『2wink』の三人目
もちろん葵白夜お兄ちゃん様でも(ゆうたがやろうとしていたことから見ても、葵白夜は2winkの片割れ以上の意味はないし)、あんず『プロデューサー』でもなく。
2winkという『ユニット』は、ふたりでありひとりであり、そして三人目の『俺たち』がいる。いた、の方が正しいのかもしれない。二人組ユニットの三人目なんて話にそもそも正しさなんてないのだけれど。
2winkは1+1=?の答えを探す方程式だ。
それは節分祭で、返礼祭でふたりが出したはずの答え。ふたりはシュガー・スパイス方程式。甘いピンクの幸せと、明るいブルーのスパイスと幸せを何もかも煮詰めてからふたつに分かれた双子の兄弟。『俺たち』という『個人』を強くて美しいひとりにするために二人がかりできらめきの養分を注ぐことが、ふたりが愛されて、祝福されて生きていくために見つけた光。比翼の鳥は、片翼ずつでは飛べないから。
けれど、ふたりは片翼でも空を飛べる。ふたりはとても器用で、吸収したことはなんでもできたから。
そして、『俺たち』と『俺』の意識が乖離してしまう。
ひなたくんとゆうたくんで作った『俺たち』という最強の個人でいなくても、みっともなく足掻いて藻掻いて、無様でも這い上がって輝きを掴みたい、輝きたいと、自己の清算をはじめたのはゆうたくん、そのやり方に疑問をていしたのはひなたくん。
努めて別々の性格に育とうとしたふたりは、それがそのまま自己になり、ひなたくんとゆうたくんになった。
そして、そうなってしまえば『2wink』は、最強の個人ではなく、ひなたくんとゆうたくんの組んでいる『ユニット』の名前以上の意味を持たなくなる。所属先になる。
それはもしかしたら、やっとスタートラインに立つことなのかもしれない。葵ひなたは『葵ひなた』、葵ゆうたは『葵ゆうた』。ふたりは、ふたりのアイドル。そして、ひとりのアイドル。
『2wink』がなくなるわけじゃない。ふたりがそう呼んでいただけで、2winkはそもそもユニット名以上の意味を持っていない。それを美しくて最強の個人にしていたのは、ファンであり、ひなたくん、ゆうたくん自身だ。
1+1=の答えは2。教科書に載っているのはそう。そして世界でも。でもふたりはそうじゃない。新しい方程式。
その答えを、『2wink』の向こう側を、ひなたくんとゆうたくんのアイドルストーリーを、あたしは期待している。あたしは『2wink』のふたりの、ファンだから。
追記:ファン第一号じゃないんだけどね、あたし含めファンはみんな。悔しすぎる。でも言ったもん勝ちだし言い切った先輩は最高にかっこよかったし言われる前に声を張り上げられなかったならあたしの負けなんだよな…。