【会社訪問記】伊那食品工業
2021年12月初旬、長野県伊那市にある「伊那食品工業株式会社」を視察させていただきました。伊那食品工業は長野県民であれば馴染みのある「かんてんぱぱ」(寒天製品)の製造会社です。私は長野県で生まれ育ち、今は東京に住んでいるのですが、まさか研修として伊那市に訪れる機会があるとは思いもしませんでした。
伊那食品工業は、「年輪経営」という経営方法が注目され、全国各地から見学者が絶えないそうです(今回も、参加者の殆どが経営者でした)。塚越寛最高顧問は、著書「いい会社をつくりましょう」で、「会社の目的・価値は、永続することであり、利益も成長もそのための手段。着実な低成長を年輪のように重ねて永続することにより、会社と直接・関節的に関わる人々が幸せになる」と説いています。
この言葉を見た時に、利益を目的にしない会社って!?と衝撃を受けました。私は前職では従業員1,000名規模の会社に勤めていたのですが、会社全体としての売上目標はもちろん、部署、個人毎に目標を提示し、毎月、目標に対する進捗率を報告することが当たり前で、「目標を達成する為には」という考えで動いていたからです(会社員はこの考えが一般的だと思いますが)。
また、伊那食品工業は、社是に「いい会社をつくりましょう~ たくましく そして やさしく ~」を掲げています。伊那食品工業が考える「いい会社」は、その会社に関わる人が幸せであること。特に社員を大切にしている会社である事を本やHPを通じて知りました。
実際、伊那食品工業はどんなところなのか?社長や社員の方はどんな方々なのか?ワクワクしながら当日を迎えました。当日は伊那食品工業で毎日行われている始業前の清掃から見せていただきました。塚越社長をはじめ、社員の方々が壮大な土地を作業車や特殊な道具を使いながら黙々と掃除をしていました。みなさん爽やかな挨拶を返してくださってとても気持ちよかったです。
清掃後の朝礼では、社員の方のスピーチから始まり、ラジオ体操も毎日行なっているとのことです。自然の中で早朝に体を動かすと頭がスッキリし、とても気持ちがよかったです。
当日は、幸運なことに、塚越寛最高顧問のお話をお聞きする事ができました。
塚越最高顧問がおっしゃっていた経営者の資質が目から鱗だったので聞き逃さぬまいと必死にメモを取りました。
私は、経営者というのは頭が切れる人がなるべき役職だと思っていました。もちろんそれも一つの大事な要素だと思いますが、塚越寛最高顧問が指摘する経営者の資質はもっと人間味があり、思いやりがあって寄り添える人を「優秀」と定義していることに驚きました。
塚越寛最高顧問は、人生の目標・目的は幸せであり、それを達成する為の手段である売上や利益を目標にしてはいけない。という考えに基づき経営を行なっており、実際に、上場していない背景にはこの考えが根本にあるとのことです。考え方の基本は社員。「どうしたら社員が働きやすいか」「それをすることによって、その人が働きやすくなるか」と、社員が幸せに働いてもらうにはどうするかを最優先に考えているということを何度もおっしゃっていました。
私は特に、塚越会長の以下の言葉にはっとしました。前職では、「いかに人件費を抑えて売上を上げるか」ということを前提に仕事をしていたからです。
講演を通じて、数字はもちろん大事ですが、それ以上に社員の健康と幸せを目的とした経営方法を50年以上実践し、企業を存続させているというのは、私には想像がつかないような努力があったと思います。塚越寛最高顧問、塚越会長のお話しを直接聞くことができ、お二人ともとてもおおらかで物腰の柔らかい方でしたが、相当な覚悟と、実際に実現しているからこその自信を感じました。
私は経営者ではありませんが、従業員という立場からも、自分の幸せや健康を大事にしつつ、仕事を通じて何を実現したいのか、常に考えながら、一度しかない自分の人生を大切に生きていきたいと、強く思いました。
そして、もしも、私が経営者になるなんてことがあったら、その時にはこの記事を読み返して、大事にすべきことを再確認したいと思います。
【次回読む本】
塚越寛最高顧問が影響を受けた本「働く人の資本主義」