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「いつ始めるの?」

ドラマを食べて生きています。
もちろん、好き嫌いはありますが、食わず嫌いはいかんなとも思っています。いろんなドラマを見たい。よほど苦手な役者さんでなければ、観ています。ちなみにいったん録画したもので、直送ではありません。
(人がやたら死ぬやつとか、サスペンスものは避けることが多いかも)

先日、初回が放送された『海のはじまり』は見ごたえがありました。
主人公・夏くんとみずきさんは、学生時代、恋人同士だったが、みずきさんの妊娠がわかり、中絶を選ぶ。それからすぐにみずきさんと夏くんは別れてしまいます。
みずきさんは「夏くんよりも好きな人ができたから」と言うが、今思えば、それは中絶しなかった娘のことだったんだな。
二人は別々の道を歩んでいたが、ある日みずきさんの訃報が届きます。
その葬儀の時に、7歳になる自分の娘と対面。
生まれていたと思っていなかった自分の娘です。

主人公、夏くんにとってはものすごい展開です。
娘の海ちゃんは、いたって可愛らしく、賢そうで、「夏くん!」なんて呼んで手を振っちゃったりしている。
おばあちゃん(みずきさんの母)も、夏くんがどういう人なのか知っているのです。葬儀を手伝っていたみずきさんの同僚という人も。
夏くんだけがなにも知らずにいた。
引き取っても引き取らなくても、あなたの自由、みたいなこと言われる。
なかなか繊細な流れ。おばあちゃん役・大竹しのぶさんの複雑な表情さすが。

最後に、海ちゃんが夏くんのアパートを訪れ、二人でお母さん(みずきさん)の動画を一緒に見るのです。
海ちゃんは懐かしそうに。
夏くんは涙を流しながら。
海ちゃんが言う。
「夏くんは海のパパなんでしょう?」
「夏くんはいつ海のパパを始めるの?」
(※セリフ通りではありませんがこんな意味の会話)

ドラマの初めに示唆的な言葉はありました。
中絶を悩んでいる二人。みずきさんが
「あなたはおろすことも、生むこともできないからね」
だから判断は自分にさせてほしい、という言葉。
みずきさんの葬儀後にその母親(大竹しのぶ)が言った、
男の人は自分が父親になったかどうかなんて、一緒にいなければ知るよしがない(意味はこんな)、という言葉。

気が優しく優柔不断ともいえる夏くんは、ぐるぐる翻弄されている。
中絶の同意に悩めば、判断は私がすると恋人に言われる。
直後に好きな人ができたと、別れを言い渡される。
音信不通。
夏くんにもいい感じの恋人ができてという設定のなか、いきなり7歳の娘が現れる。
ずっと別々に生きてきて、「ひきとってもひきとらなくてもご自由に」と言われ、もし気になったらこのメモの番号に電話してね、気にならなければメモは捨てていいよ、と言われる。

「え?え?え?」
だと思う。
そしてさいごの「夏くんはいつパパを始めるの?」。

すごいなー、うまいなー、と思いました。
翻弄されているようでも、見方を変えれば、夏くんにはすべてが任されている。あなた次第だよ、と言われているんです。
パパになるのは、結婚したから、子どもが生まれたから、じゃない。
「パパを始める」という意志が芽生えて、子どもの成長と一緒にパパになって行く。
どこかからもたらされるのではなく、自分から始めて行くものなんだ。

それはパパに限ったことではなく。
ママだって。お仕事だって。場合によっては家族だって。

面白くなりそうで、うれしいです。
連続ドラマの境目は、さびしくて退屈で、なにか夢中になれるものが欲しいのです。ちなみに、今期はその退屈を漢字ナンクロの復活が埋めてくれました(笑)。
そんな中で、とても見ごたえのありそうなドラマが始まりました。
ありがたや。


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