Sitting By the Riverside VOL.1


しょっちゅうライブハウスにいるので「企画はしないの?」と聞かれることがある。答えはノーでした。ついこないだまで。

実はその昔、2011年に友だちとライブを企画した。3月下旬、いい季節だった。とてもとても楽しみにしていたし、ほぼソールドアウトくらいの予約をもらっていた。
直前に東日本大震災。
関西は直撃の被害はなかったから開催したけれど、少なからずキャンセルも出たし、広報するにも気を遣った。
そのときにライブを主催するって簡単ではないなあとつくづく思った。

自分が聴きたい人を呼ぶこと、ライブ自体をお客さんに楽しんでもらうこと、演者さんが気持ちよく演ってくれること、お店に対して売り上げに限らず何かを還元できること。漠然とそういうものを目指していたけれど、その場にいる人たちの安全を図れるか、そこも大事だと感じた。
例えば今まさに宴もたけなわなライブのクライマックスのさなかに地震が発生したら?もちろん場を提供しているお店側が主導するだろうけど、仮にも主催である以上どうしよう〜とオロオロしていてはいけない。慌てず騒がす、動かねばならない。
当時私はお酒を飲めなかったが、それでもすごく緊張した。
その後ライブ中にアルコールを摂取するようになると、こりゃどう考えても主催なんか無理無理無理無理!客として何も考えず飲めるから幸せなんや。そういう思いが強くなった。
だから「そんなにライブ好きなら企画すればいいのに」と言われても「いや〜客で観るのが気楽やし!」と適当に答えていた。

そんな私が今回企画に関わったのは、おミソとかうちゃんとみーちゃんという心強い共同主催者を得ることができたからです。

去年の夏だったかおミソにポロリと「あ〜、達郎と礒﨑くんとハユルくんの対バン観てえ〜(そして飲みてぇ〜)」みたいなことを言ったのだったか。
私としては夢だからなんでも言えるくらいの感覚だったのだが、おミソから即座に「やろうや!」と返ってきてあれよあれよと拾得に交渉までしてくれた。
そこからの流れは滝のように速く、全員が酔っぱらってても4人もいれば何とかなるやろというノリでかうちゃんとみーちゃんに共同主催を持ちかけ、私が思い描いた3人の演者さんも出演を快諾してくれ、そして演者より主催者が多いヘンな企画が進行していった。

この数ヶ月、グループラインであれこれ相談したり、フライヤーを配ったり、ツイッターなどで宣伝したりした。普通にライブにもガンガン行ってたけど、常に我々の大事な企画のことが頭にあった。先々で「フライヤー見たよ」と言ってもらったりリツイートやイイネしてもらえたりするとほんとうに嬉しかった。予約のご連絡にはグループラインが小躍りしたもんです。

そして、当日。寒かったし一瞬の通り雨も喰らったけど、予定通り開催できた。出順はふわっと決めたが、今となっては凄くよい流れだったと思う。

トップは礒﨑陽平。50/50'sのギターボーカル。バンドではエレキギターを迸らせ熱いライブを展開するが、弾き語りはフォーク調の曲も多く、初めて聴いたときモロに好みすぎてびっくりした。淡々と何食わぬ顔して超絶速弾き入れてきたりして、その面で驚いた人も多かったようだ。後から「緊張してたからいつもと同じ曲ばかりになってしまって…」と恐縮していたけど、いや全然。普段の礒﨑くんが好きなんだもん。それを聴けて、知らない人にも聴いてもらえて嬉しかった。

二番手ハユルくん。東京でザ・リラクシンズというめちゃくちゃカッコいいバンドをやっている。歌やギターが圧倒的に上手いとかいう感じではないのだが、私はハユルくんの書く曲がほんとうに好きで、バンドはバンドで追っかけているけど、歌詞とメロディーとがシンプルに伝わる弾き語りももっと聴きたい。なんて言ったらいいのか、曲が生まれたときの気持ちのままに歌う人なのかなと思っている。余計なものがないから心に直接響いてくる。最後の曲「こわしてつくる」には涙出た。

‪最後はTHE HillAndon‬から楠木達郎。リハなしで臨んだけど、何の問題もない。呼吸するようにギターを弾くんだもんなあ。バンドのときは不世出のボーカリスト・コージローくんがいるからメインで歌うことはほぼないけど、実は声もいいし歌も上手い。そしてありえないくらいギターが素晴らしい。固定客もついていて堂々のトリだった。カバー曲メインだがおもしろい選曲もいつも楽しみで、この日も久保田麻琴さんやらボブディランやら、古今東西の名曲を披露してくれた。

あと一曲、アンコールがわりのセッションは拾得ならでは山口富士夫カバー。3人が同じステージに並んでるのよかったなあ…。

拾得は客として聴いていてもいい音だなあとほうっとするけど、ステージの中音もいいみたいで、礒﨑くんなんかリハから「演りやすいです」しか言ってなかった。
私は主催なのにそんないい音を聴きながらお酒が飲めて最高だった。それはおミソが精算を引き受けてくれたからで、終演後にお金の計算をしないといけないとなると怖くて飲めない。

あと一つは、いくら聴きたい人を呼ぶとは言っても主催するからには採算を考えねばならず、その点、赤字になったとしても複数人で補填できる共同開催スタイルは自分に合ってると思った。
今回、実際には全然痛手を被っていない。平日の拾得で弾き語りとなると集客は厳しいだろうなあと予想していたが、蓋を開けてみれば思った以上にたくさんお客さんが来てくれたからだ。なべさんが来たのにはびっくりしたけど(演者の皆さまも驚いてた!笑)。

達郎も言ってたようにライブハウスはお客さんがいないと成り立たないわけで、私はずっといわゆる「TDK(ただの客)」だったけど、そんな自分を誇りに思っている。
だけど、今回主催してみて、これもまたライブハウス文化へのいい関わり方だよなあと感じた。終演後にすごくよかった、楽しかった、と言ってもらえて嬉々としてさらに酔いました。

達郎が「これVOL. 1ですよね」って言うてたらしいから、またいつかやりたいな〜。そのときはぜひ来てね!

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