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A-JAX【制作者のオナニーを見せるな】

1987年にコナミから発表されたビデオゲームです。

個人的な評価ではありますが、私の考えるビデオゲーム・ワースト1が本作となっています。

とは云うものの、それは当時の意見であり若かったが故の管見から導き出された結論であったのかも知れません。

しかし何故にそこまで本作を嫌悪したかは判然としています。ゲームデザインの完成度が低く企画者が無能に思えたからです。

本作のゲームシステムの発端は「ゼビウス」の亜流として成立されています。強制縦スクロールの対地対空打ち分けシューティング物と云う訳です。オリジナルから何ら発展もない凡百な作品なのですが、これだけを捉まえてパクリだと嫌悪したのならば早計には違いありません。

本作の売りは当時まだ目新しかった回転拡大縮小機能を取り入れたハードにあり、それをゲーム内に演出として持ち込んだ事でした。

ゲーム進行は「ゼビウス」タイプのトップビュー縦シューティング面と、「アフターバーナー」風のリアビュー3Dシューティング面を交互に遊ばせるものになっています。

縦シューティング面はまだ遊べるとしても、3Dシューティング面は取って付けたような中途半端な内容だと云えるでしょう。もともとはハードの性能を無理にでも使って見たいと云う制作者のエゴから出たオマケなのかも知れませんが、あまりにも稚拙な内容で楽しめません。

それ以上に首を傾げたくなるのは、何故ひとつの作品中に別ゲームにすべきシステムを搭載して纏めようとするのかです。トータルバランスや完成度を敢えて反古にしようとする行為には得心が行き着きません。

「面白ければ何でも有り」と云う方向性もあるとは思いますが、本作に限って云えばゲームとして全く面白くもないばかりか詰まらない蛇足感だけを与えているのです。

私が本作の制作者に見た無能はここにあると云えます。

他の事柄で例えれば、タレント上がり映画監督の処女作にも通じるものが見付かります。彼らは玩具として無意味にカメラを動かしたがります。奇を衒ったアングルから対象を捉えようと腐心します。ビスタサイズの縦横比の意味を知らないが為に360°パンを多用して喜びます……。

これらは私達ユーザーを無視した自慰行為に過ぎません。カメラと云う機械の存在を知った私達は容易には物語へと戻る事を許されません。それは当然です。人為的な舞台には嘘しか乗っていないと悟らされたのと同様なのですから。

「A-JAX」から受ける嫌悪の原因は正にこれだと思います。回転拡大縮小機能を安易に使った演出は全くのオナニーであると云えます。ナムコの「オーダイン」にも制作者の自慰行為を感じますが、こちらは子供が行うチンチンいじり程度のものでしょうか。

また同時期に回転拡大縮小機能を効果的に使った作品としてはナムコの「アサルト」があります。

ひとつの作品に別のゲームシステムを搭載すると云う意味ではナムコの「源平討魔伝」が代表ですね。こちらは絵としての破綻があるもののゲームとしては纏まっていると云えます。

結局のところ本作は全てに於いて中途半端なのだと思います。ゲームとして面白くない…ハードの性能を使い切っていない…システムに破綻を見て取れる…企画者の能力に不安を感じる…。コナミの作品にはありがちなパターンだとも云えます。

まあ、なんだかんだと書いてしまいましたが、現在に遊んで見ると当時感じたほど詰まらないゲームではないのかなとも思います。実際にプレイして見たところ適当には楽しめました。年齢を重ねたからかは分かりませんが、物事に順位を付ける不毛を知ってしまったのでワースト1も撤回したいと思います。

2005.04.04

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