第27回:生成AI時代の英単語の覚え方
こちらの記事では、生成AI時代の英単語の覚え方についてご紹介します。
こちらの記事でご紹介する英単語の学習法は「ビジネス英会話を少しでも早く習得する」、1日も早くビジネス・シーンでペラペラになるための学習法で、英語学習のゴールが別のところにある方はまた別の学習法の方が合っているということはありえる点にご留意ください。
1.難解な英単語を覚えるのをやめる
この点はこちらのマガジンで何度も強調している点になりますが、難解な英単語を覚えることとビジネス英会話上達の相性は最悪です。
Exorbitant, budge, fraught, afoul, whammy, dovetail, precept, permeate, felony などの難解な英単語を覚えてもこれらをビジネス・シーンで使うことはほぼないため、これらを学習してもビジネス英会話はほぼ全く上達しません。
一方で、(英語の場合、日本語や中国語のように漢字で意味を想起することができないため)これらを覚えるのは読者の方も想像できる通りかなり大変で時間がかかり、これらの学習に時間をとってしまうと以下でご紹介する「やればやるほどビジネス英会話が上達する英単語学習」に用いるための時間を確保できなくなってしまいます。
上記で例にだした9個の難解な英単語は全て筆者が英語のニュースか書籍を読んでいてわからなかったものを自分の英単語帳に保存しておいたものですが、これらは全部 わからなくても今はKindleでもChromeでもワンタップ(または数タップ)で日本語の意味をだせる ようになっています。
難解な英単語を覚える必要性は年々低下していますので、ビジネス英会話の上達を目指している方は安心して難解な英単語を覚えるのをやめましょう。
2.英和辞書の活用はパッシブにとどめ、英単語の意味は生成AIで確認するようにする
筆者の英語学習はこの20年ほど常に(オンラインの)英和辞書と共にあったのですが、生成AIの登場で英和辞書の役割はより限定的になってきていると感じています。
(学習で使うことは減ってきていますが、上記の1.の通り、英語のニュースや書籍を読んでいてワンタップで意味を確認することは増えています。)
ひとつの例として、先日筆者がYouTube動画(なぜ多くの人がTikTokを活用するのか?というディスカッション)をみていて
という表現のニュアンスが分かりませんでした。
"Embrace" という単語は purview, botch, potent, mainstay, feral, cocksure などの単語とは異なりビジネス英語できちんと理解をしておくべき単語だと思いますが、筆者がその意味を生成AIで確認したところ以下のような回答が返ってき、ここにおける embrace のニュアンスは「積極的に取り入れる・取り組む」だとわかりました。
これを、とある英和辞書で "embrace" の意味をひいてみると
とありました。
今回の文章における "embrace" の使われ方はこの辞書の 3. が近いですが、ここからとれた情報量としてたった数十文字のみになってしまいます。
この数十文字の情報だけだと、That’s why they embrace it. という表現によって話者が「(だから)多くの人がTikTokを自分たちの意思で積極的に活用しているんだ」という細かいニュアンスまではかっちりと理解できず、「積極的に取り入れる・取り組む」という意味の embrace はパッシブボキャブラリ(リスニングでだいたいの意味はわかる)にとどまり、アクティブボキャブラリ(その単語を使いこなして、スピーキングでニュアンスも込めて使える)にはなりません。
私たち日本人のほとんど全員がこれまで「英語は読めるけど話せない」だったのは、辞書という仕組み(パッシブボキャブラリは増やせるもののアクティブボキャブラリを増やすのは一定のハードルがある)の限界も大きかったのかもしれません。
3.自分が学習を必要としている英単語を学習する
3.1. 自分が英語を話す可能性が高いシチュエーションに合わせた文章の中の英単語を確認する
上記の2.では「英単語をどう学習するか?」をご説明しましたが、こちらの3.では「どの英単語を学習するか?」をご説明します。
こちらの記事
でもご紹介しましたが、私たち1人1人ごとに、
など、業種と自分の役割によって仕事で英会話を用いるシチュエーションと内容はかなり異なってきます。
そのため、自分が属する業界・自分の役割で英会話を用いうるシチュエーションでの英語のやり取りのモデル・スクリプトをChatGPTなどの生成AIに出力してもらって自分の業界、役割で用いうる英文を確認し、その中でわからない・基本的な意味はわかるものの自由自在に使いこなしているかというとそこまでではない英単語を自分の学習リストに登録します。
モデル・スクリプトを読むだけでは意外と文脈で意味を理解してしまえ、自分が個別の単語の意味を深く理解しているかが中途半端になることも少なくないため、さらにそのスクリプトを瞬間英作文形式に変換して、自分が日本語を英語にする際にまだ深く理解できていなかったなという英単語をやはり学習リストに登録して、それらの単語を難解な英単語の代わりに学習してきます。
3.2. 自分自身の話し方で流暢な英語を話すための英文内の英単語を学習する
また、上記のnote記事でもご紹介している通り、自分が属する業界、自分の役割に加えて、今度は自分独特の話し方・物事の伝え方というのを私たち1人1人がもっています。
自分なりの話し方をより洗練された英語にする学習法は
ChatGPTとのQ&Aセッション
ChatGPTとのロールプレイ
の2つをこちらのマガジンでご紹介してきましたが、この2つの学習を進める際にChatGPTがだしてきた単語、フレーズ、表現で自分が使いこなしていないと感じたものを、上記と同様に自分の単語帳に登録して学習していきます。
これらにより「学習しても自分がビジネス・シーンで使う可能性はほとんどない」英単語を学習してしまう無駄を減らし、英単語の学習効率をあげられます。
まとめ
英単語の学習はアルファベットの T の字のようなもので、
T の横棒:より多くの英単語を、パッシブボキャブラリのレベルで覚える
T の縦棒:より限られた数の英単語を、アクティブボキャブラリのレベルで覚える
の2つからなりますが、私たち日本人はこれまで学習教材の限界もあり、ビジネス英会話の上達とはあまり関係のない T の横棒の部分ばかり学習しがちでした。
それが生成AIの登場によって学習の環境として、ビジネス英会話の上達により直接効く T の縦棒部分も学習できるようになってきており、あとは自分自身の意思のみの問題となっています。
Good News としては、T の縦棒部分の学習は T の横棒部分の学習と比べて効果がすぐ実感できるのみならず苦痛も少ない(学習する対象は conflation, usher, replete, loath, deft, dissident, stifling, stipend ではなく embrace, navigate, address などのすでにある程度は知っている単語の少し異なるニュアンスや異なる意味の学習になり、学習にあたって頭にすっとはいってきやすい)です。
ビジネス英会話の上達をゴールとしている英語学習者の方は、生成AIの登場を契機として、ぜひ T の横棒部分の学習偏重から T の縦棒部分の学習を中心とした英単語の学習にシフトされてみてください。