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”デバイド”とか”終わった”とか”取り残された”とか、そんなことで人の本質は変わらないはずなのに テクノロジーの進化って?

家族や友人との連絡やサークル活動にLINEは欠かせません。それは高齢者だって同じ、いくつものLINEグループに登録するあまり「ぜんぶ見ていないわよ笑」という人もチラホラ。

先日も65歳以上のシニアが集まる場でLINEグループを作ることになりました。
「桑原さん、グループの作り方おしえて!」といつものように呼ばれ、「はーい、みなさんスマホ出してください!LINEひらいて!QRコード押して!」と作業していると、また出会ってしまったのです…あのスマホに。

『らくらくスマートフォン(FCNT株式会社)』に代表される、通称”シニアスマホ”と呼ばれる高齢者向けスマホ。家族への連絡ボタンがついていたり、カタカナ用語でなく日本語で表示されていたり、便利なアプリがトップ画面に大きく並んでいたり、ITが苦手な高齢者に便利なスマホではあるのですが、そのなかに特殊なスマホがあるのです。

私が勝手に「ガチガチスマホ」と呼んでいるその特殊なスマホは、自分で好きなアプリを入れることができない、設定の変更が制限されている、SNSで家族以外の誰かとつながることが容易にできない、そしてなにかやろうとすると「保護者の許可が必要です」と表示される、というふうに、とにかくセキュリティを最優先した”ガチガチ”な仕様なのです。

「うーん、もしかしたら参加できないかも」とスマホの持ち主に伝えると、「やっぱりそうなんですか…これね息子が買ってくれたから、あの子の許可がないとなにも出来ないのかしら」と今にも泣きそうな顔に。

こういうとき、私の心も泣きそうになるのです。

この女性、明るい性格で人とのコミュニケーションが大好き、どこかにみんなで出かけるのを楽しみにグループに参加しました。なのに、LINEグループに入れないだけで、社会的つながりを失くしたような孤独感、みんなについて行けない悔しさ、そして時代から取り残されたような焦燥感、さまざまな感情が顔に浮かんできます。

そして私は、彼女をこんな顔にさせるテクノロジーって何なんだろう?!と思うわけです。

そもそも、スマホやパソコンはただの道具であって、その道具を使えるか使えないかなんて、その人の本質とは関係ないことだし、社会性や人間性までもが否定されることは無いはずです。

でもなぜかそう感じたり、感じさせてしまったり、これって何なんだろう?と。

悪戦苦闘の末、どうにかグループに登録は出来たのですが、その様子を遠くから見ていたスタッフ(65歳)が休憩時間にこんな話をしてくれました。

「25年より前かな?パソコンが会社に導入された頃の話なんですけどね。尊敬する先輩がいたんです。仕事も出来て、指示も的確で、優しくて。で、ある日その人からパソコンが出来ないから教えてほしいとこっそり頼まれて…」

「そのときに、あ、先輩も時代に取り残されてるなって感じちゃったんですよね。その人の尊敬できるところは何も変わってないはずなのに、パソコンっていう道具を使えないだけで、なんでそう思っちゃたんだろうって、急に思い出しました。」

時代の価値観が変わり、意味のあるものが急に無意味なものになることがあります。

例えば、近所の噂をなんでも知っている◯◯さん、昼から飲める安い居酒屋をいくつも知っている◯◯さん、地元の歴史を調べまくっている研究肌の◯◯さん、昔から顔の見える情報通の人たちって必ずいたものですが、今なら「ググればよくない?」で終わってしまったり。

今後も様々な技術が発展するなかで、職を失う人も、「時代に取り残された」と感じる人も増えていくことでしょう。

急激な時代の変化によって私たちの生活は変化していきますが、決して人の本質を否定するものでは無いということは忘れないでいたいと思うのでした。

一方で、スマホはツール(道具)なのか?ということに関しても、引き続き考えなくてはいけないなと感じています。

BABA lab 桑原静(くわはらしずか)
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 BABA lab(合同会社ババラボ)
「長生きするのも悪くない」と
 思える仕組みをつくる
 http://baba-lab.net
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