a song cycle 『sign』ライナーノーツ(的なの)
2/9(火)~2/15(月)の期間限定で、2019公演の『sign』が配信されています!
配信内容詳細はこちら。
作品については上記リンク内記事にお任せ致します。
それで、劇場にて2013,2015,2017,2019の公演かライヴを観て下さった方、DVDをお持ちの方、未見の方、色々いらっしゃると思いますが、今日はライナーノーツを書いておこうと思います。曲の解説ですね。
結構いろいろ正直にだらだら書いてるんで、観る前に読んでも、観た後に読んでも、読まなくても、ご自由にどうぞ。
1.トウキョウの空のした
オープニングのこの曲が生まれたのは初演の約3ヶ月前、2013年の5月頃のこと。
PCが壊れて修理に出そうとしたら2週間かかると言われ、もう何も進められることがなくなってしまったから、しかたなく日曜の朝、近所の公園に散歩に行き、緑めぶく公園で池を眺め、木漏れ日の向こうに空を仰ぎみているうちに湧き上がってきた思いがあったので、その場で鼻歌を録音したのがこの曲である。そのまんまである。
2.Send me a sign
とあるアニメ映画に出てきた台詞、「Send me a sign!」。なすすべなく天を仰いでそう叫んだ主人公の、やや捨て鉢な態度、しかしすぐにsign=天啓をキャッチし運命を切り拓いていったシンデレラストーリー。
それが心にずっとのこっていて、「なすすべもなくなったとき、人は何かに縋ってしまう。神とか、何かとか。でも、祈りって無駄じゃないとおもう。」そんな個人的な感覚がこの曲を書かせた気がする。初演当時マイブームだったKerrigan-Lowdermilkのソングサイクルの曲を参考にしながら。
3.coffee
歌自体についてはあんまり解説しようがないのだけれど…(笑)
渋谷のスクランブル交差点を歩きながら思い付いたメロディで、横断歩道渡りながら歌って録った。テテという、来日公演もしたフレンチポップス歌手のテイストを採り入れた曲。
4.雨天決行1
この曲だけ、1曲で完結せず3曲にわたっている。60年代の事件に色々興味があったので、迷宮入りしているこの超有名事件、仮説のひとつを採用してつくってみたシーン。イメージは、新宿のレトロな喫茶店の奥。
5.旅
日本一有名であろう犬の物語を、"みんなのうた"ぽい感じの歌で。他作品の稽古に出演していた時、思い付いちゃったので出番がない時間に書きました。すんごくすらすら書きました。すいません。
6.MVP
日本で最初のMVPに輝いた沢村栄治投手のことは、小学校の図書室で見付けた『まぼろしのプレーボール』というファンタジー児童小説で知った。大人になっても覚えていて、歌にしようと思ったくらい印象深い本だったわけだ。東京ドームシティの野球殿堂博物館に沢村投手の関連品があったり、すぐちかくにその名を刻んだ鎮魂の碑があります。曲調は、そもそもsignをつくろうと思った根本の作品であり元祖ソングサイクル的な『Songs For A New World』(『パレード』作曲者Jason Robert Brownの作品)からヒントを得て。
7.寝巻會
「寝巻會」と書いてナイト・ガウン・パーティーと読ませます(強引に)。
この曲を書いた頃(2019)、お友達の中村萌子さんと五十鈴ココさんとお泊まりパジャマパーティーしたんです。あ、こういうの歌にしてもいいかもって思ったのがきっかけ。萌ちゃんココちゃんありがとう。キヌア炊き込みごはん美味しかったね。
きっかけはそれなんだけど、歌の中身はというと、
舞台のスタッフ等に女性が増えてきたとはいえ、はっきり言うと、まだまだ男性社会だなーというか、男性側が男性社会だと思ってるなーと感じることがまだまだあって。違ったらすみませんね男性の皆さん。でもミュージカルの演出を始めて2~3年までは、「なんだその髪留めは」と言われたり、「この子(藤倉)に決めさせようよ」と言われたりしました。髪留め、つーかこれバレッタだし、てか、バレッタしてるからなんだってんだよ、やることはちゃんとやるわ、見た目で判断するな、とか、この子って何だよ、つーか決めさせようよってどの目線からいってんだよ、とか思ったりしてました。(口悪くてごめんなさいませ)
とか、現場では絶対泣かない、感情的にならない、"これだから女は"と言わせない、としずかに誓ったりして。
そんな、仕事内容と違う覚悟をいちいち定めなきゃいけないって、なんなんだよ。とも思ったし。(でもきっとどこの職場もそうなんだろうな?どうなの?)
えーと、だから。
もーちょっと社会でラクに生き(息)させてくれ!って思ってたんで、大正時代のカッコイイ先輩方を歌にしました。日本人女性で初めてパジャマパーティーに参加したとされる原口鶴子さんの日記の「寝巻會」というチャプターから歌詞をつくりました。
因みに「なんだその髪留めは」といったスタッフさんも「この子に決めさせようよ」といったスタッフさんも、今は仲良く楽しくお仕事させて頂いている相思相愛の仲です(だと私は思ってる)。
8.雨天決行2
4曲目のつづきの歌。以上。昔はこの前後に江戸時代の「お七」のお話とか、高村光太郎の言葉を引用しつつ現代の話にもっていく「おねがい」という曲とかがありました。2017年から新曲のトランプの歌に譲りました。
9. Trump, Trap, Triumph!
この曲は私の長年の友人であるマジシャンのとあるネタをヒントに、ご本人の許可とタネを頂いてミュージカル仕立てにしたマジックシーン。マジックなので…DVDにいれてしまうとタネがバレやすくなる…との懸念からお客様への映像には含まれていません。ごめんなさい。是非、劇場でいつか生で面白がって頂きたいネタ(曲)。
10.ボヘミアン・ラブ!それでイイ
大学の頃からひとり旅が好きで、国内から国外まで色々旅してきたのだが、ほぼほぼ歌詞の内容は私が遭遇したやつである。
タイで迷子になったとき感じたこと「お寺に駆けこんで」とかそのまんま書いてるし、マンモス大学で勝手に振り分けられた英語のクラスで19世紀カリフォルニア移民問題を英語でディベートするのマジ意味わからんって思ってたのもまんま書いたし。あのディベートはホント何だったんだろう。誰のためにディベートしてたんだろう。一生使うことのない単語「wetback(=米国に不法入国するメキシコ人)」とか覚えちゃったあの時間は何だったんだろう。
メロディは、タイトルから連想できるであろうあのバンドのメロディと、RENTの作者ジョナサン・ラーソンの『tick, tick...BOOM!』のボーナストラックに収録されている「Boho Days」という素朴なボヘミアン賛歌からヒントを頂戴している。
11.夢追ひ
竹久夢二さまの絵は、昔からうちにハンケチとか夢二柄の絵があったから何となく知ってて、で、その人生を調べていくうちに、あーこの人と同時代に生きてなくてよかった、生きてたら毎晩インスタ検索しまくったりグッズ買い集めてたとこだった、あぶねえ、と思うくらい惹かれるお人。
夢二さまは愛した女性がメインで4人くらいいらして、そのなかの3番目の「およう」さんとの物語を想像して書いた、芸術家の「性(さが)」の歌。
2019年版は、DawnチームとDuskチームで男女のラストの立ち位置が逆になっているので、違いを楽しむのもアリかも。
Damien Riceというアイルランドンのシンガー(あのヒョンビン氏もお好きだそうですよ!わーい!笑)のテイストを少し意識した曲。
タイトルからしてそうなのだが、歌詞は旧式のかなづかいで書いてあります。「だらうか」とか「さうして」とか。歌っちゃうと全然わかんねー。
12.Resign
タイトルの単語が先に頭に浮かんで、Resignation(辞職)について1曲作ろうかなと思ったのがきっかけ。高校の同級生にインタビューして赤裸々に語ってもらった事情を歌詞に入れさせて頂いた。
13.TKS
面白い経験をいっぱいしている小学校の同級生に「何か面白いネタもってない?」と訊いたら、バイトをしていた歌舞伎町ちかくのホテルで遭遇したエピソードを語ってくれたのでそれを歌にしました。観に来てくれたご本人は、終演後にひとこと。「注射器とガサ入れの話は入れなかったんだねwww」
14.で、ミゼラブル
どこまでほんとかはご想像にお任せしますが(←え)、きっかけとなる事があったのは確かです。そんなところにしておきますね。笑
15.雨天決行3
雨天決行3曲綴りの完結編。真実は誰にもわからないが。
このへんに、昔は「誕生日」といって、落語家の五代目古今亭志ん生さんのエピソードの歌も入れていました。2017年から登場のジュヴナイル(後述)に譲りました。
16.ジュヴナイル
この歌の構想は、signの再演が決まっていた2017年3月の3ヶ月前くらい、もとはといえばジェームズ・ディーンの何かの映画を観たことに端を発す。そこからリヴァー・フェニックスやジェフ・バックリィも加わった。そのころ不慮の事故や病で、若くして不帰の人となった友人のことも思った。
これは、どこまで言ってよいものか解らないが、この歌が歌われた2019年の夏の本番、カンパニーに不思議なことが起きた。あれもまた"sign"だったのかもしれない。
17.手紙
映画『硫黄島からの手紙』で初めて知った軍人、栗林忠道氏。彼の手紙を、ご子孫の方に連絡をとって許可をいただき、歌にした。藤倉のミュージカル作演出家デビュー作『カムイレラ』より前に書いた歌なので…書いたのに企画が後回しになって2年間眠ったあとに再び取り出された歌なので…この曲が人生で初めて作ったミュージカルナンバー。
18.トウキョウの空のした2
震災から2年と経っていなかった2013年の初春、20代最後の年。
そういう感覚。
19.Finale
↑を汲んだ、感覚。
以上。
結構いろいろ正直にだらだら書いたんで、読んでから観ても、読まないで観ても、ご自由にどうぞ。あ、ここまでもう読んで頂いたか。ありがとうございます。内容、忘れたかったら忘れて下さいね。
配信URLはこちらです。2/15(月)19:00まで購入可!視聴は15(月)23:59まで!
Dawnキャスト→https://eplus.jp/sf/detail/3373430001-P0030001
Duskキャスト→https://eplus.jp/sf/detail/3373440001-P0030001
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?