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夢想

「ふふっ…」
あの時のミラの表情を思い出して笑わずにいられる人がいるのかしら
一人で声を出して笑いだしたことにハッとして口元を抑える
しかし次の瞬間、そんな自分に気づく人など どこにもいないことを思い出す

そう、ここには誰もいない
私以外

港を出て以来繰り返される祖母の話に疲れ
甲板を散歩していた時だった
突然の大きな音と共に船が揺れ
私の身体はいとも簡単に
海へ放りだされてしまった

波の音に起こされたときには
すでにこの浜辺にいた

近くに打ち上げられていたランプとボトル
ボトルの中身はワインだった
重くて動かせない鍵のかかったトランクに
落ちていた椅子を寄せ 腰かけた

他に流れ着いた人はいないのかしら

探したい気持ちはあるものの
砂に足をとられて歩きにくく
濃い霧に囲まれて
一度この場を離れてしまったら二度と戻ることができない気がしてできなかった
そもそもこの場に戻る必要などあるのか
そんな疑問も浮かばないほど
霧に囲まれた世界には
そこにあるものしかなかった

どれほどの時間が経ったのだろう
今が昼なのか夜なのか
それすらもわからない

繰り返す波の音を聞いているうち

私はいつのまにか

眠って

しまった

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