初雪のころ
いよいよ冬の到来を感じる。
昨日の生暖かい風は、今朝になって北風に変わる。
明日は雪を連れてくるのかも知れない。
大切な命を見送ってから一年たたないと、なかなか心が癒えないと聞いたことがある。その存在と過ごした四季折々の風景。
何度か巡り来ることで、だんだんと不在と愛おしさが心になじんでいく。
マル太郎がいなくなってから5ヶ月。まだ5ヶ月。
季節が移り変わるたびに、思い出はやってくる。
朝歩く道の角に。
農道に立ち枯れている雑草の陰に。
霧の漂うその向こうに。
マル太郎と私が歩いて行く。
目が見えなくなって部屋の隅っこに突っ込んでいたな。
コタツの回りをぐるぐる回っては休んでいたな。
ご飯を食べる様子。
外に出ておしっこをして、冬を含んだ風を感じていた顔。
夜は私の布団に目くら滅法に突進しては、そのまま眠っていた。
その姿を部屋のどこかに探しては布団を敷く手が停まる。
過去ばっかりが訪れる。優しく切ない顔で。
年を取るってそういうことなのかなぁと思う。
明日も体が痛いだろう。
昔のようにはもう動けないんだろう。
頭も冴えないな。
家に居ても気持ちの張りがない。
過去ばっかりがやってくる日は、きっとそういう日なんだ。
たまには不調にもなるさ、人間だもの、ねえ、みつをさん。
実家に行ったら、両親の毎度毎度の話を聞くのも辛かったが
弟がすすめてくれた温かい生姜湯の熱が、体中を巡った。
きっと明日はまた違う日になるさ。
朝は初雪が降るだろうか。
マル太郎のいない雪の日々が来る。