TRIANGLE STRATEGYをプレイしました
はじめに
本記事はNintendo Switch向けのゲーム「TRIANGE STRATEGY」のストーリー全体の流れ、およびエンディングについてネタバレ全開の記事です。攻略に役に立つ情報は特にないですが(強いと思ったキャラなどのは掲載していますが)、ゲームに興味を持っていて未プレイの方であればぜひ攻略情報を見ずに挑戦いただいた方が楽しめると思います。実際、私も1周目はTRPG初挑戦でしたが、一切の攻略情報を見ずにプレイしましたので。。。
ストーリーについて
資源をめぐる三国の諍いで歪んだ世界
本作の舞台、内陸の大地「ノゼリア」は、大河を擁し交易に強い「グリンブルク王国」と、鉄を産出する雪国「エスフロスト公国」、そして人々の生活に欠かすことができない「塩」を唯一産出する砂漠の国「聖ハイサンド大教国」からなる。かつては交易の協定などがなく、互いに互いの国が持つ資源を奪い合うといった小競り合いが続いた結果、「塩鉄大戦」という全土を巻き込む戦争が勃発。戦乱が長引き互いに疲弊した結果、鉄と塩の交易をグリンブルク王国の商会が取り持つことにより停戦となり、ノゼリアは表面上平和な状態となったが、依然としてハイサンド大教国の塩の独占状態が続いていており、三国間のパワーバランスは塩に税を敷くハイサンド大教国側に傾いていた。
塩鉄大戦から30年後、グリンブルク王国領の御三家の一角「ウォルホート家」の領主シモンの息子セレノアが、エスフロスト公国の総帥グスタドルフの異母兄弟フレデリカと婚姻を結ぶところから始まる。婚姻を機に、前領主シモンから家督を継いだセレノア。かつての大戦で三国の停戦のきっかけとなり「英雄」と呼ばれたシモンと同様、彼も戦禍へ巻き込まれていく。
エスフロスト公国の目的は、グリンブルク王国領内に見つかった新たな鉄鉱脈の共同採掘において、まず王国の一臣下であるウォルホート家と公国総帥の親族をくっつけてコネクションを強化しつつ、ハイサンド大教国と隣接するウォルホート家を取り込むことでハイサンドの共同採掘への参加をはかるといったもの。
エスフロストの技術者ドラガンとハイサンド医法院のライラの緊張感あるやり取りからも、決して平坦ではなさそうな雰囲気はあるものの、新鉱山の所在地グリンブルク王国にて三国採掘式典と武闘大会が催され、盛況のうちに終了し、各国の代表は帰国の途につく。
採掘の進むノゼリア新鉱山で「何か」を発見したドラガンは、その「何か」をもってグスタドルフに対し公国内の宰相の地位を求めるが、グスタドルフの謀略によって襲撃にあい、居合わせたセレノア達に守護されエスフロストの軍勢を撃退したかに思われたが、結局暗殺されてしまう。ドラガン襲撃をグリンブルクの仕業と嘯いたグスタドルフにより、グリンブルク王都は制圧される。兄フラ二を殺され、父王レグナは処刑され、妹のコーデリアは人質となった第二王子ロランは、槍術の師匠マクスウェルの手引きもあり命からがらウォルホート家とともに脱出する。
グスタドルフが新鉱山とグリンブルク王国を掌握しようとした動機は何か?と考える暇もなく、セレノアたちには次々と脅威が押し寄せ、そのたびに決断に迫られることになる。
自らの「正義」を通す信念を
本作の特徴として、主人公セレノアに「信念」というパラメータが設定してあり、シナリオ中の会話、行動、選択などで「信念を高める」ことができる。そして、ストーリー中の大きな転換点で「信念の天秤」を使い、セレノアの除く主要キャラによる投票結果によりシナリオの分岐が決まる。
天秤の投票は、セレノアには投票権がなく、権利を持つほかのメンバーの意見を聞き、説得することで投票結果を変えることができる。とはいえ、持っている情報が不十分だったり、信念が足りなかったり、説得に足る選択をしないと説得できないケースもあり、必ずしも自分のたどりたいルートにできないところがこのゲームの面白いところでもある。
ゲームプレイについて
プレイ記録
一周目:難易度Normal ベネディクトルート 40時間程度
二周目:難易度Normal フレデリカルート 28時間程度
三周目:未踏シナリオのみNormal ロランルート 12時間程度
四周目:未踏シナリオのみNormal 真エンドルート 14時間程度
三周目以降は既プレイシナリオや稼ぎ作業でVeryEasyを使用。ノーデスクリア(不滅の髪飾り)もこの周回で達成。三周目で手持ち全キャラLv50かつほぼ最大強化、四周で全分岐および全員を仲間にして真エンド。装備品は護符およびステータス上昇系のアクセの最上位系は全部購入した。
戦闘ー何も考えないと袋たたきに
私はこのジャンルのゲームが初挑戦だったため、最初のバトルで「位置取り」と「行動順」が重要になると教えてくれているにも関わらず、適当に敵に近づいて囲まれてボコボコにされたり、弓兵の射程を全然わからずあっさり背後を取られたり、ベネディクトルート18章では騎馬兵のリーチが3マスあるのをわかっておらず固まってるところにまとめて攻撃されたりと割とがっつり負けてきた。
負けてもバトルで得た経験値はリセットされないし、アイテムも消費される前に戻るし、ストーリー外の各種想定バトルがあるおかげで稼ぎ行為も可能(ただし圧倒的に金が足りない)ので、初心者でも負けてゲーム覚えればええんやでというメッセージを感じ取り、とりあえず挑んで負けて編成を変える。といったプレイングで遅々として進めることができた。というか、普通に進めると戦闘の推奨レベルに満たないことが多いので、ある程度やり直しさせることを前提としてゲームを作っている?と思います。
上述の仕様もあり、戦闘に関しては特に不満はなく、楽しくゲームできたと思う。複数周回で難易度はNormalまでしかやってないけど、戦闘で心がけていたこととしては
戦闘の勝利条件/敗北条件を忘れない(特に防衛系は注意)
敵のステータス欄の技リストを見ておく(護符や耐性アクセの装備)
切札はもったいぶらずに使う(Normalなら奴次+武付の速攻戦術は効く)
相手からのターゲティングの線を確認して動く(弓兵のレンジに注意)
敵キャラの初動を見て位置取りを決める
孤立させすぎない(二手に分かれるやつも意外と集まってたほうがいい)
大ボスに行動させにくい状態をつくる、ボスのTPに気を付ける
ボスは集中砲火で一気に倒す
何もしないターンを減らす(次に大技を撃つキャラ以外はアイテムを使う)
くらいで難易度Normalならほぼ問題なく勝てるようになると思います。
一周目で強いと思ったキャラ
基本的に、どのキャラもそこまで役割がかぶっているということがなく、使いどころが必ずあると思う。ただ、使いやすさは結構キャラによって違ってきているので、個人的に「TRPGガチ初心者が使いやすかったキャラ」は
メディナ(薬師)
回復アイテム使用でTPを付与する「TP薬学」と、キャラそのものの移動の高さに加え「遠くまで回復アイテム」「ダブルアイテム」行動順調整の「即行薬」など、アビリティのシナジーもあり頭ひとつ抜けた性能をしている。金さえあれば勝てる。ナルヴ(魔法使い)
最上級クラスになったときの「遠くまでアビリティ」と旋風の魔法の組みあわせで集団戦でめちゃくちゃ便利。フリオのTP付与、ベネディクトの連続行動と組み合わせて殲滅キャラにできる。フリオ(参謀)
TP付与+バフを毎ターンノーコストで付与できるのが強い。エラドール(盾士)
タンク役としての高耐久と、TP4消費ながら周囲挑発+無敵になる「仁王の盾」がチート。集団で巻き込んでナルヴやフレデリカの魔法攻撃で倒すのが爽快
最終的に強いと思ったキャラ
一周目に強いなと思っていたキャラはそのままに、全員仲間にして強いと思ったキャラを挙げると
ムウ・ラ・フラガ/ネオ・ロアノーク/ゼクス・マーキスマクスウェル
デフォでリレイズ持ちはいかんでしょ。CV子安で仮面キャラとかもう彼ガンダムでしょ。冗談はさておき攻撃範囲が広いのでロランと組んで騎兵絶対倒すコンビにしていました。もちろん単騎でもつよつよキャラ。フレデリカ
1ターンチャージが必要な「堕ちる太陽」を撃つよりも、各種炎撃の魔法を撃ち敵を倒しTPを獲得して、メディナやユリオでTP供給して回すほうが使いやすいしなんだかんだ固定砲台として強かった。コーデリア
ヒーラーの中でも特に回復能力に特化している。リレイズ付与、加速や状態異常回復のジーナに比べればほぼHP回復オンリーだけど、その場に留まってTP回復があるおかげで狭いマップだと固定砲台化しやすくて楽だった。ヒーラー連れてくなら彼女一択。といった感じ。
個人的に面白くて好みだったキャラ
ピコレッタ
移動範囲が広い+デコイ投げができる+攻撃アイテムの範囲が広いといった器用さがあって地味に役に立つ+お遊びとしての「らーニング」が面白くて、グスタドルフとか教皇の技をラーニングして使うとかして笑わせてもらった。イェンス
罠を仕掛けるのに特化したキャラ。平地だとほぼ活躍どころはないけど、市街地や高低差のあるマップでノーコストでばねトラップを仕掛けられるのは強かった。グスタドルフを溶鉄地形でハメてHP300吹っ飛ばしたのは気持ちよかった(こなみ)
あまり強さがわからなかったキャラ
ホスハバラ
タンクヒーラーとしての役割があったものの、(ピンチで防御アップはあるが)物理防御がそこまで高くなくやはり自分を回復できないという欠点が痛い。あと大技がしょぼい。ルドルフ
罠で相手の攻撃を止められるのはいいのだけど、どうしても罠特化のイェンスと比較してしまうと、トラばさみTP2は消費が重いように思える。弓としても範囲攻撃はあるものの、高機動+足止め+暗闇+広射程のヒューエットや鈍足低移動重TP消費ながら万里矢で欠点を埋めるアーチボルトに比べるとちょっとしょぼいね。ザ・器用貧乏。ヤザントラヴィス
炎耐性ガチでアクセ含めると唯一炎無効にできるキャラ。だが壁キャラ以上の使いどころは?と言われるとやはりエラドールに軍配が。このゲーム盗むの価値が低いのであんまり活きないよね。エザナ
大技が1ターン溜め後マップ全体に雷撃というパッと見クソ強そうなアビリティだが、命中がとにかく低いので博打になりがち、それ以外のアビリティもナルヴの下位互換に成り下がってしまうのが残念。ジバンナ
アビリティがとにかく使いにくい。全キャラトップの移動とそこそこの耐久性能があるので孤立には強いが、、、
周回前提だが、周回にやさしくない
このゲーム、1データでルート分岐やすべてのエンディングを回収するためには最低4周する必要がある。二周目からは敵が強化されて序盤から高レベルの戦闘となり、まだ別の楽しみがあるのだが、三周目以降はLv50固定で、分岐が3つもしくは4つでないところは同じ戦闘を3回もやることになる。まあTRPG好きな人だと難易度上げて編成考えて…といったことをするのだろうけど、ストーリーの回収を優先するプレイヤーにこの仕様は優しくないと感じた。もちろん難易度Very Easyにすれば戦闘は何も考えなくともすぐにクリアできるのだが、それだったら最初からスキップさせてくれ。という気持ちだった。
ストーリー勢の要望としては
3周目以降に「チャプターセレクト機能」を追加してほしい
(RPGパートの取りこぼしの回収などができるように)既クリアの戦闘スキップ機能(ユニットの平均レベル>推奨レベルの場合)
各キャラの「挿話」の回収状況の表示および手記で見れるようにする
(バックログ形式でも良いので)
とかかな。おそらく制作側はあえてつけてないと思いますが(オクトラも各町の特定キャラ同士のやりとりは残されないので)
ただ、周回することで新たにわかることもあるので、そういったものを発見できたときはオッとなれる。
各エンディングに関する感想
本ゲームは15話で主要人物たちの今後の方向性を決める出来事が発生する。ひとつはセレノアの出生の秘密を知るベネディクトの野望、もうひとつは国を奪還し王位についたものの、王党派貴族の妨害もあったがそれ以上に民の支持も得られず為政者としての立場が形無しとなっていたロラン、そしてフレデリカがローゼル族に隠されていた女神教の存在を否定する事実と、母親がそのカギを握っていたことをそれぞれ知り、その後17話で各エンディングへの分岐となる重大な投票が始まる。ここで彼らはお互いの主張をぶつけ合い、ベネディクト、ロラン、フレデリカの意見はどれを採用してもそれを反対する人物が抜け、各エンディングへのルートが確定する。
ベネディクトルート
初回のプレイで選択したルート。エスフロスト公国と組みハイサンドを倒し、ノゼリア全土に塩の解放を行うこと。理由としてはほか二つに比べて(表面上)不当な理由で差別を受けないことと、武家の領主としての選択として最も妥当なものだと思ったからで、信念の天秤の説得も容易だった。少なくとも、ロランが提示したハイサンドに迎合する選択は、被差別身分(ローゼル族)をつくることで他の人々の平等をはかるといった悪い意味での現状維持。フレデリカの選択は家と領民を捨てて当てもない旅に出るといった現実的のなさから選ぶ意味がないと感じた。
ロランの言い訳としては、エスフロスト公国の掲げる「自由」が資本主義経済的な格差を広げる懸念がある、とは言うのだが、そもそも七聖人のような一部の実質的な特権層がいることもありなんの説得力もない。エスフロストに王族として追い出されたことで自分がかわいそうな目にあったことは同情の余地があるが、それを自分の力で何もできなくて、挙句セレノアに嫉妬して出奔するというごく個人的な感情と被害者ムーブを繰り出す。一人残されてグスタドルフと政略結婚させられて、国民のヘイトを買いながらも自らの立場から逃げずに生きてる妹コーデリアを見習えよマジで。。。
このエンディングで、被害者ムーブを続けさらにはハイサンドの歪みを作った張本人に付け込まれて終わるロランを心底軽蔑した。そのせいで2周目は迷いなくロランを公国に投げ飛ばす決断ができた。おまけに2周目開始時にレベルが上がってないせいでトリッシュにあっさり弓で倒されてつかえねーってなりました。
話をベネディクトに戻すと、レグナ王の子を身ごもりながら身分の差で妾にもなれず、グリンブルク王国では日の目を浴びることなく人生を終えたデストラへの想いを募らせて生きてきたベネディクト。彼はデストラの遺児セレノアをノゼリアの覇者にしてその想いを昇華しようとするという、歪んだ情念を明かした。自分でもそのおかしさに自覚はあるものの、他の二人の提案をバッサリとありえないと切り捨てるあたり、あのシーンでは相当利己的になっていたのであろう。ただ、その歪みに対してもセレノアは覚悟を決めて受け入れるといった器デカすぎんだろ…ムーブで最終的にグリンブルクの王になってくれるあたりが、ウォルホート家の絆の強さを感じた。
このルートの結末はハイサンドの「教皇」が魔法結晶エルフリックで動く魔法仕掛けの人形で、真の黒幕は司祭イドーであること、ハイサンドは降伏するも、イドーには逃げられてしまうこと。そして塩が開放されて産業の自由化が促進された一方、行き場を失ったローゼル族は定職を得られず盗み等をはたらくようになってしまうこと。セレノアはグリンブルク王になったがグスタドルフは健在であること。など、今後の不安定要素を抱えた終わり方になっているが、個人的にはベストではないがベターな気がする。続編とかにつなぎやすそうだし。
フレデリカルート
2周目のルート選択としては「ローゼル族に寄り添う」をテーマに、ロランはさっさと公国に突き出しながら、基本的にはローゼル族救済のシナリオをたどるようにした。フレデリカは被差別民族であり、公国前総帥の妾の子として同世代の直系の子にいじめられ、異母兄には政略結婚の駒として追い出されるという辛い境遇に耐え忍ぶ人生を歩んできたが、ウォルホート家との関わりや同族の実態、母の事実を知ることで、自らの使命がローゼル族の救済、そして自ら行動を起こすことを決心する。
このルートは、フレデリカが母オルレアからの伝承に従い、ハイサンドのローゼル族を解放しつつ彼らとはるか南の海「セントラリア」に向かうこと。三国の争いからは離脱し、新天地で自分たちだけの世界を作る選択。
これは個人的な感覚だが、ターニングポイントの信念の天秤でフレデリカルートに決定した後にセレノアがいきなりフレデリカに洗脳されたんか?ってくらい俺は争いに疲れた。これからはローゼル族とセントラリアだって言い始めてちょっと唐突さが拭えなかった。あとロランなんでついてくるん?玉座にふさわしくない云々とか言ってついてくることになるんだけど、あんたそれ妹を国においてそんなことようぬけぬけと言い張りまんなあ。という感想しかなかった。
このルートでは、魔法結晶エルフリックが兵器ではなく永遠の生命を得るための研究だということ、その結晶はローゼル族の死人から作られること。現在の女神教はイドーが打ち立てたものだということが判明する。
セレノア達が去ったあとのノゼリアはハイサンドでは宗派間戦争が勃発、エスフロストではグスタドルフとスヴァローグの内乱がはじまり、その後はノゼリア各地の岩塩をめぐる乱世の時代になる。また、ウォルホート家を託されたベネディクトはエスフロストに亡命し、グスタドルフに仕官する。この戦いでセレノアはエルフリックを取り込んだイドーと相打ちとなり命を失うが、結果的にフレデリカたちはセントラリア(海)にたどり着くことになり、少なくともフレデリカたちは平穏な生活を送ることができている。ということで、意外なことにこのルートはセレノアの選択が一番ベターとなってしまっていた。
終わり方としては、フレデリカたちが大勝利すぎてセレノアの犠牲くらいいれとかないとバランス取れないんじゃないかって感じで、どうしてもセレノアの犠牲がとってつけた感じがあるなあってくらいの感想です。セントラリアへの道中はどうだったんですかね。最後の一枚絵の槍から釣り竿に持ち替えたロランが地味にウケましたがほかの仲間はどうなったんでしょ。たぶん無事だと思うが。
ロランルート
三周目は残りのロランルート。このルートのテーマとしてとにかくエスフロストとのかかわりを増やし、またローゼル族にやさしくしない。という方針で進めた。
グリンブルク王になったロランがすべての地位と財産を女神教に喜捨することで、ハイサンド大教国によるノゼリア統一を目指す。ローゼル族への迫害に心を痛めていたロランがローゼル族の犠牲に目をつぶりハイサンドに下る選択をしたのかってひっかかるところはあるんだけど、結局のところ家族の仇であるエスフロストを打倒することが優ったということだろう。ロランはとにかくエスフロストの掲げる自由=弱肉強食がいやで、女神教下のローゼル族のように反抗の意思さえ奪われた被差別層であれば弱者の存在は最大多数の幸福の前には封殺できてしまうスタンスなのだろう。おお怖い。
喜捨によりハイサンド七聖人を叙されたロランはさっそくウォルホート家とロランおよびハイサンドの将軍エグスアムとエスフロスト公国直轄領の攻略を始める。いやグスタドルフがラスボスの前座かよってなったし、最後はエスフロストの将来を担うはずだった(自身の息子を含む)若者たちがみんな死んで絶望したスヴァローグおじさんが製鉄所をドッカンして街を溶鉄まみれにしてしまうしで、結局自滅するというなんとも悲しい終わり方。そして戦いが終わったあとのエグスアムがエスフロストにあったノゼリアの叡智の詰まった「大書院」の焚書をするようにイドーに指示されていることが判明し、終わり方としては個人的には最悪だと思った。大書院にあこがれてエスフロストに下ったジーラや熱心に地理を研究していたジバンナが浮かばれない。
ロランが結局ローゼル族をいちばん虐げる立場になってるのに業を感じるし、尼僧となり新興宗教「セントラリア教」の教祖となったフレデリカはできればドット絵で見たかったな。
真エンド
満を持して4周目で誰も失わない真エンドルートへ。このルートでは、ウォルホートの町の火計を使わずにこの局面を迎えること、塩の密輸に加担した際に、双塔の門でロランの正体を明かしスヴァローグに対しエスフロスト打倒の大義名分を見せ信頼を勝ち得ること、そしてセレノアが父シモンの今わの際に立ち会い、自身の出生の秘密をシモンから直接聞くことが条件となっている。セレノアの説得により、他の3ルートでは決して意見を曲げることがなかったベネディクト、ロラン、フレデリカが「ごめん私がおかしかった」と自らの正義だけを押し通したかったことを認め、全員で協力することを誓う。
ウォルホート家を守りたいベネディクト、ローゼル族を解放したいフレデリカ、ノゼリアの民の平等を願うロランの全員の信念を汲み取ったセレノアは、部隊を三つに分けて同時進行で対ハイサンドの防衛線、エスフロストでの大鐘砲の手配、ハイサンドのローゼル族の解放をすることとなる。
エグスアム撃退戦や、フレデリカルートと戦闘内容も大差がないが、印象的だったのが双塔の門でのグスタドルフ戦だ。この戦闘の直前にスヴァローグはグスタドルフに塩の密輸を暴露され宰相の権限を奪われ牢に閉じ込められてしまうのだが、ロラン一行が到着した声を聴いて速攻で脱獄をする(というかできるくらいのガバ警備)に加え、自らの悪行が白日のもとにさらされ窮地に追い詰められたグスタドルフが、忠臣のシクレスからその行為の説明を求められた際に「うるさい!私のいうことを聞かんやつは全員私の自由を奪ってるから重罪!!(意訳)」とあっさり目の前で斬り殺すというスーパー小物っぷりを見せる。今までなんだかんだ悪いやつながらカリスマ性や奸知術数に長けているキャラを見せていたのに、最後は虚勢を張り恐怖で部隊を使役しあっさりと散るという末路。まあ本作の戦乱の張本人だから残念ながら当然の最期とも言えるので仕方ないでしょう。できればもうちょい戦闘でも孤立させてほしかった。
ハイサンド攻略戦の最後に待ち構えるのが黒幕である司祭イドー。ここでは他のルートでは知りえなかったイドーの思惑や女神教の成り立ちといったものが明かされることになる。30年前の塩鉄大戦のさなかに前教皇が崩御し、戦乱中にも関わらず七聖人どうしで次の教皇の座を醜くも争うという事態を嘆き、イドーは「人間」ではないものを教皇に置き、魔法結晶エルフリックで動く人形を不滅のシンボルとして教皇に据え付け、自らはその教皇の言葉を下賜するという立場をもって、実質的にイドー自身が権力を握るという体制を敷いていた。私心がない統治だからこそハイサンドが安定し、「民は絶対的に支配されることを望む」と言うイドーだが、蓋を開けてみたらイドー自身がエルフリックを吸収し女神や教皇と同格の存在になろうとしてたのでまあ欺瞞ですよね。
イドーを倒したことで女神教は消え、ノゼリアはグリンブルク王国のみが残ったことになる。エンディングでは、ロランが岩塩を含む塩の全土解放と、各地方の自治を任命することになり、スヴァローグがエスフロストを、ライラがハイサンドの自治領主となり、セレノアはウォルホートおよびローゼルの村を含む自治領の領主となる、いわゆる大団円エンディングを迎える。
真エンドまで終えて思うことは、塩鉄でノゼリアが荒れてきたというが、実際のところは人間の生命にかかわる塩のほうがどうしてもウエイトが重く、最終的に目指すのは「塩の開放」なので、塩鉄大戦というよりは塩大戦じゃね?と思っているほどに、鉄が果たす役割が少ないように思えた。ハイサンド側の軍の鉄分がエスフロストよりは少ない。と言えどもそんなに大差がないように思ったので(剣兵と鷹兵がエスフロスト特有、短剣兵と騎馬兵はハイサンド特有)、そこの個性付けはもう少しなんとかならなかたのかな。と思ったりはしている。とはいえ、前3つのエンディングを見た後に真エンディングを見たら、すっきりと終わっていて良かったな~という気持ちになれた。
余談
現実の世界史で考えると、塩というのは食料の保存にはなくてはならないものであり、そのために過去の為政者は岩塩鉱床を確保したり、重い塩税を課したりしていたので、本作はそういったところからアイデアを得ていると考える。ノゼリアでは塩の貴重さから塩の利用法が十分に発達しておらず、食物の保存とかはできることは知られているものの、流通量が十分でないことから大量生産できず、したがって長距離の移動ができない(従って、ノゼリアが内陸のごく小さな地域に過ぎない)ことが示されている。そうなったとしたら、ノゼリアの人々の食生活はどうだったんだろうとぼんやりと考える。たとえば現実の世界において「辛い食べ物」で有名な場所(たとえば中国内陸部や朝鮮半島)がどうしてそうなったかと言えば、岩塩が乏しく、海があったとしても海水から塩を析出させるための燃料に乏しかったりするから、結果的に辛い食べ物が発達したようだ。となると、ノゼリアでの食生活は、主食は穀物で、塩が十分に得られるハイサンド以外では、肉類は香辛料で味付けしてにおいをごまかして食べていたのだろうか。とか考えるとちょっと世界史をおさらいしてみたくなりました。