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特別面白くない日々のこと


 梅雨が明け、湿度が去りからりとした風が吹く。
 通勤のために家から駅1キロ、駅から職場1キロを歩くので朝からへとへとである。汗をぬぐいながら柱にヤモリがくっ付いているなとよく見たらペンキが剥げているだけだった。遮光性100%だかなんだかの素晴らしい日傘を持っているので直射は避けているがどうにもこうにも暑い。
 この日傘、とにかく高いがしっかり日陰を作ってくれるので値段なだけある。いい買い物をした。
 そういえば、先日うまれてはじめてかき氷を店で食べた。たかが凍らせた水だろうと思っていたが、やはり凍らせた水だった。きっとたぶん、シャリシャリでなくふわふわのかき氷でなければ感動は味わえないのだろうと思う。
 幼いころから祭りで出る的屋のかき氷にもまったく興味を示さなかったので致し方ない。
 世間では人気があるが、特別好きでないもの:かき氷、ラーメン

 カフェ巡りもしており、最近はパフェを食べるのにハマっている。パフェはいい。甘味と酸味のバランスが格別なのだ。甘いホイップ・クリームに冷たいアイス。果実のジュレ。これだけでは甘すぎるが添えられているくだものがいい仕事をする。口の中をさっぱりと一旦さわやかにしてくれるのである。あつい、へとへとだ、おっと、喫茶店がある、よし入ろうじゃないか。うーん、アイスコーヒーだけじゃあチャージできない、チーズケーキ? チョコレートケーキ? それじゃあ重いんだよ、というときに最適なのだ。
 ああ、パフェ。すてきなパフェ……

コーンフレークはいらない派

 

 そういえばデパートは高島屋贔屓なのだが、新宿高島屋はいつ行ってもわりかし空いているので好きだ。デパートには階ごとにそっとカフェが置かれている。洋服売り場の端の方でひっそりと、ずうっと、ここで営業しているんですという風格のそれは私の好物でもあった。そんな中、新宿高島屋のPapas cafeにはじめて入ったが、これがまた良かった。
 あら、ここってこんな天井が抜けているのね。という抜け感。天井が高いせいか食器がぶつかりあう音、人々の話し声が響くのだがなんとなく美術館の中にある喫茶室に入ったようなのだ。客層も落ち着いていてよい。勉強しているひとやPCをたたく人、優雅にお茶をするマダム。男女のデート。
 席の間隔がほどよく離されていてつい長居をしてしまう。
 なにより、ファッションブランドのPapasがやっているというのがミソなのだ。Papasは正直なところ世代でもなく、親もこのファッションをしていなかったので疎いのだが、(以下個人的なイメージ)平成3年ごろのバブルが弾けたんだかあるんだか、じつに好調な時世で、ファンシーでかわいらしい、少女趣味、穏やかで洒脱な、力の抜けた世界。
 そういうイメージなので自分のその中にたゆたった気分になれる。経験したことのない時代の波に乗れている、ちょっとうっすら味わえたような、そんな感じ。
 ていねいな生活ってこういうことなんだよなと思う。
 私が思い描いていたていねいな生活は、家は一軒家、庭にはハーブや月桂樹の木。玄関にはモッコウバラが咲き、夏にはサルスベリ。秋はビワがとれ、冬は椿。四季折々目が楽しくなる植物があり、サンルームからそれを眺める。ちょっとした隙間時間に手芸をし、夕方前から夕飯を仕込む。ていねいに。
 ああ、こうなりたい。現代ではたぶん絶対に無理だ。
 そうそう、話は戻りPapas cafe で食べたバナナケーキがとってもおいしかったんだった。どっしりしていて、濃厚で、ちょっとお酒が入っているような。こういう大雑把で一生変わらない、そういうのがいいんだよな。

風格がある


 そんなわけで、夏の一曲。
 “あついのはもういやだ”、どうぞ。

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