赤ちゃんの頭は液体か?
0歳からの頭のかたちクリニック理事長の小室広昭と申します。
私がヘルメット治療に携わっていつも驚くのは、もちろん個人差はあるもののほぼ全例で形がよくなるということです。皆さんは今年の年始に流れていた通販のCMを覚えていらっしゃるでしょうか。液体とは容器に合わせて形を変えるのもと定義できるから、金魚鉢にすっぽり収まった猫を見せながら「猫は液体である」というCMです(2017年にイグノーベル賞を取ったフランスの物理学者、マーク・アントワン・ファルダン博士の学説)。
これを見て私は思いました「それなら赤ちゃんの頭も液体である」と。赤ちゃんの頭はヘルメットに入れるとヘルメットの形に変わる、まさに液体ではないかと。ただし残念ながらこれは月齢が早い成長期の赤ちゃんの話であって、月齢が進むと固体になってしまうのです。赤ちゃんの頭の形でお悩みの親御様にはぜひとも赤ちゃんの頭が液体のうちに専門家受診をお勧めしたいと思います。
「赤ちゃんの頭のかたちを変えることで赤ちゃんの未来が変わる!」
今年6月に私が所属する日本小児外科学会の第60回学術集会が大阪で開催され、当クリニックが本年2月に大阪にクリニックを開設したこともあって、この学会で赤ちゃんの頭蓋変形に関するランチョンセミナーを行ってまいりました。向き癖による赤ちゃんの頭の歪みが欧米と比較して日本では疾患としての認識が不足しているためにまだまだ放置されていること、歪みによって将来もたらされる可能性がある様々なリスク(非対称に伴う身体的障害、発達への懸念、見た目の悩みのことなど)、そして重症例に対するヘルメット治療の有用性などについて講演を行ってきました。学術集会の最終日には野田聖子衆議院議員の「こども家庭庁の設置について」という講演がありました。当初は参加する予定がなかったのですが、大雨で新幹線が止まって東京へ帰れなくなったために拝聴することになりました。議員からは「こどもへの投資は未来への投資である」というメッセージをいただきました。ご講演の中で議員自身のご長男のお話がありました。このご長男は残念ながら生まれつき幾つかの障害を持っていて、我々小児外科での手術も何度か必要な状態でした。彼が赤ちゃんの時に私も若干関わったことがあったのですが、現在中学生になったご長男のビデオが流され、元気に自転車に乗っている姿を見たときには、本当にびっくりしました。「あの子がこんなに元気になったのか」と。そして議員自身もこどものことで大変な苦労してきたけれども、今はこどもの成長ぶりに大変幸せな気持ちになれているとおっしゃっていたのが印象に残りました。こどもの可能性の大きさに改めて驚かされるとともに、日本の出生率減少が続いている最中、こども一人一人を本当に大切に育てていくことが大事であると改めて痛感させられました。そして、こどもの成長がこんなにも親の幸せにもつながるのだということを強く実感させられる素晴らしい講演でした。現在自分が未来のあるこどもと頑張って育児をしているご両親のために少しでも役立つ仕事に携われていることにやりがいと責任を感じた1日でした。もし赤ちゃんの頭の歪みが気になるならぜひ放っておかずに専門家を受診してください。そして赤ちゃんの未来を想像してみてください。赤ちゃんの頭の歪みを整えてあげることは将来懸念されるいろんなリスクから赤ちゃんを解放してあげる、つまりは赤ちゃんの未来の人生を変えることにつながるのです。もしかしたら、乳児期にヘルメットをかぶっていた赤ちゃんの中から将来成人になって今度はヘルメットではなく、大谷翔平選手のように立派な兜を被れるようなビッグな人間が現れてくれるといいな、と大いなる期待をもって日々の診療に従事したいと思います。
東京クリニック 理事長・医師 小室 広昭