【詩】春、線路

花を散らした春の日に
冷えた堀にたつように
黒っぽくなった足指は
苔むした墓碑になりたいと言った
駒込を前にして車両の空気は循環して
春の雑草が線路沿い 停止した私を見ている

ふと見下ろした手には涙
眉に花びらがのり
確かめてしまった横顔
いま溢れていく茶髪で
瞬きは始まり
糸糸の裏側に潜められた物語が
風にたなびいて
豊かな表情にほどけていく
その木こりのように揺れる背も
霞空に溶けあって
発車のサイレンが鳴った

まだ私は生きています
青のベールをまとった人へ
鯉のぼりは雨に泳ぎ
風かみに向かうメジロはスキップをして
差したのはあなたの陽射し
すえにひろがりゆく子の髪は
いつのまにか乾いていた

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