ツインビー【ファジーな地上攻撃と大きなバリア】
1985 コナミ
●空中地上撃ち分け型●アイテム、ショット打ち込み式パワーアップ●地上物ボーナスアイテム●自機ダメージ、能力低下●自機全体バリア●自機性能分身●協力プレイシステム●ファジーな対地攻撃
ゼビウス亜流作品の二人同時プレイ物として最も有名なSTGだと思います。
企画当初から二人同時プレイを考慮されていたようで、協力する事で有利になるアイディアが幾多盛り込まれています。
自機同士が上下に重なった時の多方向ショット(単発)、左右に繋がった時には当たり判定の大きなショットを連射出来ます。またアイテムを入手する事で出現する巨大ボールをキャッチボールする(相互間の往復)アイディアが面白いところです。
左右に繋がった場合は片方がレバーをニュートラルにして置く事で、もう片方が操作の主導権を任される形となります。これはゲーム初心者への救済措置と見ても良いでしょうね。ゲーム好きの彼氏がゲーム下手な彼女を誘ない難所を突破する……と云う設定から生まれたものなのかも知れません。
ポップでカラフルなグラフィックとこのようなシステムから本作の求めていた客層が判然します。
特徴的なパワーアップシステムも譲り合いを意識させるため二人同時プレイに適していると思います。
しかし現役稼働時にゲームセンターで同時プレイをしている人は案外少なかったと思います。
極端に出荷台数の多い作品ではなかったのと、私の通っていたのがハイスコアラーやマニアの巣喰う仙台キャロットだったからと云うのも原因かも知れませんが、一般人の遊ぶには難度が高いゲームであったのではないかとも思います。
決して難しいゲームではないのですが、それは順当にパワーアップ出来る事を前提とした難度であると考えます。
ご存知のようにベルをショットで5発撃つと白→青→緑→赤と変化して、入手する事でその色に応じたパワーアップを得られる訳ですが、色変化したベルはショットを一発でも当ててしまえば黄色(点数)に戻ってしまいます。
これが為に初心者は思うように装備を整えられなくなっているのです。中級者以上の方でしたら大して難しい作業でもありませんし、ゲームに順応出来ていないと一蹴されてしまうかも知れません。
しかし本作の取り込もうとした新しい客層と云う観点から考えるとシステムの不備とも取れてしまうのです。せめてベルの色変化耐久力を2発分にするなどの親切があっても良かったのではないかと思います。
一度ミスした後の救済措置としては、続編の出たな!!ツインビーで溜め撃ちを導入し賄っていると云えるでしょう(どちらかと云えばR-TYPE以降の流行として取り入れられた感もありますが)。
それでも本作が良く考えられたゲームであると云う部分に疑いは持ちません。前出の扱い難いパワーアップシステムの弊害で隠れてしまってはいますが、STGとしての本質である敵を撃つゲーム性は高く出来上がっていると云えるでしょう。爽快感などが高いと云うよりは中毒性が持続するとした方が的確かも知れません。
スコアの為にベルを連続して入手するリスクを除くと、1942と同等の素晴らしいプレイ感覚を提供してくれます。
1942が的確な射撃を要する集中力型だとすると、ツインビーは適当な操作でも何とかなってしまう蹣跚型と云えます。
このゲーム性が作られたのはバリアの導入と3方向ショットの準拠だとして間違いないと思います。
それまでのゲームにも或る条件の下無敵となれるバリア、シールドシステムは存在しましたが、ツインビーのように大きな耐久力を持つものは皆無であったと云えます。厳密な耐久値は分からないのですが、敵弾を10発20発くらっても消滅しないほどです。バリアを入手する事で自機当たり判定が大きくなり難度のランクが上がるシステムが取られているとしても、これは大英断だったのではないでしょうか。ひとつの発明としても大袈裟ではないと感じます。
ちょっと穿った見方をすれば、バブルシステムと云う新しいハードで扱えるようになったグラフィックの効果をバリアに使用してみたら非常に見栄えが良かった……制作者のエゴとしてどうしても前面に出したい……ではバリアを大きくしてそれ以上に難度を上げてしまえ……と云う図式が見えなくもないですね。
空中地上の攻撃を別ボタンとするゲームでは、ゲーム内テンポの途絶が避けられない懸案であったと思います。
本作に於いては照準を設けずに或る程度の誘導弾とする事でその問題を克服しています。実際に遊んで見るとかなり融通の効いたものとなっている事がお分かりになると思います。
テンポを妨げないどころか単発である地上弾であるのに或る種の爽快感まで提供してくれています。
それまでのゼビウス亜流作品で最も御座成りとなっていたゲームとして重要な部分を改善した功績は高いですね。これが為に空中地上撃ち分けのストレスが殆どと云っても良いほど感じられなくなりました。
ツインビーは現在にそれほど名を馳せるゲームとして語られていませんが、独特なテンポと程良い中毒性を生み出す新システムを導入し、二人同時プレイSTGとしては初期のものであるにも関わらず能く考えられたシステムが搭載された見逃す事の出来ない作品となっています。
また当時マニアが群れていたゲームセンターで実現しなかった新規客層の開拓は、ファミコンへの移植によって或る程度は成功していたようです。STGに興味のない私の妻が実弟と遊び込んでいたとの昔話でも想像が着きます。
二人同時協力プレイSTGとして最初で最後の力作だったと位置付けしてしまっても良いかと思います。
→亜流・二人同時プレイ
2006.02.06