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Lick-G「CRITICAL ISSUE」解釈

 Lick-Gが発表した楽曲「CRITICAL ISSUE」は、分かりにくいリリックが多く含まれている。その分かりにくさは比喩表現によるところが大きい。なので、私なりに解釈した〝意味〟をここに書き記しておこうと思う。

難癖付け土足で
人ん家に押し入るなんて予測
できない事が起きる この姑息で
汚れ切った世界に振り下ろすペン

 このリリックが意味するのは、主に戦争のことだろう。

通じなくなってきたpropaganda
俺たちの声は止まらんな
冷静に状況を見ては判断
何が間違ってるかぐらい分かんだ
罪のない市民も巻き添え
死人の数と共に上がる泣き声
が聞こえないフリするウチのトップ
既にナイフは首元に
到達してかけてる状態
どう考えても傍観する時間はもうない
対岸の火事は海を越え 迫り来る
ここも戦場になり得る

 前述したように、戦争をラップしている根拠は、ここにも登場する「戦場」という語にも明らかだ。
 すこし陰謀論的なところもあるが、「冷静に状況を見ては判断」とあるように、様々な情報に惑わされるなといったメッセージが見て取れる。しかしどこか右派的な発想をLick-Gはしているようにも思える。
 なお、Hookに関しては割愛する。

俺たちの家はならずモン
に囲まれちまった 図らずも
警備会社の作った防弾ガラスも
絵に描いたようにしっかり働くの?
やたら金くれ
っつうけども何かあったら駆けつける
保証なんてねえだろ すぐ投げ捨てる
つもりで作った契約書使ってbusiness
してるだけのペーパーカンパニー
分かってやってんなら計画犯罪

 ここから解釈するのがすこし難しくなってくる。ただ、丹念に読み込めば理解できる。何に「囲まれちまった」のか、それは、日本の周りにある国々(ロシアや中国や北朝鮮)だ。
 「警備会社の作った防弾ガラス」とは、さしずめアメリカと核、あるいは在日米軍のことを指している。
 「すぐ投げ捨てるつもりで作った契約書使ってbusinessしてるだけのペーパーカンパニー」。この部分はすごくよくできている。まずペーパーカンパニーとは、アメリカを指している。そして契約書は安保条約のことだ。しかも、その書類的な意味と、ペーパー﹅﹅﹅﹅カンパニーの紙とを掛けているのだ。かつ、在日米軍なんてアメリカのbusinessのひとつにすぎない、とでも言いだけである。

並にタチ悪い 逆の立場に
なったら怒り心頭 間違いなし
雨がザーザー 降って来ても傘
の一本も貸せねえケチな商社マン
ウチのオーナーは眠そうにアクビ
自分に関わる事とも知らずに

 「ケチな商社マン」とは、資本主義の最前線アメリカのことだ。「ウチのオーナー」は日本の総理大臣のことだろうと思う。

理事会で粋がる五人組
保身主義の仲間は閉じる口
表向きには村八分
してるように見えても繋がりっぱなし

 ここが一番難しい。「五人組」とは何を指しているのか。おそらくだが、G7の前身であるG5(アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本)のことだと私は解釈した。そして裏では不純な利益のために繫がっている、と。

ドアの壊れた9号室
修理会社は今日もなぜか休業日
護身用具もなし 泥棒が来ても言う通り
にするにしかねえ 現状を変えて行くのみ

 「ドアの壊れた9号室」はとても分かりやすい比喩表現だ。まさしく、憲法第9条のことである。つまり、あらゆる意味で機能していない9条、という意味。

昼夜問わず働く自警団
の人たちには感謝し切れねえな
街を自ら守る防人に
いつまで寒い思いさせるつもり?

 「自警団」とは自衛隊のことだろうと推測できる。ただ、私が分からないのは、「街を自ら守る防人」の箇所で、これは誰を指しているのだろうか。防人だから、自衛隊のことなのか、はたまたそれとは違う組織のことなのか。

この先どうなっちまう?
なんて考えてたらもうこんな時間
遺憾砲も繰り返しちゃ親父ギャグ
選択肢はきっと他にある

 「遺憾砲も繰り返しちゃ親父ギャグ」とあるが、これは日本の政治家に向けて吐かれた言葉と取るべきだろう。

  *

 ここまで見てきて分かるのは、Lick-Gは単なる陰謀論的なリリックを書いたわけではないということだ。「現状を変えて行くのみ」「選択肢はきっと他にある」といったリリックを読み解くに、我々がこれから何をすべきか、が示唆されてもいる。たとえばそれは、選挙に行くことでもあるだろうし、何か運動を起こすことでもあるだろうと思う。
 何より、我々ひとりひとりが現実を変えていく主体として振る舞うしかない、その事実を提示しているのが「CRITICAL ISSUE」という楽曲が持つ意味そのものだと言えるだろう。

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