面会日に
マル太郎の誕生日だった10日、午前中に長男の面会に行ってきた。
一人ではほぼ毎週行っているが、夫が一緒なのは月に一度。今回はその月イチ一緒の日だった。
病棟入り口まで、長男と看護師さんが迎えに来てくれる。
ドアの向こうとこちらで、ガラス越しに目が合うと、途端に両腕をぐるぐる回して、脚に力が入り、歓迎なのかイヤイヤなのかわからないけど、「両親発見!」が伝わってくる。
現在の面会室になっている「家族室」に入り、看護師さんからここ数日の様子を聞く。とくに不調もなく落ち着いていると報告を受け、気持ちが軽くなる。
癖で、ついチェックする。あ、襟元にヨダレ受けのタオルが挟んでない。ちょっと爪が伸び気味。鼻毛がこんにちはしてる。手は冷たくはないかな。
気にはなるけど、すぐにちゃんとしてくれるだろう。
入所したころは、気が付いたら遠慮せずその都度言おうと思っていたが、あまりしょっちゅうだと、私の面会日に気を遣いすぎるかもしれない。基本的なことも、それプラスαも、ちゃんとしている施設だから、任せている。まあ、職員さん個人的にはいろいろと違いはあるだろうけど。
それに、面会前に急いで取り繕われるよりも、自然だなと思う。
時々、ちょっと声を掛ける程度で、いいかな。
狭い面会室でも、私たち親子は歌いながらぐるぐる回る。新調した車いすは大きくて、タイヤの動きもその分重い。
車いすに乗っている時は、とくに夏場、背中の暑さが心配だった。しかし、新調した車いすには、背もたれの裏にファンが付いていて、背中部分の熱を逃がしてくれるのだ。なんとまあ、ありがたいことか。福祉機器も日進月歩。
この日は興奮しがちなようでいちいち力が入るので、熱がこもらないファンがありがたかった。
交代で部屋の中を回りながら、とりあえずビール、みたいに「北国の春」。
いまいちノリが悪く、ふくれっ面なので夫は悲しくて、次は鉄板プレイリストの「紅葉」。
「あ、笑った、一瞬笑った」と、夫のほうが嬉しそう。
それで気を良くして、2人で話しかけたり、雑談などすると、だんだんと体を突っ張らせて、不快アピールをしてきた。いかんいかん、呼びかけや雑談は表情をみて慎重に。家に居た頃の緊張感を思い出す。いない間にすっかり緩んでいた(;^_^A
こんどは水戸黄門の主題歌を。3番まで歌ったが、2周目はナシかな。相変わらずふくれっ面だ。
まあ、いつもの彼だな、平常心、ということだ。
最後にまた「紅葉」で、今回のトリとなった。
「紅葉」強いなぁ。どのあたりが気に入っているんだろう?
秋まで、今年も1年歌いそうだ(笑)
「面会中、ずっと歩いているので、少し広い部屋がいいのですが。空いていたらでいいんです」と、今回は希望を伝えてきた。
感染症が流行する前は、病棟内の廊下やデイルームをぶらぶらできたらしいが、まだそれは解除にはならない。
外泊(自宅へのお泊り)もあったが、もちろん今はできない。
何年後かに外泊が解禁になったとき、果たして、わずか1泊でも、長男の世話ができるのか。入所以来、毎日のように想像するが、すっかり体がなまっているので、なんか無理、という気がしている。
やっぱり、毎日続けていたから、できていたことなんだなとつくづく思う。
現在、面会に使っている「家族室」は、フロアに続いて4畳ぶんほどの畳スペースもあり、そこにはコタツやテレビ、電気スタンド、オイルヒーターがある。
布団も何組か、押し入れに入っている。
調理台や冷蔵庫、電子レンジ、シャワー室、トイレもある。
ここで、入所者と家族が一緒にお泊りできるようになっている。
家で「外泊」することが親の体力的に無理になっても、ここに家族が泊まりにくることができる。
車ももう走行距離は22万キロオーバーで、今度の車検で最後と言われている。またスロープ付きの車を購入するのも、経済的に負担が大きい。
しかもスロープの使用頻度は年に1回くらいなものかもしれない。
家族室にお泊りツアーが、将来的に一番現実的だなと感じたのだった。
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