マレーシアでドリアンわんこした③【完】
もし前編までをご覧になっていないからはこちらからどうぞ。ざっくりいうと、わたしがマレーシアでドリアンを初めて食べるまでの長い長い序章だ。
ドリアン三役
ドリアン屋台でのお作法もよくわからずについていったが、価格はキロ当たり表記。選んだドリアンの重量で清算する。キロ当たりの表記だからと言って「1キロください」とか「ちょっと食べてみたいだけだから200グラムください」といった注文は出来ない。
あのトゲトゲの重量感はどれほどなのか。果肉ばかりではないはずだ。私はドリアンを見るたびにノコノコの甲羅を連想してしまうが、もしかするとトゲトゲの殻の中は案外フワフワのスポンジ状で軽量仕様なのかもしれない。
「あまおう」「とちおとめ」「べにほっぺ」、いちごに種類があるように、ドリアンにも当然種類がある。これまでドリアン屋台を横切るときに「また”ネコヤマオウ”だね」と何も知らずに妻とじゃれ合っていたが、それこそドリアン界では超メジャー、「猫山王(ムサンキング)」という最高品種らしい。もちろん、ここの屋台にもずらりとムサンキングが並び、その他の品種もお口直し程度なのか取り揃えているようであった。
本日はこのムサンキングをメインに、その他にもドリーさん厳選の初級者、ライト層でも比較的食べやすいといわれる2品種を加え、以下合計3品種、通称「ドリアン三役」と相まみえることとなった。
関脇:D24(スルタン・キング)
マレーシアで最も有名な品種の一つで、クリーミーな食感と甘さが特徴。苦味が少なく、香りも比較的マイルドなので、初心者でも食べやすいとされる。大関:XO(エックスオー)
名前の由来はブランデーの「XO」から来ており、少しアルコールのような風味。甘さとほろ苦さのバランスが良く、香りも強すぎないため、中級者向け。初心者でも挑戦しやすい品種。横綱:猫山王(ムサンキング)
マレーシアで最も高級とされる品種で、濃厚な甘さとクリーミーな食感が特徴。ただし、香りと味が非常に強いため、ドリアンに慣れていない方には少しハードルが高いかもしれない。
ドリアン・パーティーの幕開け
正直にいうと、先に食した「D24」と「XO」は期待外れであった。いや、正確に言うとドリアンに高いハードルを課していた私としては、もっとガツンとお見舞いしてほしかったという勝手な思いがあり、物足りなさを感じたということである。振り返っても全くもってどのような味わいだったか覚えていない。
ドリーさんとアンさんも、私を見込みのあるヤツだと思ってくれたらしい。いよいよ満を持してムサンキングの登場である。
果物の王様のドリアンの横綱、猫山王の土俵入り
ひときわ大きく、立派なムサンキングを割ると、明らかに最初の2品種とは格の違う、濃厚な色のぽってりとしたやつが顔を出した。熟成しているその様子は少し傷んでいるようにも見える。発酵したような刺激の中に、強い甘さを感じる芳醇な香りである。「我こそドリアン」と主張しているようだ。
手にすると、柔らかく、とろけてしまいそうなほどで、形を留めておくことが難しいくらいだ。
まるでソフトクリームを口にするときのようにドリアンを唇で一口すくってみる。ドリアンの果肉が口の中ですぐさまなめらかなペースト状になり、独特で濃厚な甘さが一気に口の中に広がる。私は、臭さや食べにくさを感じることなく、ペロリとムサンキングの一片を平らげてしまった。
ドリーさんとアンさんも、ついに私を認めてくれたか。満面の笑顔に親指を立ててサムズアップだ。
気付けばドリアンわんこ
その後は、ドリーさんとアンさんに差し出されるがままに、次から次へムサンキングを食べ続けた。何という仕打ち、というか最高のおもてなしを受けているのだろう。私たち家族だけでは立ち寄ることも出来なかったドリアン屋台。ドリーさん、アンさんご夫婦のおかげで、なかなか経験できないでいたマレーシアの日常をまた一つ、体験できる機会となったのであった。
私の横では妻と子も懸命にドリアンをつつきあっている。前回の初顔合わせの時より少しはいける口になったらしいが、まだ彼らはドリアンのおいしさに気が付いていない。
止まらないドリアンわんこ。初陣であったにもかかわらず、誰よりもたくさんのドリアンをいただいたのだが、その夜もその次の日も体に異変が訪れることもなく、無事にドリアン耐性を獲得したのであった。
最後に、この場をお借りしてこのようなマレーシアの日常に誘ってくれたドリーさん、アンさんご夫婦にお礼を申し上げたい。本当に、ありがとうございました。
(※なお、改めて説明をしておくが、ドリーさん、アンさんとは子どもの習い事が一緒のお友達の実在するお父さん、お母さんであるが、このNOTE限りでの仮称である。)
以上、私のドリアン初体験までの様子を3回に分けてご紹介をさせていただきました。要するに、多分食べれるんじゃなかろうか思っていたドリアン、案の定食べることが出来ました、ということだけではあるのですが。
次回のマレーシア・マガジンではすっかり虜となった「ジャック・フルーツ」についてでも書こうかしら。
それでは、次のNOTEで
ーババ かずおー