バスケのデータ分析オンライン講座第5回 ~ホットハンドと分析の心構え~
こんにちは。
アメリカのバスケのデータ分析オンライン講座について、前回は第4回の講義のまとめを行いました。
今回は第5回の内容の振り返りや感想を記載していこうと思います。
内容としては、ホットハンドの研究の紹介と、分析を行う際の心構えの話になります。
※研究の論文のリンクはこちら(PDF注意)
人の認識の仕方
人の脳はストーリーを伝えたり掘り下げたりするのが得意
一方で、それが影響して人の脳は情報を評価する時に誤った認識をすることもある。その中でも特に目立つ誤認識の一つが確証バイアス
自分がある意見を持っている時に、それに合致する情報を集めてしまい、逆に反証する情報は無視してしまうバイアス
研究や分析をする際や、それらを評価するときは確証バイアスについて心に留めておく必要がある
今回の講義でも、ホットハンドに関する研究を紹介するので、それを聞いたあとで自分がホットハンドを信じるかを考えておいてほしい
ホットハンドの研究Part1
人々はホットハンドを信じているかを調査した
調査したところ、選手やファンなど全員が信じていた
ホットハンドの研究Part2
それぞれのシュートを独立したものと捉えると、何回か繰り返せば連続して決めたり外したりすることは起こりうる
(例えば3Qのみで13本のシュートを決めて37点を叩き出したクレイ・トンプソンのケースでも、可能性としてはたまたま13本連続で成功したとも考えられる)しかし、人の脳は完全なランダム性をランダムと捉えることが難しく、そこに何かしらのストーリーを見出してしまう
そこで、NBAの試合でのシュートを分析して、ホットハンドがあるかを検証してみる
考え方としては、シュートの成功率が、そのシュートを打つまでに成功していればいるほど高くなったらホットハンドがあるとする考え
数式的には$${P(シュート成功|前のシュート成功) > P(シュート成功)}$$になること
76ersの選手を対象に集計したところ、下記画像のような結果になり、ほぼすべての選手で有意差はなく、有意差がある選手の場合も、成功するほどその次の成功率が下がるという結果になった
問題点として、シュートの成功率に影響する様々な要素が考慮しきれていない点がある
前のシュートからの経過ポゼッション数や経過時間
DFのチェックを受けているか否か
ホットハンドがあるというのはみんなが信じているので、継続して成功している選手へのチェックが厳しくなると考えられる
シュート時のゴールからの距離
疲労やプレイ時間
誰がDFしているか
試合の残り時間
etc
この結果自体はホットハンドの存在を証明しないが、一方でホットハンドに影響しうる要素で未考慮のものも多々あるため、それらを解決するアプローチを取りたい
ホットハンドの研究Part3
未考慮の要素の影響を減らすために、FTでホットハンドが起きているかを検討する
2本のFTが与えられたケースを対象に、2本目の成功率を、1本目に成功したか否かでそれぞれ出してみる
数式的には$${P(H_2|M_1)とP(H_2|H_1)}$$の確率を比較(Hは成功、Mは失敗、添字はi本目のシュートを表す)
結果は下記画像となり、どの選手に関しても有意差はなかった
この分析の問題点として、下記が挙げられた
2連続のシュートしか対象になっていない
(ホットハンドはもっと連続したシュートの成功と考えたい)FTが静的なアクションで、試合の流れなどを考慮できていない
ホットハンドの研究Part4
バスケの試合は様々な要素が入り混じっていて分析時のコントロールが難しいため、実験で検証を行う
コーネル大学の選手を対象に1選手あたり100本のシュートを打ってもらい、その結果をPart2と同様の形式にまとめた
結果は下記画像となり、MaleのNo9の選手以外はすべて有意差がない結果となった
(26選手で試して1人が有意差出るのは可能性としては考えられる)
まとめ
ここまでの結果を踏まえた上で、それでもホットハンドは存在すると信じるのは自由
ただ意識してほしいのは、自分はどういうエビデンスがあったらホットハンドは存在しないと認めるのか、どのような研究や分析があったら自分は意見を変えるのかということ
そういった意識がなければ、我々はただおとぎ話を信じていることになる
第5回の講義内容のまとめは以上になります。
バスケの分析というよりは、分析に関する心構えの要素が強かった回でしたね。
第6回の講義内容はこちらです
この講義に関する記事は下記マガジンでもまとめているのでぜひご覧ください
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