朝のお客さん
朝7時、玄関チャイムが鳴った。
私はマル太郎に白湯をあげている最中だった。
飲ませる態勢をとるのが難しく、ようやくいい感じにはまって
ヨシヨシと調子よく飲ませている所だった。
「もー、こういう時に来るかー?」
こんな朝早くやってくるのは、あの「パステルばーちゃん」である可能性が高い。
「百合子さんいた?え、まだ寝てるの?まー、私なんかとっくに朝ご飯食べたのに。百合子さんいた?」と繰り返すさまを想像しながら「ちっ」と言わんばかりにマル太郎をまた寝かせて玄関へ向かう。
玄関引き戸のガラスの向こうには、Pばーちゃん相当な背丈の小さな人影がある。またあの畳みかけるようなおしゃべりを聞くのか。
「はい、おはようございます」と戸を開ける。
そこにいたのは、Pばーちゃんではなく、ヒトミさんだった。
「百合子さんいる?」
「うん、まだ寝てるよ?」
「起こして来いて。今日のお寺の講演会一緒に行ぐんだんが」
と、案内ハガキを見せてくれる。
ああこれね。
「10時半だと思ったら10時からだったすけに、おらウチに9時半に来てくれそう言おうと思ってそ」
不思議なことに、これが例のパステルさんだったら、私はまたイライラのるつぼにはまっていくのだが、ヒトミさんの場合それが全然ないのだ。
好きなんかな(笑)
「わかった、もうちょっとしたら起こしてそう言っとく。9時半に行くね」
「おれなんか、まいんち4時起きだて。起きて田んぼ回って畑してる」
「えー、じゃあ夜寝るのは早い?」
「うーんと、それでも10時ぐれぇかな。目が覚めるとへぇ明るいなんが、そのまんま起きるんだ。寝てらんなくて」
ははは、と笑いあって、終わった。
この違いはなんだ。
思うに、こちらの話を落ち着いて最後まで聞いてちゃんと返してくれるということが、ヒトミさんに対する安心感なのだろう。
それから、思い込みが少ない。
義母やPばーちゃんと話す時、はたして話をちゃんと最後まで聞いてくれるだろうか、言う事が伝わるだろうか、思い込みで理解されないだろうか、という不安が先に来る。
ちなみに、ヒトミさんはPばーちゃんの実のお姉さんである。
義母ともにアラ・90トリオ。
すっごくお手本な3人。
この3人は、自分の老境へのお手本みたい。
自分のこだわりを取り払って、もっと先輩たちにやさしく、たのしくありたい。毎日、言うことが違ったって、忘れたって、いいじゃないか?
いずれ行く道なのでね~(;^_^A
なんて、珍しく朗らかになった朝。
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