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新年のおくりもの
昔々ある国では、年初めのあいさつに葉書を送り合う習わしがありました。
葉書というのは小さな紙切れのことで、赤い箱に投げ入れると、遠くのまちに住んでいる友だちにもほんの何にちかで届くのです。
このあいさつをみんながするようになってしばらく経つと、葉書にことばや絵を描くだけでなく、写真を印刷することができるようになりました。
写真が何かは知っていますね?
動画ではなく、静止画のことです。
年に一度のあいさつですから、子どものいるうちでは、子どもの写真をのせて送り、毎年の成長を報告する人が増えていきました。
ゆうこおばさんは、友だちや知り合いから送られてくるこの写真を居間に飾って楽しんでいました。ゆうこおばさんのうちには、長いこと子どもがいなかったのです。
やがて赤い箱の仕組みが民営化したり、みんなのしがらみがなくなってきたり、いろいろなことがあって葉書のあいさつをやめてしまう人が多くなりました。
そんなある年のこと、誰からも写真入りの葉書が届かなくなったのです。
ゆうこおばさんはさみしくて、さみしくて泣きました。泣いて、おねえさん(おばさん)に言いました。
「だれからも子どもの写真が届かなくてさみしいよう」
すると、おねえさんはこう答えました。
「去年の写真があるでしょう?」
それでも、ゆうこおばさんは納得しません。
「それじゃあ古い子どもじゃないの!」
「甥っ子のスマホ画像があるでしょう」
「わたしは写真を飾りたいのよう!!」
「あなたはヘビの仔の絵のついた金色の葉書を飾っていたでしょう。子どもは子ども、あれでよいではないの」
「に…にんげんのこどもおおぉぉ」
なんと、ゆうこおばさんはばけものになってしまったのです。
おねえさんはびっくりして、孤独の恐ろしさを噛み締めました。
「わたしも老害には気をつけなくっちゃ…」
でも…とおねえさんは思い直します。
年末に体調を崩してから、食欲が落ちていたゆうこおばさんが、今はよだれをダラダラと垂らしながら、子どもを喰いたくてたまらなそうな顔をしているではありませんか。
「でも、ゆうこの食欲が戻ってよかったわ」
おしまい