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密かな願望

ずっと煙草を吸ってみたいと思っている。

今日も思った。仕事帰り、ぼーっと駅のホームに立ち、夕暮れを見ながら。

煙草を吸うときは、赤い口紅をつけると決めている。似合うか似合わないかなんてこの際どうでも良い。私の中の、煙草を吸っている女性はいつでもブロンドの髪にサングラスをかけ、セクシーなドレスに真っ赤な口紅を塗っている。今のところ、彼女が代わりに煙草を吸ってくれているお陰で欲求が収まっていると言っても過言ではない。

なぜこんなにも吸いたくなるのか。周りの大人たちが吸ってるからだろうか。仕事柄、煙草を吸っている人の方が関係者と仲良くなれる、というのを実感しているのもあるかもしれない。でもそれって、女性だとまた違うのだろうか。

今のところ、始めてしまったらズブズブハマりそうなのと、辞めなければいけないときの苦痛とか面倒さが優っている。

この気持ちを振り切って、吸えるようになるのはいつになるのだろうか。

最近、周りの身内や知り合いが病気に罹ったり、亡くなってしまったりすることが多い。
その度に、生とは如何に儚く、奇跡に近いことを痛感する。一緒に暮らしていた人が、飲んでくれていた人がしばらくすると、言葉も発さず全く動かなくなってしまうなんて、信じられない。その度に、人間とは、生きているとは何だろうか、という問いがひょっこり顔を出しては消えていく。

私に残された時間があと僅かだとしたら。

その時にやっと、心置きなく、何かに対して罪悪感などなく、煙草を吸えるときがくるのかもしれない。

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