スウェットの編み機について
ネットでいろいろとスウェットを見ていると
吊り編み、アズマなど編み機に種類があることに気になったので、編み機について調べてみました。
同じく気になっていた方の参考になれば幸いです。
「編む」とは
そもそも「織る」と「編む」はどう違うのでしょうか?
「織る」は、縦糸と横糸の2種類の糸を組み合わせて生地を作ること。
「編む」は、糸の輪を連ねて生地を作ること。
余談ですが、名曲の糸では「織りなす糸は」とあるようの織物の話をしています。スウェットは編物なので、この歌は関係ありません。
この生地の作り方の違いは、織物と編物の生地の特徴にも現れてきます。
織った生地は、伸縮性がなくしっかりしているのに対して、編んだ生地は伸縮性があり通気性もあります。
では、編むときの構造についてもう少し詳しく説明します。
1例にはなりますが、次のように輪を連続してつなげていくものです。
編み方の種類
編み方には緯編み(よこあみ)と経編み(たてあみ)の大きく二種種があり、その特徴によって複数の編み機が存在しています。
編み機の分類については福原精機製作所さんが分類図を作っていたのでそちらを引用します。
スウェットを調べていてあまり目にしなかった編み機もあるので、
今回は緯編み機の中で、現在スウェット生産で主に使われている、円形編機にフォーカスして紹介していきます。
スウェットでの編み機の種類
スウェットを調べていて、商品説明に〇〇編み機と表記されているものをいくつか挙げています。
私が見つけた中にはいくつかは丸編み機のブランドを記載したものもあったようでした。
吊り編み機
おそらく商品説明で最も見る編み機。
名前は編み機が梁(はり)に吊り下げられている事に由来します。
この吊り編み機は1950から1960年代に全世界で活躍し、日本でも1900年初頭から輸入され、スイスから輸入したため「スイスツール」とも呼ばれていました。
編み機自体を天井から吊り下げ、糸自体の重さでゆっくりと編み下げられることから、この編機を使った吊り編み生地には余計なテンションがかからずに空気を含んだような柔らかな風合いの生地が生み出されます。
高速の編み機が1時間に24mのスウェットを編む一方で、吊り編みではわずか1mしか編むことができず。非効率なため廃れていきました。
現在では世界で唯一和歌山県で稼働するのみ
所在地:和歌山
主なブランド:Loopwheeler
アズマ編み機
商品ページでは以下のように説明されていました。
こちらは丸編み機の一種でしょう。
アズマ製作所が製造した編み機を指しているものと思われます。
アズマ製作所は中小企業で国内向けの製造をしていたようなので、こちらも日本にしか現存しないのではないでしょうか。
所在地:和歌山
主なブランド:SIPULI, URBAN RESEARCHなど
ジャンベルカ編み機
商品ページでは以下のように説明されていました。
この編み機について詳しい説明は見つかりませんでしたが、
おそらくジャンベルカという会社が製造した丸編み機のことでしょう。
ジャンベルカは1962年から編み機を製造しているスペインの企業ですが、機械自体がドイツで製造されているものと思われます。
主なブランド:BATONER, YAECA
トンプキン編み機
円形編みの中でも最も特殊な編み機。
通常円形編み機が上から下に編まれて行くのと違い、下から上と編んで行くのが特徴。この重力に逆らった動きで自重の負荷を受けず、糸にも余計な力がかからないため、空気をたっぷりと含んだ柔らかな生地に仕上がるそうです。アメリカや中国にも現存するそうですが、国内では数台しかないそうです。
主なブランド:gym master, Loop & Weft
https://store.gymmaster.jp/topics_detail.html?info_id=97
シンカー編み機
今まで紹介したもの以外の一般的なスウェットは基本この丸編み機で作られています。
吊り編み機の10倍以上の生産効率だそうです。
「シンカー編み機使用」などと謳ったものはなかったですが、おそらく基本的にはこの編み機と思うことにします。
どれが柔らかいのか?(予想)
完全に予想にはなるのですが、自分なりに調べていて生地の柔らかい順を考えてみました。
ゆっくりかつ編んだ際の布地に力がかからないほど、やわらかく仕上がるかと思うので、重力に反したトンプキンが一番柔らかく、次が吊り編み機でしょう。
アズマ・ジャンベルカは製造会社の名前の違いで、構造としては近しい丸編み機かと思われるため、編み機自体の製造年代やチューニングによって変わる可能性はありますが、そもそもの違いはそれほどないと考えました。
ただ、柔らかく力がかかっていないということは、逆に布地のムラや独特のヴィンテージ感があるかと思いますので、実際に見て購入するのが良さそうですね。
どれが国内では珍しいのか?(予想)
こちらも完全に予想ですが、珍しい順に並べてみました。
吊り編み機は数百台は現存することから、この中では一番台数が多いと思いました。(ありがたいことです!)
他の3つはどれも数台という表記で正確な数値はわからないのですが、一番古いトンプキン編み機が一番珍しいのではないでしょうか。
ただ、ジャンベルカは海外のメーカーのため、世界に目を向けると吊り編み機より多い可能性はあるかもしれません。
その他
丸編み機を製造する会社
福原精機製作所 / 日本
Tompkins / アメリカ
Mayer Cie / ドイツ
Terrot / ドイツ(1988年にMoratを買収)
ORIZIO / イタリア
Jumberca S.A. / スペイン
Santoni / 中国
Sintelli / 中国
Keum Yong / 韓国
編み機の歴史
編み機の歴史は針の発明に密接に関わってきます。
ヒゲ針の発明により、編み機が実現でき、ベラ針の発明によりより効率化可能なシンカー編み機が実現できるようになりました。
参考文献
https://www.ttsmile.co.jp/glossary/category/technique/knit/index.html
https://pfw.co.jp/about-circular-knitting-machines/
https://www.fiverules.jp/blog/archives/147
http://kanekichi-turi.com/web/tsurioutline/explanation/
https://www.the-beacon.jp/blog/2020/11/05/201521
https://folktale.jp/knittingmachine/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jte1955/40/2/40_2_39/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jte1955/28/4/28_4_107/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjtmsj1948/17/5/17_5_363/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/34/9/34_9_P294/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjtmsj1965a/22/10/22_10_P733/_pdf/-char/en
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/13/5/13_5_279/_pdf/-char/en
https://textilelearner.net/basic-knitting-action-of-a-needle/
https://www.academia.edu/32347533/KNITTING_TECHNOLOGY_A_comprehensive_handbook_and_practical_guide_Third_edition
メモ:編み機と針(未調査)
吊り編み機、トンプキン編み機:ひげ針
その他の丸編み機:べら針
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