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ファンのブログに『お父さんと和解できて良かったね』とまとめられる葵ゆうたくん

 召しませ/ナイトクラブという大好きなイベントがあります。

!!に入ってからのはじめて開催された2winkが看板のツアーイベントで、しかも☆5はゆうたくん。ライターはあんさんぶるスターズのメインライターの日日日先生。最高。
ただ、当時何かを思ってこのイベントに参加したとかはない。悲しいほどログイン勢だったのだ。
今なら絶対爆走してたし今でも爆走させてほしいよ……。推しは推せる時に推せ。マジで。 

このストーリーを自分好みの言葉で言うのなら、「葵ゆうたが産声を上げたスト」だと思う。今この言葉が自分の中でブームなだけかとも思うけど。
葵ゆうたくんは、!時代☆5の日ストのイベストがなかった。これが初☆5日ストで、私はそれまで、ひなたくんが☆5の2winkの重たいストーリーとか、看板が別ユニのストにちょっと登場してた、☆3とかのゆうたくんで、自分の中のゆうたくん像を固めていた。
だからきっと、雰囲気であんスタやってたなりに楽しみにしていたと思う。チャイナも似合ってたし。
そして配信されたストーリー。家族の話で、ゆうたくんの自我の話だった。

 葵ゆうたくんは別に性格が良くない。良い子で大人しくて、やんちゃな兄をなだめる弟というのは!時代の彼に与えられた役割だったけど、兄のひなた相手のゆうたくんは、怒鳴るし蹴るし首も絞めるし突き飛ばすし、ひなたの言葉を借りるなら、兄をサンドバックにしていた。 
そんなゆうたくんがどうして大人しい良い子、双子の落ち着いた方、なんて印象があったかと言えば、それは「兄のひなた以外との絡みが少ないから」だと思う。物語的にも、キャラクター的にも。
ひなたくんはゆうたくんに「幸せだった俺たち」の姿を求めているような素振りが多かった。ゆうたくんが「幸せな俺たち」になるために、自分の全部を使ってゆうたくんを傷つけるものからゆうたくんを守ってきた。その中には人間なんかも含まれている。
ゆうたくんを傷つける様々なものを自分を盾にすることで防いで、自分で濾過した綺麗な水をゆうたくんに浴びせ続けていた。それはゆうたくんの自我の芽生えの阻害でもある。
ゆうたくんの芽は、芽吹く前に綺麗な水と、他でもない兄を肥料にしたたっぷりの土の中で根腐れしてしまっていた。

だから、ゆうたくんの自我が育ってきたのは、この召しませ/ナイトクラブの影響が大きい、と思う。ひなたくんはゆうたくんの兄であり、父であり、母であり、サンタクロースであり、友人だった。たったひとり、それも自分を守るためならどんなに傷ついてもいいと言って目の前でボロボロになって、それでも変わらないで、綺麗なままでいてと願った兄のエゴを、弟はそれでも愛だからと受け入れている。これはあたしがめちゃくちゃに葵兄弟のことが好きだなの部分。 

そしてナイトクラブ。父親と息子の話。葵兄弟は特に、あの世界(ゲーム内の時空、あたしたちユーザーは踏み入れない部分)のファンに、親の話を語っているような描写はない。ひなたが死にそうに喘いでいた時にいちど、学院の生徒に助けを求めて暴露されたことはあるけれど、あんなの人命救助と個人の尊厳を天秤にかけて、町の中で服を引き裂いたのと同じだ。
そしてふたりは、その時のことをファンには伝えていない。隠している素振りもないので、あの世界の双子ファンは、父子家庭で育って、小さな頃から大道芸を披露していた、ちょっと可哀想な過去を持つアイドル、くらいに思っていたのかな~と思う。ゆうたくんが個人のアカウントでめちゃくちゃに父親を罵ったりしていたらまた別だけど、してないと思う。
ナイトクラブには2wink以外のアイドルも登場するし、イベントのあった夏頃は特にヘイト買いまくってた新キャラが、そのままヘイト買いまくってまっせ~然とした態度で出てくる。そんな危なそうな集団に兄が夜のお店へと連れ込まれる(現在はセリフがマイルドに修正されてしまっている)現場を目撃した弟は、慌てて後を追いかけたけど、どうしようもならなくて拉致した本人へ詰め寄り、逆にそのまま捕まって椅子に縛り上げられて頭から水をぶっかけられるという散々な目に合わされている。
ちなみにこのシーン当時そんなに炎上しなかったらしい。許せねえよ。土下座椅子の時はあんな燃えたのにね。
ひなた拉致の誤解はすぐに解け、成り行きでバーのステージに立つことになる『2wink』。そんなふたりの目の前にいたのは、ふたりのお父さんだった。 

この時ふたりの間で兄弟の立場を入れ替えようみたいなのがあったのでややこしくなってるんですけど、葵兄弟は兄ひなたと弟ゆうたのふたり兄弟です 

戸惑うゆうたくんに対して、ひなたくんが言ったのは、お父さんもお父さんなりに息子を心配しているんだよ、俺たちまだ子供で、何をするにも親の許可がいるんだよ、君がお父さんを嫌うだけ、俺はおお父さんを愛するよ、血がつながってるだけの他人だとしても。
父親の言葉に傷つけられたふたりが家出をして、死にかけた時、助けてくれなかった父親が。そして、兄までもが、それを治った傷みたいに言う。愛で傷つくひともいるんだって、ゆうたはそれを今まで言えずにいた。
どうして言わないと、ゆうたに発破をかけたのは兄でも父でもない、仲間でもない、悪い大人、アイドルの天城燐音。
ひなたを通さずに浴びた人間の肉声は、ゆうたにどれだけ響いたのだろう。ゆうたは大きく息を吸った。観客席の父親へ叫ぶ。

そこには父親以外にも双子のファンがいた。非公認のステージまで追いかけてくれる熱心なファンが。
そのファンにとって、ゆうたのの笑顔は、言葉は、ほんとうに『アイドル』に相応しいものだった。お父さんとやっと和解できておめでとうとか、感動したとか、そういう言葉で綺麗なハッピーエンドを迎えられる。まとめブログとかあっちの世界のウィキペディアとかにもこの日に父親と和解したとか書かれるし、見に行ったファンは和解記念日でマウントもとれる。
でも父親にはちゃんと言葉のナイフが突き刺さった。これを受けて感動するような父親だったらゆうたは傷ついたかな。
ゆうたはこれを振り上げる前に、八つ当たりだと言っている。彼はあの当時の父親の言葉が、本心ではないことなんてとっくに気づいている。でも言う。葵ゆうたのために。

『応援しにきてくれたんだね、ありがとう!いつも感謝してるっ、お父さんのお陰で俺たちはこんなに立派なアイドルになったよ!』


 
新しい命の芽生えみたいだなと思った。葵ゆうたは、これでやっと人間をはじめるのだと。
まるでお誕生日みたいだよね。

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