『ボルケーノアイランド』と『2wink』
あんさんぶるスターズには、コンテンツ独自の恒例ライブ、フェスなどが多く登場する。カウコンとかそういう感じの。
!時代は学院が舞台の中心だったので、学内のイベントが主だったけれど、!!に入ってからは事務所所属アイドルとして外に外に開いていくことが増えた。
これは現実の話だけど、外部コラボの際に「あんスタ」というコンテンツじゃなくて、所属事務所+アイドルユニットでのアナウンス、ロゴもあんスタじゃなくて事務所が入っているビルのロゴか各事務所のロゴがバーンと出るの、あれがすごく好き。
そしてボルケーノアイランド。これは歴史のある音楽番組で、あんさんぶるスターズ!!に入ってから二度、話の中心に取り上げられている。ハロウィンやクリスマスなどと関係なく、同じ催しが二度にわたって大きく取り上げられるのはあんスタ内では珍しいと思った。
それもどちらも2winkがメインのストーリーで。
現在3回開催されているユニット新曲イベントで一回、年に一度だけローテが回ってくるスカウト(ガチャのこと。あんスタには常設ガチャの他に専用衣装ガチャと特攻ガチャがあって、一ローテ内でどちらか片方のみ実装)の、☆5ゆうたで一回。
ボルケーノアイランドはESと関係ない外部の音楽番組で、アイドルは出演しないというもの。アイドルの出ない歌番組がピンと来ないのだけれど、純粋に音楽を楽しみたいとか、アーティストを深く知りたいひととかが好むのかな、と思った。
葵ひなたとボルケーノアイランドの話は、この番組の出演枠が2winkのうちのどちらか「ひとり」に与えられたところから始まる。
出演できるだけで名誉になる番組とのことだが、一枠ではなく、「ひとり」。ふたりでひとつだった俺たちは、どうなるのか、というイベント。ビヨンド共鳴するツインピークス。
ふたつの頂きが主役の物語で、片っぽがボルケーノになる。爆発しそうなほどの激情とかを抱えて熱でしんどくてのたうち回っているのは、双子のどっちの方だったのかな。
ひなたは当初、今までの葵ひなたがそうだったように、ゆうたに権利を譲ると、ゆうたは思っていたし、ひなたもそう言っていた。ひなたの発言としっかり言えないのは、それがゆうたの姿をしてゆうたの口から発せられたものだったから。ツインピークスの冒頭は、ふたりそれぞれの居室のシーンからはじまる。けれどこれはきっと、恐らく、ひなたがゆうたを、ゆうたがひなたをやっている。ほぼ確実に。ふたりはそうやって、お互いの交友関係を確かめながら、俺たちの擦り合わせをしている。お互いに成り切るという不自然さもなく、自分自身ではない兄弟の姿を借りて自分を見つめ直して、頭の中を整理しているのだろうと思った。
当初、ふたりはアイドルらしく対決をして、出演する方を決めるようという答えを出した。
ファンに詳細を伝えずに、ライブ対決をするから投票してね、と。何も知らないファンへ責任を委ねて、何も知る前に加害者にさせた。俺たちで俺たちを引き裂けないから、他人に理由を求めた。事情を知った他のアイドルから、それはファンに対して残酷だよねという話になって、ふたりは別の対決の仕方を考えることになる。後日それをやり通したアイドルがいるのだが、それはまた別の話。『2wink』はまだ、そこには至っていない。
ふたりは水面下で、ふたりで出演することを通してもらえるように交渉していた。そうでなければ辞退、出演する方を決める対決は引き分けで終わりにしようという話をしていた。許可はおりず、枠はひとつとなった時に、引き分けにするはずの対決に勝ちに行ったのは、ひなたくんだった。葵ひなたのために、それが俺たちのためになると信じて。ナイトクラブで踊った夜に、君が父親を傷つけた意味がわからない、とひなたは言った。いつまでも復讐に囚われてその場から動かないゆうたに、マイナスの位置から奪われたものを奪い返して、ゼロに戻ろうとする弟に、俺はそこで止まっていたくない、と言った。
そして『ボルケーノアイランド』には『葵ひなた』が出演することになる。
ひとりでも堂々と、華やかで魅力的なアイドルを、ひなたくんはやり遂げた。
葵ゆうたとボルケーノアイランドの話は、年の明けた冬の頃。
『SS』という年末のアイドルの祭典が終わって、ひなただけが評価され、自分の中に鬱屈がたまっていく中、『2wink』というユニットに再び出演のオファーが来るところからはじまる。その時、ゆうたはユーザーに理由をはっきりと伝えないままに髪の毛を伸ばしていた。双子が売りの葵兄弟の弟が。その理由が明かされるのが、スカウト!ミラージュ。
二度目の『ボルケーノアイランド』のオファーが、今度は『2wink』のふたりに来る。ゆうたはどうしても一度目の出演を納得していなくて、どうにかして全部をめちゃくちゃにしてやりたいと言った。SSで勝てなかったことも、ひなただけが成功していくことも、全部全部が嫌で、嫌だと思う自分自身を嫌いになるのが嫌で、ムカつく。全部。
ゆうたは、『葵 白夜』という架空の人物のフリをして打ち合わせに向かう計画を立てた。ひなたの兄を名乗り、ひなたと白夜のふたり組のユニットと嘘をつくと。それに気づけば無罪、気づかなければ、俺たちに形だけ謝っているなら、有罪。
葵白夜はゆうたが長髪のウィッグかエクステを身につけた姿だ。それは、ツインピークスでゆうたの顔をしたひなたが、俺たちの見た目が好きだと言ったことへの、最悪のアンサーのようでもあった。
双子のそっくりな姿を捨てる。それすら知らないような相手が機嫌をとるために『2wink』に『ボルケーノアイランド』の出演を依頼したのなら、ゆうたは何もかもを壊す覚悟をしていた。もう誰にも何も奪わせない、全部取り戻す、奪い返す。
ゆうたの計画は結局、ゆうたの想像もしていなかった結末を迎えた。
ボルケーノアイランドのプロデューサーは、白夜の髪型を、ゆうたの新しい髪型だと認識し、それもいいね、と言ったのだ。そしてボブのひなたとハーフアップのゆうたで、二度目のボルケーノアイランドへの出演を果たす。そこには元々の双子アイドルの大人しい良い子の姿はなく、髪を長く伸ばし大人っぽくまとめた、ちょっと毒舌キャラの魅力的なアイドルがいた。例えば、何も知らないファンや学院のクラスメイトは、ESと無関係なプロデューサーの意向でキャラ変をしたように見えるのかな、と思うと、たまらなくゾクゾクした。ユーザーであるあたしこと『プロデューサー』は、この件に関われていない。
このストーリーの終わりに、ゆうたは「おまえら」に語りかける。
おまえらの記憶に残ってやる。
ありがたいことに公式チャンネルでミラージュのセリフを一部撮り下ろしていただいているので是非聞いてめっちゃ聞いて。25:37〜あたりから。
これはつまり、あたしたちだ。ファンではなく、ユーザーに、あたしたちに、葵ゆうたは気づいている。ゆうたくんが気付けばきっと、ひなたくんだってきっと。それがすごく嬉しかった。