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初めての救急要請。遠隔地から救急車を呼ぶときに覚えておきたい「搬送先がわかったら連絡ください」

9月9日は「救急の日」らしいので、生まれて初めて救急要請した日のことを書こうと思う。

始まりは夫からの電話だった。
「おやじが調子悪いらしくて、おふくろから電話があったんだけど、何を言ってるのかよくわからないから電話してもらえる?」

意味わかんねぇ! と内心思った。
たしかに私は介護のキーパーソンかもしれないが、なんでもかんでも話を持ってくるんじゃねぇ! ぐらいに思った気がする。

ぴりついた空気が伝わったのか、電話の向こうの夫はややあわて気味に事情を説明した。
「自分で聞けよって思ったかもしれないけど、実はこれから大切な会食があって……」というような話だったと思う。

気を取り直して明るく「いいよ、気にしないで」と言ったのか、感じ悪いまま電話を切ったのか、よく覚えていない。

でも、すぐに夫の実家に電話をかけた。むかついていてもいなくても、やるべきことはすぐやるのが私のいいところだ(自分で言う)。

義母はすぐ電話に出た。
「お父様がねえ、風邪で寝込んでるみたいで……」
「そうですか。いつ頃からですか」
「それはよくわからないんだけれど」

ちぐはぐな会話が何往復かした後、義母がふいにこんなことを言った。
「お父様がね、『体の左側がしびれて動かない』って言うの。ちょっと心配よねぇ」

ん? 今、なんつった!? 頭の中でファンファンファンファンとサイレンが鳴る。体の左側がしびれてるだとぅ…!!!!!

「お、お母さん、体の左側がしびれてるって言いました?」
「そうなのー。心配よねぇ」
「ちょ、ちょっと先生に相談してみましょうか」

義母はいたってノンキな口調だった。でも、ワーワー騒いでパニックにしても始まらない。こちらも調子をあわせてのほほーんと電話を切った後、大慌てで訪問診療でお世話になっているクリニックに連絡した。

主治医の先生はあいにく遠方に外出しており、すぐに訪問はできないという。ただ、義母に電話をかけて様子を聞き、救急搬送が必要な状態か判断してくれると聞いてホッとした。

いざというとき、ドクターに相談できるのこころ強いわー。さすが訪問診療! とすっかり肩の荷が下りた気でいたけれど、医師から折り返し電話があり、俄然ガッカリする。

私が電話に出るなり、医師はこう言った。
「お嫁さん、救急車を呼んでください」

えー! 私が呼ぶの!? である。

とにかく今すぐ119番しろ、という。
「でも私、親と一緒にいませんけど」とわかりきったことを説明すると、遠隔地から救急車だけ呼ぶことができるという。救急車を呼ぶのと同時に、「救急隊員に到着したら、(家族の)携帯電話に連絡して」と伝えればよい、と。

混乱しながら医師に言われたとおりに手順をメモし、復唱した。不安で3回ぐらいは聞いた気がする。

電話をかけて「はぁ?」と言われたらいやだなと思いながら119番すると、救急車の要請自体はあっさり終わったが、携帯電話への連絡は「お約束できません」と言われた。いや、どうするんだよ……!

義母に電話し、これから救急車が来ることを伝えた。
「えー、どうしましょう。そこまでしなくてもいいんじゃない?」
「救急隊員の人が来たら、私の携帯番号を伝えてください。あとは対応しますから」
「あらー、わかるかしら」
「番号言いますね。メモできます?」
「どうかしらー?」
キレそうになりながら、なんとか携帯番号をメモしてもらう。

夫にも電話をかけ、事情を伝える。すぐに実家に向かってくれるという。いいぞ。グッジョブ!

車も呼んだし、夫にも連絡がついた。あとは救急隊から連絡を待つばかり……と思いきや、ここからちょっとした騒ぎが待っていた。

「もしもし! お嫁さんの電話番号ですか!?」
「はい!」
めちゃくちゃ切迫した声で電話がかかってきた。やっぱり、お義父さんけっこうヤバい状況? とビビる。

「ご両親は認知症がありますか?」
「はい!」
「出発したいんですが、カギがありません!!!」
えー!!!!

電話をくれた救急隊員さん曰く、家のどこを探しても鍵が見つからず、義母に聞いてもわからないという。
「カギがないので、お母さんには残ってもらってもいいですか」
「いえ、連れて行ってください! 義母も認知症なんです!!! そのうち、息子(夫)が到着するので、玄関あけっぱなしでいいです!」

義母が一人残されることを思えば、空き巣のひとりやふたり、知ったことではない。電話口で必死に訴えていると、電話の向こうから別の救急隊員さんの叫び声が聞こえた。

「カギがありました!!!!!!!」

目を覚ました義父がポケットからカギを出してきたらしい。おとうさんグッジョブ!

搬送先も決まり、夫と私はそれぞれ、近所の総合病院に向かうことになった。

ちなみに、のちに東京消防庁に取材したところによると、遠隔地から救急要請したときの連絡先の伝え方としては「搬送先がわかったら連絡ください」がいいそう。救急隊の到着直後は、一刻を争う状況の可能性があり、電話できるとは限らない。そのため、“搬送先がわかった後”に設定するのがポイントだった。


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