夜が深まっていく中、古びた石造りのアーチがぽつんと置かれた車と一緒に今にも消えそうな街灯に照らされている。「ねえ、この場所、覚えてる?」彼女がほほ笑みながら振り返る。「ここで初めて会ったんだよね。」
「うん、そうだね。」彼は優しく笑って、ちょっと遠くを見つめる。「今日、大事な話があるんだ」
二人は幼なじみで、一緒に遊び回ったり、色々な場面をともに過ごしてきた。お互いは彼ら自身の思い出を蘇らせることのできる大切な存在だった。
でも時間が経つにつれて、二人の道は変わってきた。彼女は都会の生活に夢中になり、キャリアを重視するようになった。彼はもっと自然の多い、静かな田舎での生活を望んでいた。
徐々に、会う頻度も減り、連絡もまばらになっていった。
そして今夜、彼はこの場所で最後の別れを決めたのだ。過去を振り返りながら、これからの人生に向けての決意を新たにするために。
「君が夢を叶えることを願ってる」と彼女は涙ぐみながら言った。「僕も幸せになるよ。君のことはずっと忘れない。」彼は優しく答えた。
二人は振り返ることなく、それぞれの車に乗り込んだ。エンジンの音が静かな夜に響き渡り、ヘッドライトが暗闇を切り裂いていった。
車が走り去った後、石造りのアーチだけが静かにその場に残っていた。暗闇の中、街灯がそれを照らしている。
夜風がそっと吹き、街灯が消えた。彼らの別れは静かに夜に溶け込んでいった。