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ずっと書きたいと思っていた極私的ライナーノーツをやろうかと思います。
今回は「ボーイズENDガールズ」と「モノマネ」について。
先ずはボーイズENDガールズについて。

この曲は12年前に尾崎さんが作ったもので、当時はまだまだ売れていない厳しい状況だったそう。バイト帰りにコインランドリーで洗濯物を回している間に撮ったのがこの曲(YouTubeにあるので是非聴いて欲しい。)2014年にはアルバム“一つになれないなら、せめて二つだけでいよう”に収録されています。
特徴として、何度も同じ言葉が繰り返されます。曲調や音もシンプルだし歌詞もシンプル。

いつでもあなたのそばに居たいとか
同じキーホルダーをぶら下げて
離れていても心は近くだって思っていたいの

本当はいつだってそばに居たい。でもまだ一緒になれないから同じキーホルダーを持つことで、恋人を近くに感じられる。そんな健気な乙女心を感じますね

おんなじ空を見ていたい
今日もおんなじ空を見上げたい
あなたと あなたと

      

空を見上げて彼を想う時、彼も同じように空を見て同じように私のことを想ってほしい。同じものを見て同じ気持ちでいたい。そんな切実な願いが込められています。きっと彼のことが好きで好きで堪らないのでしょうね。

シャンプーの匂いが消えないうちに
早く会いに風が吹いても
大丈夫だよ
シャンプーの匂いが消えないうちに
早く会いに風が吹いても
消えやしないよ

このシャンプーの匂いというのはきっと、彼と同じ匂いなのかな。彼の家にお泊まりして、彼と同じ匂いになった私の髪。でもその匂いも風に吹かれて段々と薄まっていく…だから消えないうちに早く会いに来て、あなたの匂いが消えてしまう前に迎えに来てほしい。だけど、この匂いは消えても、この気持ちは消えないよ。とここでも素直な彼女の気持ちが溢れていますね。

朝も昼も夜も二人で
朝も昼も夜も二人で
あなたとあなたと
あなたとあなたと

朝も昼も夜も、四六時中あなたと二人でいたい
ずっと二人でいたい。片時も離れたない。
人は恋に落ちると周りのことなんて見えないくらい、相手に夢中になってしまうのよね。自分にとって彼が全てであるかのように
曲中何度も同じフレーズが続くのでより気持ちを強調されるように思います。
ただただ好きで、一緒にいたくて、同じものを持ち同じものを見て同じ匂いになって、同じ気持ちであるのが幸せだと彼女はそう思っているのかな、無垢で可愛らしいですね。

次に「モノマネ」について。
この曲は2020年にリリースされたシングルで2021年のアルバム「夜にしがみついて、朝で溶かして」にも収録されています。
実は先程のボーイズENDガールズの続編でもあります。

シャンプーの泡 頭に乗せてふざけるから
楽しくなって よそ見するからほらリンス忘れてる
それから体 洗い流せば おんなじ匂い
嬉しくなって でもその分 小さくなる石鹸

ボーイズENDガールズの頃から時が経ち、2人は同棲しているようですね。
一緒にお風呂に入ってシャンプーの泡を頭に乗せてふざける彼。ほら、リンスするの忘れてるよなんて言って、体を洗い流したら同じ匂いになる。あの頃夢に見たおんなじ匂い、嬉しくてでもその分、最初に感じていた初々しさやシャンプーの匂いが消えないうちに早く会いに来てほしいと思っていた気持ちは小さくなっていく。“小さくなる石鹸”という一節で、時間の経過と気持ちの変化を表現している尾崎さん、やはり秀逸だと思います。本当に言葉の選び方が素敵。

いつもとおんなじ道を歩いて
いつもとおんなじ空を見る
同じキーホルダーをつけた鍵は
何から何までそっくりだった

おんなじ空を見ていたい、と願っていた過去の自分は
今や彼と同じ道を歩いて、同じ空を見て、同じキーホルダーに鍵までつけている。何から何までおんなじ。
だった。

おんなじ家に帰る幸せ
おんなじテレビで笑う幸せ
このモノマネ全然似てないね
下手だって馬鹿にしてたけど似てないのは
もしかしたらひょっとしたらひょっとした
あの時あなたは泣いてたのに
何も知らないあたしはただ笑ってた
全然似てない今更泣いても酷いモノマネだな

同じ家に帰って同じテレビを見て笑い合う、そんな日常ってすごく幸せですよね。
わたしは小さい頃から家族でモノマネの特番を見るのが好きで、この人似てる!とかこの人あんまり似てなくない?とか。そんなしょーもない時間がすごくすきだったんです。だからいつか大切な人と一緒になった時はモノマネの特番をみて似てるとか似てないとか、一緒にモノマネとかして、笑いあったりするのが夢なんですよね、だからこのフレーズに触れた時、なんだか泣きそうになったんです。
おんなじが良くて、今まで何から何までそっくりだったのに、一緒にみたモノマネを全然似てないねなんて笑いあっていたのに、肝心な私達はちゃんと分かり合えていなかった。笑顔に隠された本当の気持ちを、そこまでモノマネすることは出来なかった、、、んだと気づいてしまったんですね。

違うところに怒る不幸せ違う気持ちを許す幸せ
あたしのこと全然見てないじゃん
もういいって不貞腐れたけど見てないのは
もしかしたらひょっとしたらひょっとした
でもあなたが笑っていたから
何も知らないあたしはただ笑ってた

あんなに同じだった二人もいつしかすれ違ってしまい
あたしのこと全然見てないじゃん、って不貞腐れたけど本当は、自分も彼のことを見ていなかったのかもしれない。彼女は2人の変化を受け入れることが出来なかったのかもしれない、だって、ずっと二人おんなじがよかったから。もしかしたら…?って違和感も彼が笑っていたから私も笑ってた。何も知らない私はただ彼のマネをして笑ってた。

ある晴れたそんな日の思い出
どこにでもある毎日が
今もどこかで続いてるような気がして探して
全然似てない今更泣いても酷いモノマネだな
やっぱり似てない今更泣いても酷いモノマネだな

おんなじ空を見たり、おんなじ家に帰っておんなじテレビで笑ったり、そんなどこにでもある日常をふと思い出す。なんとなく今もどこかに2人の毎日が続いているような気がして、探している自分に気づく。
あの時、本当は泣いていたことに気づいてあげていれば、、今更泣いても意味が無い。結局、全然似ていなかった、酷いモノマネだったな。と当時を振り返える。曲が進むにつれて過去を思い出しているのだと分かるはず、冒頭より一緒に暮らしていく様からおんなじが増えて幸せだと思う気持ちが、終盤にはおんなじが皮肉に変わっていく。


これはどの恋人達にも言えるのではないかな、とわたしは思います。人は自分と同じ部分がある人に惹かれるそうです、似ているから好きなのか、好きだから似ていると思うのかは分かりませんが。
最初は似ている部分に惹かれて一緒になるものの、一緒にいる時間が多くなればなるほど相手の違う部分に目がいきがちになる。あの頃はこうだったのに、と。
その違いを認め受け入れるべきであるし、同じが正しい訳では無い、と今の私なら分かる。
人それぞれの優しさや愛のかたちがあって、それは必ずしも自分と一致する訳では無い。だからこそ相手をよく見なくてはいけないし気づいてあげないといけない。

この二つの曲から、1人の女の子が女性になる過程を感じています。それは過去の私でもある。
おんなじって、無邪気で愚かで可愛い。

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