【詩】ピコたん

オーク色に輝く爪は今日も練っている
しわだらけの生地を練っている
骨ばった手指をこもれ日の下へ出し
少女らを手招きするように
昆虫のようにひかる妖艶な爪

この家がピコたんになってしまう前に
詰められた彫りの豊かなカラトリーと共に
カラトリーと共に出ていこう
寄木の机と軒先の庭を
照らす木漏れ日が地中に沈むまで

 俺の前の椅子には
 誰も座っていなかった
 今日も
 向かいのアパートの
 錆びた階段を
 音を立てて上がってゆく
 女の部屋には靴下が
 いくつも いくつも
 ぶら下がったままに

今日は真夏日
この強い日差しの
光の根になるいくつもの靴下の
シワの無くなるまで
彼女は今日もねっている

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