事件を起こし、精神病院へ入院。

しかし、先の二人と同様に症状は悪化。
職員に暴行を加えるなどの問題行動を起こし、隔離病棟へ。

そして、最終的に地下に放置されてしまう。

主人公の正体


Visageでは、3つの章を終えると自動的に主人公の章へ突入する。
章のストーリーを解説する前に、先ずは主人公は何者だったのかについて考察していく。

主人公の名前

ステージ「Addiction」で主人公は覆面男に「ドウェイン」と呼ばれており、ステージ「Greed」では書面に「Dwayne Anderson」と署名している。
この事から主人公の名前は「ドウェイン・アンダーソン」であるということが判明する。
当然ではあるが、メインの邸宅内にはこのDwayne Anderson宛の封筒が散乱しており、あの家が主人公の家である事がわかる。

主人公の職業

では、主人公であるドウェインはどの様な人物だったのか?

ステージ「Pride」の実験室にあるスタッフリストにはドウェインの名前が記されている。
このリストからわかるように、彼はかつて化学実験室の研究スタッフであった。

研究内容について

では、ドウェインは何の研究をしていたのか?
作中で明言はされていないが、いくつかのヒントを元に考察していく。

Keyword.1 精神病

章の3人を見てわかる通り、ルーシー・ドロレス・ラカン共に精神病を患っていた。
そしてそれは主人公のドウェインも例外ではない。

ドウェイン自身も何らかの精神病を患っていたというのは、作中のアイテムであるピルケースが「ドウェインに処方された」「向精神薬」であることから推測できる。
また、このピルケースの処方した医師の欄には「アンドリュー・スミス」の名前もある。
先のスタッフリストに彼の名前もあることから、彼らがかつて同僚だったことがわかる。

ちなみにラカンの章にもスミス医師が出てくるが、彼のフルネームは「スミス・ウォルター」なので別の人。

Keyword.2 LSD

ステージ「Pride」の実験室に掲げられている化学式。
これは、幻覚剤でも名が知られている「LSD」のものである。

Keyword.3 年代

先のリストを見るに、ドウェインは1952年に研究を開始している。

そして隣人ローズの狂気が描かれているアメコミ「NEIGHBORS」。
この内容が正しければ、ルーシーが亡くなったのは1961年、ドロレスがあの家に引っ越してきたのは1962年、ラカンがあの家に住んでいたのは1962〜1970年であることがわかる。

以上のことからVisageの舞台が最近ではなく、1952年〜1970年と少し前の話であったと考えられる。

Project MK-ULTRA

「精神病」「LSD」「年代」…このキーワードから察するに、VisageはMK-ULTRAを題材にしているのではないかと推測できる。

Project MK-ULTRAとは1950〜1960年末までアメリカで実際に行われていた研究プロジェクトの総称である。

この研究の目的は主に「自白を目的とした洗脳」で、非倫理的な人体実験を様々な形で行っていた。
その数ある実験の内の一つが「LSDの投薬実験」だ。

この実験の被験対象者には精神病患者も含まれており、本人の同意なく実験が行われることもしばしば。

また、このプロジェクトはCIA指揮のもと秘密裏に行われており、研究員の中には自身の研究が何に使用されるか知らない人間もいた。

以上のことからドウェインは、非倫理的な実験に使用されるとは知らずに、そういった薬の研究を行っていた研究者であったと推測できる。
そして、ルーシー・ドロレス・ラカンはそうとは知らされないまま実験を施された被験者だったのだろう。
そう考えれば、なぜ治療していたのにも関わらず、3人が凄惨な最期を迎えたのかも納得できる。

主人公の章


主人公の正体がわかったところで、ドウェインの章のストーリーを解説していく。

  • Pride(傲慢)

ある時、自身が誇りに思っていた研究が、非倫理的な実験に使用されていると知ったドウェイン。
しかし、彼はその事実から目を背ける。

毒ガスが徐々に満ちていく実験室から脱出するこのシーン。
自身の研究が人のためどころか害を及ぼすものだったこと、そしてその現実から逃げたことの表れだと思われる。

このステージのタイトルが「Pride」であることから、ドウェインは恐らく自身の研究が人々を救うと信じて疑っていなかったのだろう。
その恐るべき本来の目的を知った時のドウェインの衝撃は計り知れない。

  • GREED(貪欲)

自身の研究で被害を被った被験者の存在を知るも、ドウェインは必死で「自分には関係ない」と言い聞かせる。

ドウェインが署名したこの書類。
「YOU DON’T GIVE A FUCK」は「お前には関係ない」という意味のスラング。
その書類に署名したということは、ドウェインが貪欲に一連の事実から無関係であることを求めたということだと思われる。

  • ADDICTION(中毒)

しかし、罪悪感から逃れられなかったドウェインはアルコールに逃げ、更には向精神薬を服用するようになっていく。

ちなみにこのシーンで会話することになるペストマスク。
その不気味さからホラー等で度々使われるが、ペスト菌もかつて人体実験に使用されてたことから、ドウェインの研究に対する示唆とも取れる。

また、この物語がドウェインが自身の記憶を取り戻す物語であることを考えると、ペストマスクもドウェインの一部であると考えられる。
人体実験を間接的に手助けした象徴として、ペストマスクという形を取ったとしても不思議ではない。

  • NEGLIGENCE(過失)

次第に、愛しかったであろう家族も蔑ろにするように。

  • INDIFFERENCE(無関心)

そうやって現実から目を背けてきたドウェイン。
だからといって解放されることはなく、不安に苛まれ続ける。
自身を心配する家族の声すら呪いの言葉に聞こえるようになっていった。

一度鎖の外れた扉が再び閉ざされるのは「あらゆる方法で現実逃避したところで解放されない」ということの表れだろう。
またその後のシーンの大量の紙には「Guilt(罪)」「Hatred(憎しみ)」「Grief(悲しみ)」「Depression(鬱)」「Afraid(恐怖)」「Soulless(無情)」「Anxiety(不安)」と言ったドウェインの心境を表す言葉が並んでいる。

  • AFFLICTION(苦悩)

蓄積された心の澱に耐えることができなかったドウェインは、闇に引きずり込まれてしまう。

社員証まであり、意味あり気な雰囲気を醸しだす下水処理場だが、単に心の澱が流されず溜まっていく様子を示していると思われる。

MK-ULTRAの遺体処理についての詳細を知ることがかなわなかったので何とも言えないが、被害者の姿のイメージが散見されることから、この様に処理された可能性もある(?)

  • PRISON(牢獄)

そして心の牢獄に囚われてしまったドウェイン。
出口の先(=ドウェインが出した結論)は…

拳銃による一家心中。
ドウェインは以上の経緯から、冒頭のシーンの行動へと至ったのだろう。

プレイヤーが操作するのは、生前に現実や家族、果ては自身にすら目を背け続け、自分が何者なのかわからなくなってしまった=自身を表す顔(フランス語でVisage)を失くしたドウェインの亡霊ということである。

作中、冒頭の一家心中シーン以外でドウェインの姿(手などの体のパーツを含む)を見ることはできない。
これは仕様ではなく、ドウェインが実体を持たない亡霊であったことを示していると思われる。

エンディング


すべてのストーリーの解説を終えたところで、エンディングにはどの様な意味があったのか考察していく。

主人公の章で明かされた通り、一人で家の中を彷徨うことになったドウェインの亡霊。
そこで彼は、ルーシー・ドロレス・ラカンといった、自身の研究の被害にあった者の末路を辿り、VHSテープによって自身の行いを顧みることになる。

それによって集められたアイテムはプログレスルームの祭壇に送られる訳だが、この祭壇の隣は懺悔室となっている。
つまりゲーム内でドウェインが行った一連の行動は、懺悔の役割を果たしていたと思われる。

そうして自身の犯した忘却という大罪を悔い改め、自身のVisageを取り戻したドウェインは成仏し、あの世ではあるが家族と再会することができたのだろう。

おまけ1:ラカンについて


ドウェインの行っていた研究が先に述べた通りだとすると、ラカンの章の見方が変わってくる。
実際どこまでラカンが理解していたかは謎であるが、自身に行われているのが治療ではないことにラカンは薄々感づいていた可能性がある。

彼が暴れていたのも決して妄想が酷くなった訳ではなく、碌な説明もなく治療と称して訳のわからない実験を施されていたのであれば、当然の反応だ。

MK-ULTRAの行った実験の中には、被験者に「電気ショック」を行うものもあった。

そして、もう一つ冒頭のシーン。
「監視されている」と思い込んだラカンが本棚をひっくり返すシーンがあるが、この本棚をよく見ると本当に小さな穴が開いている。

思い込みなどではなく、何らかの実験の過程を見るために実際に監視を受けていたのであれば、ラカンの視線恐怖症が悪化した原因は研究者側にあるといえる。

その上で、意識朦朧の状況下で同意書または念書を取り、地下に幽閉したのであれば、ラカンが研究者側であるドウェインを恨み、執拗に追いかけて来たのも納得である。

退院についての説明を受けているラカンだが、この様子を見るに本人の意識がまともに働いていたとは思えない。
書類をまともに読めない状態で嘘の説明をし、署名だけさせたのだろう。

退院できると勘違いしたラカンは治療を施した人々に報復する気満々である。
彼が地下に幽閉されることになったのは、口封じのためだと思われる。

また、MK-ULTRAの実験では薬剤投与の後、監禁して経過を見るものもあったため、彼への実験は終わってなかった可能性もある。

おまけ2:あの家


舞台となった邸宅はアメコミ「NEIGHBORS」の内容が事実であるとするならば、3人連続で精神病の患者が入居し、その後ドウェインに引き渡されたことになる。

これは偶然にしてはかなり無理があると思われる。
であれば、何故その様なことになったのか?

憶測の域を出ないが、この家はルーシーの一件で研究機関に買い取られ、その後は保養所等の体で患者またはその一家を住まわせ、被験者の観察や監視を行っていたのではないだろうか?

そして、研究を行っていた機関が解体された1970年以降、使い道のなくなった邸宅を何も知らないドウェインに明け渡したのではないだろうか?

この家には、ドウェイン一家が幸せに生活していた時期があったことを示すものがいくつか残されている。
つまり、越してきた当初ドウェインはまだ事実を知らない状態だったのだろう。
この家に何が残されていたのか知る由もないが、おそらくこの家でドウェインは、自身が何をしたのか知ることになった…とも考えられる。

おまけ3:アンドリュー・スミスについて


かつてドウェインと同じ研究室に所属し、ドウェインが病んでしまってからはドウェインに向精神薬の処方を行っていたアンドリュー・スミス。

彼の名前がスタッフリストの一番上にあるということは、彼はこの研究のリーダーだったのではないだろうか?
そうだとすれば、彼は研究の目的を知っていてもおかしくない。

そして全てを知る彼は、全てを知ってしまったドウェインを支えるふりをして監視していたのではないだろうか?
やはりドウェインも前の章の3人同様に症状が軽減されていた様子はない。
処方されていた薬がラベル通りのものか、怪しいものである。

…とはいえ、この話にはほとんど根拠がないので、彼自身何も知らずにかつての同僚を心配していただけなのかもしれないし、知っていて贖罪の念から彼を支えていたという可能性もある。


以上、Visageまとめ考察でした。
考察後に改めてゲームをプレイすると、演出やアイテムが綿密に練られていることがわかります。
是非是非、以上のことを踏まえて再プレイして欲しいです!
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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