憧れのアメリカン☆バスタイム
「ねぇ、あなたはトムのこと、どう思っているの?」
「え、どうって言われても、そうね、ふふふ」
海外映画の女子たちは、こんなトークをしながら、もっこもこできめ細かいメレンゲのような泡でいっぱいのバスタブに浸かる。
映画だけではない、Eテレ(私がこどもの頃はNHK教育テレビだった。世代……)のアメリカのホームドラマでも度々登場する泡風呂に私は並々ならぬ憧れを持っていた。
そして、それをアメリカン☆バスタイムと呼ぶ。
(実際にアメリカの方がどのように入浴されているのかは不明で、もしかしたら泡風呂はヨーロッパ圏の方がされているのかもしれない。
だが小学生の私は、「アメリカン!かっこいい!」と思ったので、このまま「アメリカン☆バスタイム」とさせて頂く。)
ザ☆アメリカン……!
何このお風呂、めっちゃカッコイイ! 入りたい!
入ってもこふわの泡に包まれたい!
どうやって作るの!?
アメリカン☆バスタイムしたい!!
私が小学生だった90年代に、ふわふわの泡ができるボディソープはさほど多くなかったように思う。
それが、しかもお風呂にはいりながら体験できるとは! お風呂が泡だ!
しかもそのあとシャワーを浴びて入浴が終了しているTV画面のなかのアメリカンたちに私の目は輝いた。
え、これでお風呂終了な訳!? すごいカッコよくない!?
私は当時お風呂をややめんどくさいものと思っていた腐女子予備軍だった。
カッコ良さに加えて、入浴者の手間が少なく見える泡風呂の入浴方法に目が釘付けになった。
私は母親にどうやったら泡風呂に入れるのか聞いた気がするが、あまり良い返事ではなかったように記憶している。
そりゃそうだ。自分が母親の立場になって考えると、そもそも90年代の日本であんなもこもこ泡が出せるような入浴剤はなかったし、泡風呂では追いだきをして翌日また入ることも出来ず不経済。
掃除も面倒だから極力泡風呂には手を出したくないだろう。
そんなわけでこども時代にアメリカン☆バスタイムの夢は叶わなかった。
その後、学生の間に1回は旅行で、もう1回は短期留学で渡米する機会があったのだが、そこでも本家の泡風呂にお目にかかれる機会はなかった。
短期留学中は数回ホームステイ先のホストファミリーに連れられスーパーにも行ったのだが、悲しいことに高校生の私には良い泡風呂の入浴剤を見つけられるほどの語学力はなかった。
大人になってから結婚式の二次会のプチギフトでもらう「泡風呂のもと」にやや興奮しながらトライするのだが、どうにもうまくいかない。
やったことのない方のために泡風呂の作り方についてここで説明。
泡風呂は、泡風呂用の入浴剤(石鹸の成分だと思うが超文系人間の私にはよくわからないので割愛)を空のバスタブに入れる。
その後勢い良く出したシャワーかお湯を泡風呂用入浴剤に向かって思いっきりあてる。
そうすると泡立ってきて泡風呂が完成する。
どうにもうまくいかない、とはなぜか。
泡が上手く出来ないのだ。泡ができても固形石鹸で手を洗うときの泡の域を超えず、きめが粗い。
だからすぐに泡が壊れてしまって入浴して数分もするとただのぬめり気のあるお湯がバスタブのほとんどを占めてしまう。
泡が復活しないかとシャワーをバスタブにあててみたりするのだが、まず復活は見込めない。
何回かバラエティショップで泡風呂のもとを買ってみても結果はほとんど同じ。
まぁ、昔TVで見た泡風呂なんて、番組のスタッフの人が一生懸命準備してどうにか作ったファンタジーだったのかな、そうか、泡で出てくる石鹸を浮かべまくったりとかしているのかもしれないという思いも出てきて、そのまま泡風呂への熱意が薄れていった。
そんな私に転機が訪れたのはつい最近だ。
小1の息子もどこで知ったのか「泡風呂をやってみたい」と言い始めるお年頃になった。血は争えない。
たまたま息子と足を運んだドラッグストアで、それは見かけた。
じゃん!
クナイプのバスミルク。クナイプというブランドの入浴剤は、バスソルトのシリーズがあることを知っていた。ただし、ややお値段が張る。
ドラッグストアで見かけてもいつも値段だけ見て「いやぁ、我が家にはもったい無い入浴剤だ」と購入を諦めていた。そう、私はザ☆庶民!
ところがその日はちがった。なぜなら、「バブルバスも作れる、2WAYタイプのミルク入浴剤です!」というPOPが目に入ったからだ。
!?
泡風呂のもとといえば、たいていは雑貨屋さんやバラエティショップにシャンパン型のボトルに入っているタイプがほとんど。こんな大容量で泡風呂のもとが売っているパターンはまず見ない。
もしも泡があまり立たず、今一つな結果に終わったとしても、ミルク入浴剤として使えるとPOPには書いてある。
しかも息子の欲しがっていた泡風呂のもとじゃないか。私も積年の泡風呂への思いが成就するチャンスかもしれない……!
「ねぇ、これさ、泡風呂できるって、やってみようか?」
と、息子に聞くと、「泡ぶろ!?やるやる!」と予想通りの回答だ。
その日の夜、さっそくこれを試してみることにした。パッケージにある説明だけでは泡風呂の正しい作り方がよくイメージできなかったので、さっそくググったところ、公式YouTubeを発見した。
YouTubeに言われたとおりに少しお湯を張ったバスタブにバスミルクを3プッシュほど入れ、さらにお湯を張る。
泡が足りなければシャワーなどで泡立てる。
これこれこれーーー!!! これだよ! アメリカン☆バスタイム!!
予想をはるかに超える泡立ちだ。
しかも一つ一つの泡が細かいので、減っていくスピードがこれまで見たどの泡風呂のもとより緩やかだ。また、やや泡が減ってきたと思ったら、手でバスタブ内の水をたたいたり、バタ足のように手を動かせばあっという間に泡が復活、さらに増えていく。
あまりの泡立ちに興奮した私は、お風呂の呼び出しボタンで夫を呼び出し、ドヤって説明した。
夫も面白がって私とこどもが入浴しているバスタブを手でたたいて泡の製造に貢献してくれた。
こどもと私が入っているバスタブは泡が増えすぎて、泡があふれてこぼれてしまった。
30年近く待ち望んていた光景が今、目の前に……!
私は感動した。クナイプ様、すごいぞ。
こぼれるような泡の量を楽しめる泡風呂体験がまさか自宅でできるとは思いもよらなかった。
ドイツメーカーのようなので、ドイツ人の皆さんはこんなバスタイムを毎日楽しんでいるのだろうかと妄想したりした。ドイツ人の皆さん、いいなぁ。
泡風呂は「アメリカン☆バスタイム」だと思っていたが、「ドイツ☆バスタイム」だったとは。ごめんなさい、ドイツの皆さん。
こどもは大はしゃぎで泡を体につけたり、泡で山を作ったりして楽しんでいた。
結果、私が子供のころにあこがれていた「さっと泡風呂で体を洗い、シャワーを浴びて入浴終了!」とは真逆で、1時間近くも入浴してしまい、皆のぼせてしまった。しかし、泡風呂をやりきった充実感は半端なかった。
こうして、私の積年の憧れが見事に成就した。私はクナイプさんの回し者でもなんでもないのだが、映画にでていたような泡風呂に憧れをお持ちの方は、ぜひぜひお試しいただきたい。
特に小さいこどもがいるご家庭では、こどもたちが喜び勇んでお風呂に入るようになり、大変おすすめだ。
「アメリカン☆バスタイム」、最高!
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