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いまはもう言わない
週2回、実家に行く。
高齢の両親の顔を見て、両親を支えている弟としゃべって
配食のお昼の弁当をセットして、朝食用の味噌汁を3日分くらい作って
帰ってくる。
行くたびにじわりじわりと、両親は弱っている。
月1回(つまり8回行って1回)くらいは、そう感じる。
帰ろうとすると、甘いお菓子やポテチなんか出てくる。
母はもう動くのが大儀だから、父が、ちいさなお菓子鉢に入れてくる。
オロナミンCやコーラがブームになっていたり
父などは、「ちゃいなマーブル」という昔懐かしの飴玉やゼリービーンズを
ずらっと、ジャムの空き瓶にコレクションしたりしている。
夏場は毎日アイスクリームを食べていた。
ちょっと前なら、「身体によくないなぁ」ということを言った。
それから「ちょっとくらいは、いいよねぇ」と歩み寄り、
いまはもう言わない。
それが数少ない楽しみなんだから。
もちろん、その嗜好品を見るたびに内心「あー」とは思うんだけども。
最近のポテチは、いろんな食感やフレーバーがあるのを知った。
コンビニで見つけると、自分で買ったり。
実家と同じことをするのがなんかうれしい。
私などにもてなさなくていいよ、と遠慮したこともあったが
この頃は、おしゃべりしながら、一緒に食べる。
子どものころのように、親子でコタツを囲んで。
いつも来てくれる事への感謝の気もちなんだと思う。
ほんの小一時間、顔を見て帰るだけなんだけど。
両親の気が済むならそれでいい。
私と実家。
実家のありよう。
おぼろ豆腐みたいに、ぐずぐずだなぁと感じる。
ぐずぐずに崩れて、なんとなく手をつないで、ニコニコしながら。
あれもこれも心配だし、物足りないし、不備なんだけど。
それでもなんか、美味しいとろみに包まれている。
まだ、両親の毎日は動いている。進んでいる。
そんな感じで。
今日も行って来る。
ぬるくて、ぼんやりで、朗らかで危なっかしいけど
なかなか意地っ張りな実家。
いかにも私を育てた実家。