『デデデのデ』 Ⅳ
Ⅳ 「ザンダカ主義」
○ 公園
辺りに桜が咲き誇る花見の季節。
多くのグループがそれぞれの流儀で楽しむ。
外国人の姿も珍しくない。
○ 同・芝生の外れ
中東系の髭男4人組がゴザに座って談笑中。
(年配のヤバイ、のっぽのシヌ、ちびのヘンナ、でぶのクルシー)
酌み交わすのはミルク色の飲み物、母国産の蒸留酒アラック。
ひよこ豆の缶詰、ケバブもどきの焼き鳥などがつまみ。
酔って目が据わりはじめ、ときおり大きな声で言い合う。
隣で片づけだした日本人グループに掛け合い、酒と料理をゲット。
もう一方の西欧人らしき男女5人組も酒瓶を放置したまま撤収。
髭男たちはそれらも頂戴し、ますます宴が進む。
と、ちびのヘンナが芝生の上に財布の落とし物を発見。
すぐ寄ってきたシヌ、クルシーと一緒にその中を検める。
ヤバイ 「マブルーク!(おめでとう)」
と、背後から財布を取り上げる。
○ ATM・表
自動ドアが開き、嬉しそうに出てくるヤバイ。
内ポケットに手をやり何やら確かめるふう。
周囲を見まわし、真面目くさった顔つきとなる。
○ 公園・芝生の外れ
戻ってきたヤバイ。
が、ゴザの上で倒れている血だらけの3人。
驚くヤバイ。
その目の前に人の影、先ほどの西欧人らしき鼻男3人。
(赤ら顔のイン、天然パーマのヤー、あばた面のバグ)
とっさに駆けだすヤバイ。すぐさま追いかける鼻男たち。
○ 工業団地
産業会館、倉庫、オフィスビル、工場で繰り返される逃亡と追跡。
パルクールとトリッキングを組み合わせたような技の応酬。
近隣の外国人労働者は大喜び。
○ 無国籍料理店
いきなり突入してくるヤバイ。
客席を飛び越え厨房内に侵入し、短刀まがいの包丁を手にする。
追ってきた鼻男イン、同様に長刀っぽい包丁を取って構える。
両者ともホールへ飛び出し、中東独自の短剣の舞、かたや西欧なら
ではのソードダンスを繰り広げる。
○ 駐輪スペース
建物から飛び出たヤバイが駆けてくる。
傍らのBMXに飛び乗り、一目散に逃げる。
○ 幹線道路
力いっぱいペダルを踏み、スピードを上げるヤバイ。
と、背後からモトクロスバイクに乗った鼻男ヤー。
慌てて切り返すヤバイと、転倒して盛り土を滑り落ちるヤー。
すかさずヤバイはバイクに乗り換え、走り去る。
○ 坂道
全速力で上っていくヤバイ。
後ろからはオープンカーに乗った鼻男3人の姿。
○ 山の中腹
バイクを乗り捨て、草むらを駆けるヤバイ。
やがてハングライダーの離陸場所へやってくる。
置かれたグライダーを身につけ、一気に飛び立つ。
○ 上空
気持ちよさそうに滑空するヤバイ。
と、すぐ横を電動パラグライダーに乗った鼻男バグ。
焦るヤバイは急降下し、眼下の着陸地点を探す。
○ 川べり
砂利の集まる場所へかろうじて着地するヤバイ。
付近にはキャンプに興じる人々。
並ぶ一艇のカヤックを持ち上げ、急流へ飛び入る。
○ 川下り
軽快に川面を漕いでいくヤバイ。
しばらくするとラフティングで迫ってくる鼻男3人。
流れを利用し、追いつ追われつの両者。
○ 船着き場
やっとの思いで辿り着くヤバイ。
その場にあるウインドサーフィンに乗り換える。
遠くに沈没しかけのラフト(いかだ)。
○ 河口から海へ
風に乗って海面を滑るように進むヤバイ。
海岸の先に隠れ場所となりそうな洞窟を発見する。
が、水上オートバイに乗った鼻男3人が向かってくる。
○ 海岸の崖
逃げ場がなく断崖を登っていくヤバイ。
フリークライミングのごとく身をこなし駆け上がる。
と、ジェットスーツを装着した鼻男インが近くを上昇してくる。
岩の割れ目へ逃れ、その奥へと入っていくヤバイ。
○ 洞窟内
いつのまにかヤバイがいるのは洞窟っぽい空間。
微かな外光を頼りにその向こうを目指す。
しかし、暗視カメラをつけた小型ドローンがつけてくる。
這いつくばりながら必死にかわしていくヤバイ。
○ 地下トンネル内
どう見てもヤバイがいるのは地下トンネルの通路。
呆然と体をすくませ前後を見やる。
と、頭上の穴からいきなり火炎放射の炎。
あたふたと駆けだすが、行く手はいずれも鉄格子。
その間から遠隔操作のロボットがやってくる。
決死の覚悟で頭上の壁梯子をつかみ、穴から顔を出す。
その上から覗き込むのはまさに鼻男3人。
○ 公園・芝生の外れ(夜)
はっと目を覚ます髭男ヤバイ。
辺りはもう真っ暗。
ゴザの上には酔いつぶれて横になるシヌ、ヘンナ、クルシー。
その向こうで鼻男3人が途方に暮れたように立つ。
事態をすぐに飲み込めないヤバイ。
思い出したように内ポケットから財布を差し出す。
途端に顔をほころばせる鼻男たち。
イン 「シュ、……シュクラン!(ありがとう)」
<終>