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the pillowsを聴きながら過ごした十数年のこと
こんにちは。バンドーです。
有志によって開催されている、the pillowsというロックバンドに関する記事を投稿する非公式note企画に僕も参加させていただきます。
僕は音楽を聴くのが好きなのですけど、中でもピロウズは思い入れが強いアーティストのひとつになっています。思春期の頃にバスターズ(ピロウズファンの総称)になってから色々なことがあったけど、今でもやっぱり聴き続けている。その理由はいつまでも変わらない自分の性質と、ここ数年で知り合った周りの方々による影響が大きいと思います。
the pillowsにちなんだ、これまでの僕自身のことを淡々と書くことにします。長くなるのでゆっくり読んで楽しんでいただけたら幸いです。
the pillowsとの出会いは必然だったのか
あなたのピロウズはどこから?
私はYO-KINGから。
「人は17歳の頃に聴いていた音楽を一生聴き続ける」という説をネットで見たことがあるけれど、妙に納得がいく。僕がthe pillowsというバンドを知ったのも、17歳の時だった。
音楽は好きだけど、幅広くいろんなアーティストを知っているわけではなかった。当時から熱心に聴いていた数少ないバンド・真心ブラザーズ。そのボーカリストであるYO-KINGが、ソロでカバーをした曲がある。トリビュートアルバムにも収録された『この世の果てまで』だ。このカバーを聴いたのが、間接的にピロウズを知るきっかけだった。
当初はカバーであることすら知らず、純粋なYO-KINGの楽曲だと思っていた『この世の果てまで』。重大な勘違いに気付いて本当の原曲を聴くまでに、さほど時間はかからなかった。スネアドラムの連打から始まり、イントロでかき鳴らされるギター。ロックバンドの音楽だ。
そこからすぐ劇的にのめり込むまでは至らなかったものの、ほんのりとピロウズにも興味を持つようになった。手始めに2009年にリリースされた2枚のベストアルバムを借りて聴いた。
ONE LIFEは学生時代の象徴だ
僕にとってピロウズの代名詞は、「孤独」だ。バスターズになってから10年以上経った今でもその考えは変わらない。
子供の頃から比較的人には恵まれていた自覚があるけれど、周囲の流行りや好きなものを理解出来ず、自分だけ常識が欠けているような気もして、常にどこか疎外感があった。思春期特有の複雑でめんどくさい感受性を、ピロウズの曲はいつだって肯定してくれた。心の孤独は音楽で埋めるしか方法が分からなかったのだ。
ベストアルバム2枚だけで幅広くピロウズの曲を知ることが出来たけど、中でも『ONE LIFE』は深く刺さった。学生時代は叶わない片思いをしていて、ずっとその苦しみに囚われていた。同時に、些細な会話とかやりとりのひとつひとつで一喜一憂して、しかしそれによって生活に色がついていたことも事実だった。
目的も方向も明らかにズレていて、愚直に歩き続けていた日々。ONE LIFEは今聴いても、今よりも視野が狭く自意識が過剰だった、未熟なあの頃を思い出してしまう。紛れもない学生時代の象徴だ。
30手前となった今でも、悲しいことに精神的な浅はかさはほとんど変わっていない。社会人生活も長くなり多少は物事を学習するようになったものの、根っこにある自己中心的な気持ちや致命的な欠陥はずっと直らないままだ。いつまでも低空飛行で右往左往している自分がthe pillowsというロックバンドと出会ったのも、ある種の必然だったのかもしれない。そんなことを考えながら、きっとまたイヤホンをつけて『ONE LIFE』なんか聴いてしまうのだろう。
上京し、ライブに行く
初めてのピロウズライブ
高等専門学校を卒業したのち、社会人として東京に引っ越してきたのが20歳の時。好きなバンドがライブに来ることがまず無かったほどの地方で過ごしてきた反動から、社畜として得たそれなりの給料で、頻繁にライブ会場へ足を運ぶようになった。
初めて行ったピロウズのライブは2016年9月、横浜Bay Hallでの公演。ふくろうず、東京カランコロンとのスリーマンだった。ピロウズはイベントのトリで登場する。これまで音源でしか認識出来なかった憧れの人たちが、同じ世界で生きていることを実感して震える。これは上京したての、あの時しか味わえなかった感動だ。
冒頭の『Dance with God』~『ビスケットハンマー』という流れは今でも鮮明に覚えている。Dance with Godは当時何度か生で聴いたけれど、今思えばめちゃくちゃ貴重な機会だったな。何も知らなかったので、「実はライブの定番曲なのか?」と思っていた。
バンドとの出会いでもある『この世の果てまで』も聴くことが出来た。曲の最中、さわおさんと一瞬目が合ったような気がする。あのさわおさんが目の前でギターを弾き、歌っている。その状況がひたすら新鮮で刺激的だった。
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自我を作った2つのバンドが共演
同じ2016年に、思い出に残るライブがあった。11月21日、LOST IN TIMEとのツーマンライブだ。LOST IN TIMEは同じく17歳の時に知り、ピロウズと同様、学生時代に僕の自我を形成した大好きなバンドだ。この2組の共演なんて、観に行かなければ絶対後悔する。社会人1年目の立場などお構いなしに有休を消化し、渋谷クアトロに行った。
ピロウズはゲスト枠なので1番手として登場。この日は滅多にライブで聴けない『確かめに行こう』が演奏された。
LOST IN TIMEの海北大輔さんは、ピロウズの打ち上げに時々参加して少しずつ近付き、いつか対バンをしようと計画していたのだそう。しかし、まずさわおさんに手紙を出したところ、「いいよ〜」と軽い返事でOKが来たらしい。そのエピソードを聞いて思わず笑ってしまったけど、実はあっさりめで気さくなさわおさんらしいやりとりを知ってホッコリもした。
そんなLOST IN TIMEは、アンコールで『Please Mr.Lostman』をカバーした。学生の時にも聴き込んだお気に入りの曲を、海北さんの優しくあたたかい歌声で聴けて感無量だった。今は上京して9年目、もうたくさんのライブに行ったけれど、この日は忘れられない貴重な1日になった。最後に出演者と観客全員で撮った集合写真には、密かに僕も写っている。
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バスターズと作った繋がり
タイムラインを漂うヘイホー
ピロウズの30周年アニバーサリーライブが終わって数ヶ月経ってから、ツイッター(現X)で趣味用のアカウントを作った。これまで東京には友人がいなかったのだけど、とある人の本やブログを読んで、ネット上の知り合いやリアルでの繋がりを作りたくなったのだ。
当初はいろんな音楽に関して共通の好みがあるいろんな人と繋がりたいと思っていたけれど、たくさんのバスターズが盛り上がっているところに自分も飛び込んでいるうちに、自然とピロウズに絡んだ知人が大半を占めるようになった。新型コロナウイルスが生活様式をガラリと変えてしまい、オンライン上でイベントや企画が頻繁に行われるようになったことも大きい。
僕はスーパーマリオのキャラクター・ヘイホーが好きで、そのぬいぐるみをアイコンにしていることを何度か言及されることがあった。
そこから思い切ってヘイホーが本体とうそぶいたり、旅行先やライブ会場でヘイホーのぬいぐるみと写真を撮ってSNSにアップすることで、次第に「ヘイホーの人」として認識される機会が増えた。初対面の人にもぬいぐるみを見せることで、「ツイッターで見たことある」と言われたり。身分証明の代わりになっている。
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ピロウズにちなんだ創作として、曲の歌詞をモチーフにした短歌「ピロウズ短歌」なるものを作って投稿していた時期もあった。好きな作家の影響で短歌に興味を持ったことと、周りのバスターズが自分の得意分野を活かして様々な創作をしていたことが繋がったのだ。お酒を飲みつつ歌集を読みながらアイデアがひらめいて、見切り発車でスタートした。
短歌自体はほとんど知識もなく完全な素人だったけれど、自分の中にある曲のイメージが57577の31字で表現出来た時は気持ち良かった。ただ単に歌詞を切り抜いただけだとつまらないけれど、イメージに強くこだわり過ぎても読み手にうまく伝わらない。表現のバランス配分がかなり難しかった。
昨日まで選ばれなかった僕らこそあの虹の美しさが分かる
— バンドー (@Qs4sX) July 23, 2023
『ハイブリッド レインボウ』より#ピロウズ短歌 #tanka pic.twitter.com/M1wDMY3klQ
↑これはピロウズの代表曲『ハイブリッド レインボウ』を元にした短歌です。
今は短歌を作ってはいないのだけど、これまで作ったピロウズ短歌を解説付きでまとめた記事もあるので、読んでもらえると嬉しいです。
ドラムスティックを再び握った
バスターズの人たちと集まっていた時に「ピロウズのセッション会に出てみないか」と誘われたのがきっかけで、数年ぶりにドラムを叩くようになった。ピロウズのコピーバンド、枕営業が主催するイベント・枕カバー会だ。バンドもイベントもネーミングセンスが秀逸すぎる。
僕は小学4年生からブラスバンドや吹奏楽部で打楽器をやっていて、高専の軽音楽部で初めてドラムを叩いた。後輩とピロウズのコピーバンドを組んで文化祭で披露したこともある。就職してからは楽器を触らなくなったけど、イベントの参加が決まってからは週末に近所のスタジオを予約し、担当する曲を猛練習した。
慣れないセッションはとにかく緊張したけれど、音を合わせる快感を久しぶりに味わえて楽しかった。1人でぺらぺら弾きながらでも楽しめるギターと違い、ドラムは単体だとどこか味気ないし、バンドで合わせてこそ魅力を発揮するものなのだ。
枕カバー会で得られた繋がりは大きく、今ではそこで知り合った人たちとバンドを組むまで至った。ピロウズを始めとする、さわおさんが活動しているあらゆるバンドをコピーしている知人から、THE PREDATORSのコピバンに誘われたのがはじまりだ。2023年の10月に初めてのライブに出た。
東京でバンドを組んでライブをするなんて、就職したての頃は全く考えもしなかった。本番では力が入り過ぎてスティックが握れなくなってしまったけど、久しぶりのステージは気持ちよかったし、何より楽しかった。演奏を見ていた人から「顔でドラムを叩くタイプだ」と激励してもらい、これはドラマーとしての自分のアイデンティティだと勝手に解釈して、これ以降のライブでも毎回強く意識している。
同じくセッション会で知り合った人に誘われて、フラワーカンパニーズのコピーバンドにも参加した。フラカンは今までコピーをした経験がなかったけど、曲を聴きながらドラムを叩く妄想は何度もしたことがある。なのでお誘いが来て嬉しかった。元々はサポートメンバーとして加入したけれど、今年6月のライブを経て正式なメンバーになった。
そして同年代の友人たちと、the pillowsのコピーバンド結成も実現した。9月15日、枕営業主催のピロウズコピバンオンリーイベントが初ライブとなる。916アニバーサリーの前夜を一緒に盛り上げたい。ドラムは数少ない自分の取り柄でもあるし、労働のストレスを発散する絶好の手段なので、これからも無理しすぎず楽しもうと思う。
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おわりに
勘のいい人は既に気付いているかもしれませんが、この記事は2020年のバスターズペーパー企画で書いた文章を基にして作ったものです。今回のnote企画にあたってその内容をリメイクしようとしたのですが(アイデア自体は去年からひっそりと温めていた)、当時の文章を読み返すとあまりにも恥ずかしいことまで大っぴらに書いていて身悶えしてしまいました。
そっくりそのまま再リリースするのは流石に抵抗があったので、骨組みを残したまま文章を再構築することにしました。結果、文章のほとんどを一から書き直すことに。上京当初のことはブログにもほとんど残していないので、思い出を語る良い機会でした。30周年以降のくだりは完全な書き下ろしです。
今思えば、あのペーパー企画がバスターズとの交流を深めることになった大きなきっかけだったことは間違いないでしょう。あれから4年近く経った今では、自分自身の気持ちも色々変わってしまいました。
横アリ以降の5年間はもちろん良いことばかりではなく、コロナの蔓延によってあらゆるライブ・イベントが中止され、自分の精神にも大きく悪影響を及ぼした。娯楽は奪われるのに労働だけは容赦なく強要させられ、職場でもライブの趣味をどやされることに、内心ずっと腹が立っていた。同じ時期に仕事がつらくなって休職したのだけど、こういったストレスも無関係ではなかったと思います。
今は前ほど積極的に人と繋がりたいという気持ちも薄れ、ネットやリアルをふわふわ漂いながら今ある繋がりを大切にしたいと思っています。流れる先で新しい繋がりを得る機会もありますし、そういう偶然発生したイベントが面白かったりもします。
元々体力も気力もない自分が、なけなしのエネルギーを使って今も生きられているのは、間違いなくリアルやネットで仲良くしてくれている人たちのおかげです。様々な機会と引き合わせてくれたルーツであるthe pillowsとは、もはや切っても切り離せない縁みたいなものを感じています。
「気持ちを外に向けることをやめなければ時々いいことが起こる」というのが、ネットから数年活動してきた中で見出した、僕なりの持論です。疲れていたり気乗りしなかったりでどうしても動けないことも多いけど、たまに動けばありがたいご縁に繋がるかもしれない。自分自身が楽しく生きていくために、これからもどうにか折れないようやっていきたいです。
最近ヘビロテしている曲は『Freebee Honey』。自分のアンセムソングにしたい、と勝手に思っています。自分の正体を見破り向き合いながら、最終回を図にのって録り直している。そんな調子でゆるく毎日をやっています。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。またご縁がありましたら、どこかでお会いしましょう。ピロウズのライブ会場でヘイホーを見かけたら指でも差して笑ってやってください。たぶん僕も笑い返しますので。
バンドー