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弘前市 自家製手打ち中華そば花菱

民藝品、あるいは1952年のリンゴ追分。

スープは津軽ラーメンのなかでも津軽そばの系譜を踏襲した清い醤油色。煮干しと醤油のバランスで生まれるあの酸味に、しっかりとした仕事のプライドが宿っています。これは皇室一派として知られる津軽氏発祥の種里城に残る家紋「花菱」という屋号に顕れているのでしょうか、「あっさり」では括れない歴史を引き継ぐ意志を感じました。
対になる麺。手打ち麺をより推し進めた煎餅のみみにも似たランダムな振れ幅の凹凸、カンスイよりも重曹なのか出汁を引き立てる上品なかまり、食感はふわふわもちもち、少しザラつきというか引っかかりのある肌感、そしてその軽さに驚きました。

美空ひばりが唄う1952年の「りんご追分」は、失われた労働歌の土着的リズムとアメリカ由来のジャズを結びつけた名曲。古典正統派スープと革新的な中華麺の引き合いに出したくもなります。津軽そばの製麺文化が生んだ民藝品のような中華そばでした。

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