KHDRの話(キングダム ハーツ ユニオン クロス ダーク ロード)
ゼアノートの過去編の終わり
2021年6月17日にサービスを終了した「キングダム ハーツ ユニオン クロス」のゼアノートの過去編「ダーク ロード」の全シナリオが、数度の延期を経て本日配信となった。先ずは作品をとりあえずは書ききってくれてありがたく思っています。
久々にプレイする前に
ちゃんと放置プレイゲームパートがあった!!
以前から「どうせムービーだけでしょ」と高をくくっていたら、メニュー画面の右にちゃんとクエストNo.が表示されていた。とはいえ、このゲームは放置ゲームなので、レベルとステータスとカードと防具をちゃんとそろえておけば、何もせずとも勝手に勝利が訪れる。一応サ終までに当時の上限のLv.60に達しており、いくらかBPもスタックできていたので、ショップで全カードの重なりレベル10まで上げて、残りはゼアノートのレベルアップに投入。どうも上限はLv99まであるようだが、サ終前までにある程度エネミーを1000体討伐していたら、おそらくLv50台でも最後まで放置でクリア可能なゲームになっている。
今回の新規配信範囲は、Episode4から5章分、クエストNo.105までとなっている。サ終前のEpisode3まででクリアしたところまでの内容はシアターに収録されているが、シアターはあくまでもムービーパートのみで、KHDRに多用されている紙芝居パート(静止絵+セリフ)は収録されていないことに気を付けよう。また、今回新規収録されたエピソードについては、ゼアノートのボイスは収録されていない。奥田さんのセクシーボイスに期待していた人は残念なことだが、大人の都合ということで割り切らないといけない。
キャラクターの整理
尺の都合上、登場人物に対し話が短いこともあり、各キャラクター。特に上級クラスの人たちの名前を覚えるのも難しいレベル。なお、KHDRオリジナルの登場人物は北欧神話の名前に由来している。先ずはゼアノートたち同期組の紹介をしていこう。
ゼアノート
今作の主人公。「なぜ彼は闇の探究者となったのか」をテーマに、彼がスカラ・アド・カエルムでキーブレードマスターとなり、その後エラクゥスと袂を分かつときまでを描く。KHUXの最後で彼はデスティニーアイランド出身ではなく、スカラ・アド・カエルムの出身であることが判明し、また、人の心を過敏に感じ取ることができる能力も持っていることが新しく設定されている。
エラクゥス
スカラ・アド・カエルム出身。初代キーブレードマスターからの血脈を持つ。若かりし頃の彼はBbSのころとは違い、明るく、気さくで、茶目っ気のあるどこか抜けたキャラだった。ソラみたいに手を頭の後ろに組むのがクセ。この頃はBbSのときほど光絶対主義ではないが、マスターへの動機を見ても闇を倒すことには人一倍使命感を持っていることが当時のやりとりからわかる。
ヘルモーズ(Hermod)
同級生ズのリーダー枠。みんな集まるとだいたい師ウォーデンへの報告役を務めている。といってもキャラが薄いのであんまり目立たない。鎧は緑色。マスターへの動機は「ひっくるめれば秩序を重んじる」こと。
冥界から飛ばされた闇の回廊で、闇に襲撃され消滅。
ウルド(Urd)
かわいい。礼儀正しく、任務遂行を大事にしているしっかり者キャラ。窮地に追い込まれても決して諦めない姿勢から、上級クラス生にも強い光の持ち主と認識される。鎧は水色。マスターへの動機は「世界を知りたい」
ヘルモーズと同様、闇の回廊で闇に襲撃され消滅。
ブラギ(Bragi)
ひょうひょうとしたキャラ。鋭い目と高い分析能力を持ち、ツッコミ役もこなす。鎧はオレンジ色。マスターへの動機は「正義を貫ける力が欲しい」
名前がどう見てもだれかさんのアナグラムだってハナシ。オリンポスコロシアム冥界で行方不明となる。
ヴェル(Vor)
みんなのかわいいマスコットキャラ枠。鎧はピンク色。マスターへの動機は「秘密」
皆と一緒にいることでマスターになることへの信念が揺らいでいることを感じ、Chapter4以降に自分の心のうちを明かし、誘いに乗り上級クラスへと合流する。
バルドル(Baldr)
Chapter3まで「別の任務中」として隠されていたキャラで本作の物語のキーパーソン。白髪。姉ヘズが上級クラスにいる。鎧は着ていない。マスターへの動機は「大切なものを守りたい」オリンポスコロシアム冥界で行方不明となるが…?
次は先生と上級生について整理しよう。なお、上級クラスの人たちの登場曲は「The Foretellers」が充てられている。
マスター・ウォーデン(Odin)
エラクゥスたちの師。キングダムハーツの出現は禁忌であることや、始祖の闇について知っていること、またルシュのキーブレードを継承していることから、この代における正統継承者のマスターであることがわかる(マスターキーパーについては不明)。そのため、キングダムハーツやUX時代にあった光と闇の戦いに対してある程度の知識を持っていることがわかる。
闇の見極めをしろとか、「闇の探究者」というワードを口にするなど、何か使命があるようにも思える。
ヴィーザル(Vidar)
ドワーフ・ウッドランドの真実の鏡を前に、ゼアノートの仲間ヴェルをスカウトした肌の黒い上級生。マスター・ウォーデンとのやり取りや仲間たちの扱いから見るに、彼が上級生のリーダー格であったのだろう。ちなみに攻撃モーションはランページ系。
ヴィーザルはウォーデンから13の"始祖の闇"が真の闇で、いま世界にある多くの闇の根源であること、7つの闇はロストマスターが、4つは別世界(データ世界)の狭間に閉じ込められ、2個が行方不明であることを教えてもらっている。
闇の調査のために旅立ち、仲間4人を立て続けに失った彼は、闇を倒すためにいかなる犠牲をいとわない姿勢を見せる。彼はその後師ウォーデンが禁じた「世界の秩序」を乱し、各世界の「秩序の要」を奪い世界の秩序を揺るがされた中でもなお輝く真の光を求めている。彼の中で「欠落した光」は一緒に旅に出た6人の仲間のうち犠牲になった4人であり、光を7つ集め「世界の浄化」のためにキングダムハーツの召喚を企てていた。
ヴォルヴァ(Vala)
ビーストキャッスルで「世界の秩序」たるビーストのバラを奪い、ウルドの窮地を救った「私の眼鏡に狂いはない(メガネクイー」のお姉さん。ヴィーザルの案に賛同し、強い光の心を持つウルドを自らの勢力に入れようとした。使う技がホーリーなのでバトルのときはいちいち派手。
ヴァーリ(Vali)
ニンニン!みたいな寡黙なキャラ。ビーストキャッスルでヴォルヴァと行動を共にし、ヴィーザルの賛同者でもある。作中で吹き出し付きのセリフはない。FF零式のクラサメみたいな見た目ですね。ちなみに忍者っぽい技するのかなって思ったけど攻撃モーションはザンテツケン系でした。
ヘズ(Hoder)
バルドルのお姉ちゃん。今作のキーパーソンのうちの一人、エンチャンテッド・ドミニオンでマレフィセントドラゴンから弟をかばい、その後消滅した。他者に心を宿す術を会得していたので、上級クラスの中でもわりとキーブレードマスターに近い存在だったのではないだろうか。弟の庇い方がちょっとキーブレード使いっぽくねえなって思ったのは秘密。
ヘイムダル(Heimdallr)
銀髪の兄ちゃん。エンチャンテッド・ドミニオンでマレフィセントドラゴンと交戦中に闇によって消滅。世界を巡る旅で光と闇ってそんなシンプルな話じゃないよねって気づきがあり、それをゼアノートやエラクゥスに伝え、彼らの未来の決断に期待を寄せる。
ヘルギ(Helgi)
金髪のおにいちゃん。エンチャンテッド・ドミニオンでマレフィセントドラゴンと交戦中に闇によって消滅。正義感のある武闘派キャラ。自分色に染め上げたいタイプなのかな?
シグルーン(Sigrún)
サイドワンレンお姉ちゃん。着物アバターで明らかに上級生7人の中でデザインが浮いているけどその割にはキャラが薄い。エンチャンテッド・ドミニオンでマレフィセントドラゴンと交戦中に闇によって消滅。
ダークロードでわかったこと
公式Q&A
この記事を一生懸命書いてたら、野村Dによる解説が出てしまった。以下のものは公式Q&Aと被る内容も多いが、いったん書いてしまったものは仕方ないので、そのままにしておきます。
「闇の回廊」について
今までのKH世界において闇の回廊は「生身で通ることが危険」程度の軽い説明で、それに対抗するには、鎧か黒コートの二通りしかないという情報しかなかったが、今作で闇の回廊の成り立ちについての詳細な説明があった。
ゼアノートは、他者の心をいくら受け止めようが、自らの心がどんな感情よりも強くあればいいと言い、また心を閉ざした状態のヴェントゥスにはあらゆる感情に対し心を動かされることがないため生身でも問題ないとのこと。
対抗策としては鎧および黒コートがあるのだが、マスター・オブ・マスター曰く、オリジナルが黒コートでそのうち戦闘力を上げるチューンアップとして鎧が生まれたようだ。黒コートは防御力に優れているが、鎧は闇の回廊の影響をずっと防げるわけではなく、渦巻く感情の襲来により傷つき壊れるといった性質がある。作中でもウルドとヘルモーズは闇の回廊で鎧が破壊され、闇にとどめを刺されることになってしまった。
How to find Ventus
ヴェントゥスがユニオンクロス時代の人間だということは皆さんご存じだろうが、ゼアノートはどうやってヴェントゥスと出会ったのか?答えは簡単!ドワーフ・ウッドランドの真実の鏡に聞いてみた!
真実の鏡によって、ゼアノートのいる時代にユニオンクロス時代のキーブレード使いのうち「数名の存在」を感じることができ、そのうち「大きな光と闇を宿す少年」がキーブレード墓場にいることを教えてくれる。それを聞いたゼアノートウッキウキでちょっとワロタ。
ハゲじゃないもん!
鏡はゼアノートとの64年ぶりの再会の際に「以前とずいぶん変わられたようですが」「頭を丸められたのですね」と婉曲にハゲを指摘していたが、ゼアノートは「ああ、決別の為に」と、俺はハゲじゃなくて自分の意思でこの頭になったと主張している。剃ってたんや。。。
ハデスの能力
今作において、オリンポスコロシアム「冥界」の死者は基本的にその世界の死者しかいないとハデスは主張しているが、他の世界(エンチャンテッド・ドミニオン)で亡くなった4人の上級生を冥界の底に呼び出すことができている。4人の上級生は「空と海が果てしなくつづく世界で、心だけの存在になっていた」と言っており、「終わりの世界」に居ることがわかる。すなわち、ハデスはフェアリーゴッドマザーと同様に「終わりの世界」への干渉(アクセス?)が可能な存在であることがわかった。KH4のトレーラーでもおそらく冥界に居るであろうドナグーと遭遇してたし、今後も鍵となる登場人物(神)になりそう。
ヴァニタス
KHUXのプレイヤーであれば、ヴェントゥスが「闇」の器とされてストレリチアを消滅させ、最後はその闇と相討ちのような形となって、その後箱舟で未来へ飛んだことはご存知であろう。
また、KH3の墓場のヴァニタス戦後にヴァニタスはヴェントゥスに向けて「俺とお前はもともと違う存在」であることを伝えたため、ヴァニタスはヴェントゥスの心の闇から生まれたのではなく、彼を心を器にした闇のひとつであることがわかっている。
ゼアノートは始祖の闇のうち1つは現代世界に存在していると推定しており、それを純粋な闇であるヴァニタスに問う。ヴァニタスは知らないと突っぱねるが、ゼアノートは闇はもともと集であることから、その思考が繋がっており、他の闇の所在もわかるのではないかと指摘している。個となったヴァニタスもかつては集だったのだからというりくつだそうだ。
ヴァニタスがその始祖の闇に繋がる存在であれば、そこまでして存在を隠す理由は何か。それをゼアノートは光に対する恐れであると指摘する。ヴァニタスはゼアノートのヴェントゥスに対する考察を見て「何かに気付いているのか」と警戒する。そりゃ彼は人の過去の記憶を読み取ってるのと変わらないからね…。
キングダムハーツに関する理解
光側、マスター・ウォーデンがヴィーザルに話したキングダムハーツの鍵は、「混沌の闇の中でなお輝く、言わば真の光を7つ集めること」でキングダムハーツが開放されると推定している。そして、キングダムハーツ開放後の世界はどうなるのかもわからず、闇を滅ぼす一手になるとも限らないと考えている。
また、バルドルの7日間闇堕ちブートキャンプで、闇側もキングダムハーツの開放を企てていることがわかり、闇側の集合知では「13の光を闇に堕とす必要があった」という認識でいる。そして、キングダムハーツで浄化された世界は闇から始まると考えられているため、自分たちにとって好都合だと捉えていたようだ。
キーブレード戦争以後、光と闇の両サイドともに「真の」キングダムハーツの開放方法については正しく伝わっておらず、KHDR中では頭数を用意することさえできず未遂で終わってしまったが、この描写のおかげ(?)で、闇をも探究したゼアノートのみが「真のキングダムハーツの開放方法」を知ることができたということが説明できているように思える。
マスター・オブ・マスターとゼアノート
KH3ReMindで若き頃の銀目ゼアノートとマスター・オブ・マスター(MoM)との会話シーンがあり、それはKHDRでも収録されていたが、今回はそれに追加して彼らがどのようにして出会ったかが追加された。
闇の回廊で鎧をパージし耐えられず倒れたゼアノートのもとに、「君が特異点か……」と黒ローブの男が近寄って来る。MoMは闇の回廊を「優雅に散歩」していたらゼアノートを見つけ、荒野へと連れていく。そこで彼はゼアノートのキーブレードを手玉に取りつつ、闇を払う衣(黒コート)を支給。その見返りとして、人の心を見てきてほしいと依頼する。
そしてこの出会いが、エラクゥスとの決別のトリガーとなっていく。
スカラ・アド・カエルムとその後
ゼアノートが「キーブレード使いの都」という割にはあんまりキーブレード使いがいる感じがないのだが、闇ドル(闇に飲まれたバルドル)が襲撃に来た際に「他のマスター」や「下級生クラス」が存在していることが描かれている。
上級生の失踪事件の終結から1か月後、ゼアノートたちの師であるマスター・ウォーデンは、彼とエラクゥスのマスター承認試験を見届けたのち、スカラ・アド・カエルムを閉じ、「もっとこじんまりとした世界」に居を移すことを考えている。とのこと。そのため、スカラ・アド・カエルムはこの時点で無人となり、KH3でゼアノートが(キーブレード墓場からポータルとして飛ばされ)再び訪れるまでそのままになっていたことがわかった。
明確な描写はないが、もっとこじんまりとしたした世界はKHBbSの「旅立ちの地」なのか、それとも別の世界なのか。答えはない。
ってハナシ
サ終以前から、名前およびその飄々とした態度から「お前絶対ブライグ(シグバール)だろ」と言われ続けてきたブラギ(Bragi)君はやっぱりそうだった。彼は闇ドルを前にしても戦闘で圧倒し、ひょうひょうとした態度を崩さず、「俺はおまえらガキと違ってかな~り強い」と言い放ち姿をくらます。
”選ばれし者”ではなかったと言いつつも、ゼアノートはかなり見込みありということで、時が経ったころにゼアノートにとって死んだ扱いされている「Bragi」から「Braig」へ器を乗り換えて近づいたのだろう。たぶん。
でも結果的にルシュはゼアノートを"選ばれし者"として扱っているし、ロストマスターもそのおかげで戻ってこれたけどね。
「運命の子」の伝承とゼアノート
「運命の子」とは、世界を闇から救う特別な子のことを指す。
おそらく「運命の子」であると信じられたゼアノートは老人により「闇から身を隠す為に」母親から引きはがされ、デスティニーアイランドにかくまわれていた。ゼアノートは人の心を過敏に感じ取ることができ、老人を通じて「銀色のクルクルした髪の子(エフェメラ)」「帽子をかぶった全身真っ黒の子(ブレイン)」「ピンクの髪のスラっとした子(ラーリアム)」「金髪の大人しそうな子(ヴェントゥス?)」「母さんに似た黒髪の子(スクルド)」そして「マスター(老人)に似てる気がする」ひと。それを聞いたマスターは「運命の子で間違いはない……」と確信する。
ゼアノートが「闇に打ち克つ」レベルにまで成長し、役目を終えた老人は、エフェメラの血脈を継ぐ彼こそが「光の君主」となると信じ2度目の人生を終える。
「ユニオン クロス」のプレイヤーは闇との戦いで存在が消えたのち、ドリームイーターになることを拒み、新しい心へと溶けていった。UXのエンディングではゼアノートの心に溶けていったかのように思えたが、それがディレクターのいう「ミスリード」で、本当はゼアノートを抱く「老人」こそが二度目の人生を歩む「プレイヤー」自身であった。ゼアノートが見た夢は、老人の心に残る思い出をどっかの「普通の少年」を超える感受性で読み取っていたのだ。いやいや。
ゼアノートの高祖父が偉大なキーブレード使いで、それがプレイヤーの「親友」エフェメラであることが判明する。なんでデフォルトのアバターなんだよクッソ野郎そこはUX側のアバターを反映するのが筋ってもんだろあぁん!???ってなりました。なんかこれ修正入るっぽいですね。
私の思うゼアノート像
今作のシナリオのキーとなる「どうしてゼアノートが闇の探究者となったか」といった動機付けについて、ふたつの光と闇の組みあわせをもって説明したかったように思える。
ひとつはヘズとバルドル。もうひとつはエラクゥスとゼアノートだ。
ゼアノートにしろ、バルドルにしろ、他人の感情を感じやすく、悪意に影響されやすいが故に、光に傾倒するひとたちの傍にいることで自らの心の闇が育ちやすい状態になっていた。
バルドルは闇を恐れるがあまり、光に縋ることで自我を保とうとしたが、光の近くにいることでより闇が強大になり姉という光に手をかけるに至ってしまった。それがバルドルの失敗でもあった。また、姉は姉で光に傾倒していたが故に、ゼアノートに心を移してまで闇に支配された弟を自らの手で始末し闇を葬ろうとした。
それを目の当たりにしたゼアノートは、バルドルのように光に縋ることなく、そして闇に自我を預けることもない「持つ者」になろうとしたのだろう。その際に、エラクゥスのような光に傾倒する者は彼にとっては心の闇を増幅させる近くに居てはならない存在であり、それが決別につながったのだろう。
しかし、ゼアノートは生まれ育ったときから「運命の子」と言われ、強い心と卓越した戦闘力を見せていたこと。伝承の存在でしかないロストマスターのひとりに「強い君は世界をどうしたいんだい?」とか直接言われちゃったら、10代の少年は全能感に溢れるに決まっている。そりゃあ全部自分でやろうとするわ。
ゼアノートにとって、すべての人間は弱者であり、心に闇を宿すことは当然のことである。消滅した上級クラスの人たちもゼアノートも、本来は心を光と闇の二元論に持っていくこと自体があるべき姿ではなく、共存の道を歩むべきだと考えていた。ただし、ゼアノートはその共存を自分の力でコントロールができると信じており、今の世界はあまりにも強大な闇に包まれていることから、世界をいったんキングダムハーツの開放により浄化し、その先の世界で、まだ小さな「闇」から始めようと思ったのだろう。
KH3まで、ゼアノートはただただ自らの知的好奇心を満たすために世界をリセットしてその先の世界を統べたいという、悪役マッドサイエンティスト的な側面を感じていたが(レイディアントガーデンで心の研究をしているからそのイメージがついていたのだが)、実際のところは、人の心の弱さや複雑さを理解し、光しか認めない世界を打破し新たな価値観の世界を創造したい。と考えていたのだろう。ただ、ゼアノートはどうせ世界をリセットするから今の世界はどうなってもいいと思って世界をめちゃくちゃにしていることは今を生きるKH世界の人たちにとっては許されざる行動であることは間違いない。
また、ゼアノートは強者は自分一人だけで良く、弱者を「生かしてやってる」という立場にいたせいで、すべてを自分の器たち(レプリカ)で目的を遂行しようとしてしまった。ゆえに、器だと思ったものたちに反旗を翻されても気づきようがなかった。全能感からくる自分勝手さと傲りこそが、ゼアノートの大きな欠点であったと思う。持ち上げた周囲の大人(?)たちはちょっと反省してほしい。
上記のようなゼアノート像をイメージすると、彼はどうしてアクアやエラクゥスやカイリに打倒されたのではなく、「普通の少年」ソラに倒されたのかが少し理解できた気がした。特定の思想に傾倒せず、人の心の喜びや悲しみをうけとめ、それを否定することなく共感できる「普通の少年」こそが、この世界に必要な存在であることを示したのだろう。いなくなっちゃったけど。
キングダムハーツの多くのディズニーの世界は、勧善懲悪の価値観である。強大なヴィランに勇気を持って立ち向かうことが是とされ、悪は滅びる。ただ、それが本当に正しいことなのか?例えば数年前に出た実写版のマレフィセントは、どちらかと言えば討伐に来る人間側の醜悪さがフォーカスされていたし、最近の作品は明確な悪役がいて、それを打倒するというストーリーも少なくなってきている。
KH4以降では虚構の世界という名のリアルワールドを舞台にすることがわかっているが、今後採用される作品やテーマといったものはどうなるか、楽しみにしたいと思う。
まずは「Missing-Link」で野村Dの言う内容がわかるようになればいいかと。あと、尺の都合で掘り下げられなかったDRの北欧神話キャラたちのストーリー、金巻ともこ先生。お待ちしております。
余談
ゼアノートがデスティニーアイランドから回廊を通ってスカラ・アド・カエルムに向かう際のモノローグで、少なくとも闇は感情があるからまだ心を感じることができるけど、闇より異質で底知れぬ恐怖である「虚無」を知るのはまだ先のことだったと書いてあるのだが、これって結局なんだったんですかね?