自衛官が有事に交戦しても法的に問われない理由

ネットや一部雑誌では自衛官が有事に交戦したら法的に問われるなんて話が出てくる。
しかしそんな事は実際にあるのだろうか?各種の法律や国際条約で検証してみると
その話はありえない事がわかる。

まず自衛官はハーグ陸戦協定やそれをベースにしたジュネーブ諸条約第3条約第4条Aの
捕虜の条件にて軍隊や義勇軍、民兵の戦闘員でなければならないと
されており、その条件は以下のとおりになる。

(以下引用)
a)部下について責任を負う一人の者が指揮していること。
b)遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること。
公然と武器を携行していること。
c)戦争の法規及び慣例に従って行動していること。
(引用終了)



防衛省HPより引用



自衛隊はこの要件を十分に満たしているのは言うまでもない。
つまり戦闘員同士との戦闘であれば国際法で自衛官を法的に問うのは
出来ない、というより筋違いである。民間人や捕虜などの
非戦闘員を殺害したのならばジュネーブ諸条約や刑法で問われて当然だが
そうでないのなら法的に問うのは無茶にも程があるというものである。

また1990年10月18日の衆議院本会議における外務大臣答弁において
自衛隊は国際法上軍隊として取り扱われていると述べている。
ジュネーブ諸条約やハーグ陸戦協定では自衛隊は軍隊として扱われているのである。


Wikipediaより引用



しかしそれは国際条約上で国内法はそうではないと言う人もいるだろう。

実際民進党の逢坂誠二議員(現・立憲民主党)は2016年の衆議院にて
「他国軍兵士を殺害した場合においても殺人罪に問われない根拠」を
当時の安倍晋三首相(故人)に質問し、安倍首相は
自衛隊の防衛出動における武力行使は刑法第35条の正当行為にあたるので
殺人罪に問われることはないと答弁している。

刑法第35条の正当行為は法令や正当な業務による行為は罰しないと定めており
当然だがこの法令には自衛隊法、武力攻撃事態法、平和安保法制、
さらには国際条約であるジュネーブ諸条約も含まれる。


e-Gov法令検索より引用



よって防衛出動による武力行使による自衛官の交戦で法的に問われることない。
もちろん捕虜や民間人の殺害はジュネーブ諸条約にも刑法にも違反するので
その点は問われて当然である。ただ交戦で自衛官が殺人罪に問われるという話は
まずありえないと見てよい。ちなみにこれを機会に軍法会議を
復活させろなんて話もあるが軍法会議は効率も悪く身内庇いも横行し、
コストもかかるのでドイツやデンマークなど欧州各国では
廃止している。アメリカの軍法会議も特別裁判所ではなく
米連邦最高裁判所の下部裁判所であり、軍人による陪審員がおかれるなど
特別裁判所としての軍法会議には否定的である(だから連邦裁判所に上告も可能)。

■ソース
https://www.mod.go.jp/j/presiding/treaty/geneva/geneva3.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%B4%E8%AB%B8%E6%9D%A1%E7%B4%84%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E8%BF%BD%E5%8A%A0%E8%AD%B0%E5%AE%9A%E6%9B%B8?wprov=sfla1
https://web.archive.org/web/20020212011607/http://homepage1.nifty.com/SENSHI/data/haug.htm

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E9%97%98%E5%93%A1?wprov=sfla1

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E9%80%A3%E9%82%A6%E8%BB%8D?wprov=sfla1

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E8%BB%8D?wprov=sfla1

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192110.htm

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