【2021年版】天猫(Tmall)ビッグセール618 振り返り
はじめに
中国最大手のECモール 天猫(以下、Tmall)の中で重要な3大セールイベント(38, 618, W11)のひとつ618が終了しました。38, 618, W11は中国EC業界では各ブランドが力を入れるイベントです。このイベント期間中はプラットフォームで大幅な割引が実施され、イベントの成功が年間のGMVを左右する非常に重要なセールになっています。今回の記事では、2021年の618セールがどうだったのか、イベント内容とともに振り返ります。
そもそも618とは?
元々は中国のECプラットフォームの一つである京東(JD.com)の創立記念日で、2010年と2011年は京東独自でセールを展開していました。2012年から他のプラットフォームもこの日にセールイベントを実施しています。現在618セールは京東の創立記念セールという位置付けではなく、中国EC業界共通のビッグイベントになっています。Tmallにおいて618はW11(独身の日)と同様S級セールという位置付けになっています。
2021年618期間中の中国ECプラットフォームの総GMVは「5784.8億元(9.8兆円)」(集計期間:6/1から6/18まで)。京東のGMVは3438億元(約5.9兆円、6/30レート:1元=17.21円で換算)超で記録を更新しました。2020年の楽天の国内ECのGMVが4.4兆円なので、618期間だけで楽天の2倍以上のGMVが生まれています。
中国ECプラットフォームのTOPであるTmallの618セールは6/20までであり、今の時点でGMVデータはまだ公開されていません。ただし、6/18の0時から1時までのタイムセールの販売額は去年の2倍であるとTmallが発表しました。
2021年Tmall 618の概要
2021年のTmall 618は大きく4つの期間のセールで構成されていました。それぞれのセールの詳細について詳しく説明します。今回のセールは初日の6/1と第三弾セールのイベント初日6/16にGMVが大きく集中する形になりました。共通する割引は下記になります。
- 200元の購入ごとに30元を割引
・ プレセール(5/24-5/31)
5/24 20:00から始まるセールで、5/24から5/31まで前金を納入して、6/1に残金を払う形です。ユーザーにとってのメリットは下記2つです。
- ①本セール初日を徹夜して待たなくても、割引を確保できること
- ②商品選択や購入にたっぷり時間を使えること
・ 第一弾セール(6/1-6/3)
6/1 0:30から始まる本セールの第一弾です。この期間はイベントに参加しているブランドの商品は200元ごとに30元の割引が適用されます。これはプラットフォーム全体に適用されるので、他店舗でまたいで購入する場合にも割引が適用されます。ユーザーは、中途半端な額であれば安いものを追加して200の倍数になるよう購入します。天猫全体で適用される上記の割引に加えて、各店舗は独自に割引を実施します。そのためブランドによっては実に半額に近いような価格で購入可能な商品も多数あります。
また、第一弾セールはプレセールで前金を支払った商品の残金支払いと本セール初日ということで、GMVが大きく伸びます。特に初日の6.1の0-1時はタイムセールも適用されるのでこの1時間でブランドによっては数千万円のGMVを実現しています。
・ 第二弾セール(6/4-6/13)
6/4から6/13に実施される本セールの第二弾です。カテゴリによってセール日が分かれており、各カテゴリーごとに天猫の共通割引(200-30元)が適用されます。例えば、6/6ー6/7に実施される进口日(輸入日)には海外からの輸入商品のみのセールでした。
・ 第三弾セール(6/16-6/20)
6/16から6/20までの第三弾セールです。6/18がその期間内に含まれますので、一番認知度が高いセール期間だと言えます。
昨年との違い
・ ライブコマースの進化
中国独自の進化を遂げているライブコマースですが、2021年の618でも大きなインパクトを生んでいます。618セールの初日、Douyinライブ経由のGMVは14億元を超えました。
また、5/25〜6/18期間内の全プラットフォームのライブコマースランキングでは、1位のライバー薇娅viya(ウェイヤー)の販売額は60.5億元(約1,000億円)で、2位の李佳琦(リージャーチー)は50.1億元(約850億円)と、非常に大きなGMVを生んでいます。
引用: 胖球数据
・ セール期間の前倒し
「史上最長」の618と言われるように、今年の618セールは例年より長い期間のセールになりました。Tmallでは5/24から6/20までというほぼ1ヶ月に近い期間でセールを行い、セールの開始時間は昨年より4時間前倒しされました。5/24 20:00からセールが始まることで、消費者は24時を待たなくても購入できます。プレセール初日の5/24は月曜日で、翌日に仕事がある消費者に配慮するための措置になります。
また、5/24から6/20の期間中には6/1こどもの日、端午節、父の日、世界環境の日、世界禁煙デーなども重ねてしまいましたので、618だけではなく、色んな要素が加わったセールになっています。
・ クーポンや割引取得のシンプル化
クーポンや割引の取得が複雑すぎるという苦情に対して、今年はシンプル化しました。例えば、去年の300元ごとに40元割引に対して、今年は200元ごとに30元割引に変更し、割引を獲得しやすくなりました。
・ 618でGMVの大きかったブランド
総合ランキングTOP3のブランドはすべてスキンケアブランドであり、それぞれロレアル、エスティローダー、ランコムです。特にロレアルは唯一販売額が10億元を超えたブランドになります。
また、日本ブランドでは、アパレル1位のユニクロ、スキンケア5位の資生堂、メイク/香水ランキングのShu Uemura、そして美顔器2位のヤーマンなどがあります。
・ 618で成績の良かったライバー
タオバオライブの618期間(6/1-6/20)で販売金額が大きい順のランキングです。薇娅viya(ウェイヤー)と李佳琦(リージャーチー)を始め、芸能人など馴染みのある名前が並んでいます。
引用:淘榜单
次回W11に向けて
中国で最大のセール「独身の日」のW11まで残り4ヶ月。しかしながら今回の618のように、セールイベントは6/18その日からではなく、5月からすでに始まっていました。W11の詳細日程はまだ決まっていないものの、例年の状況から考えると、618のように早めに始まる可能性が極めて高いです。そのため、W11向けの戦略は遅くても10月中には完成させる必要があります。
さて、今からやっておくべきことは何でしょう。
・ ユーザーインサイトの深堀
中国消費者の消費動向は大きく変わりました。消費アップグレードと言われるように、中国の消費者は商品の安さではなく、質を重視しています。また、消費者ニーズも細分化されており、一つで全部対応できる「万能商品」はもう売れなくなっています。そのため、ターゲットユーザーのインサイトをじっくりと深堀し、ユーザーのニーズに合わせて商品を開発・販売していくことは非常に重要です。
ちなみに、Tmallでは「生意参谋」などいくつかの分析ツールを提供していますので、そちらのツールを活用できれば、有益な情報を獲得できると思います。
・ ライブコマースで最大化を狙う
Douyinや快手など動画プラットフォームのEC化で、これからライブコマースの重要性はどんどん高くなることが予想されます。
ライブコマースはそのまま販売に繋がるだけではなく、ブランド認知度のアップにも役立ちますので、W11までの5ヶ月間ライブコマースでどうやったらGMVを伸ばせるか、セールまでにノウハウを貯めておくのがおすすめです。
・ リピーター・会員獲得しましょう
Tmallのデータによると、618期間内に6,000万人のブランド会員が増加しました。一部ブランドの販売額の50%超は会員によるものになり、6/16-6/20期間内だけで30,000超のブランドが会員に会員割引、会員クーポンを提供しました。
会員向け施策は中長期的なブランドの成功にもつながりますので、この5ヶ月間で会員獲得し、W11に会員の力で「史上最高」のGMVを作りましょう。