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"ありがとう"からはじまるフリーランスの働き方「大切なのは、売上よりも信頼」
「会えるのがいつも楽しみなんです!」
「Maiさんが来てくれたときの安心感…」
「一緒に仕事すると、疲労感がちがう」
アパレルフリーランスになってから、こんな言葉をかけてもらうことが増えた。
私は出勤した瞬間に「今日も来てくれてありがとうございます!」 という言葉を受け取り、
それに対して、「こちらこそ、ご依頼ありがとうございます。今日もよろしくお願いします!」 と返す。
このやりとりが、私の1日をスタートさせる。
当たり前ではないからこそ、生まれる感謝
会社員時代、こうしたやりとりはなかった。
同じ場所で働いていれば、出勤するのは当たり前。
仕事をするのも当たり前。「明日もきっとここにいる」と思いながら、業務が始まる。
でも今の私は違う。
フリーランスとして働く私は、仕事の時間が限られている。どんなに働きたくても、求められなければ叶わない。相手からの評価がなければ次の仕事もない。だからこそ、働けることへの感謝が生まれる。
「今日も来てくれてありがとう」「ほんと助かったよ」
そんな言葉をもらえるこの働き方に、とても魅力を感じている。
その日を最大限にやり切る
私にとって働くことが当たり前でなくなってからは、常にその日をどうすれば最大限にやり切れるか、そのことだけを念頭に入れている。
売上についても同じで、「いつも安定して売ってくれて本当に助かる」と、
ベテランの方からも「接客で意識してることを知りたい」そう聞かれることもある。
でも、それは過去の私も同じようにしていたこと。
出勤することも、売上を立てることも、私にとっては当たり前だった。
そして、周りの人からも当然のようにそうであることを求められた。
「もっとやれるでしょ?」と言われ続けてきた会社員時代
会社員時代と今、自分は変わっていないはずなのに周りの評価は180度変わった。過去にも、誰よりも売上を立てても、
「まだやれるでしょ?次の目標はここまでいけるよね?」
うまくいかないときは、「なぜできないの?もっとやれるはず」
どんな状況でも返ってくるのは「もっとやれる」という言葉。
いつしか、「私はどこまでやればいいのだろう」と考えるようになった。
どんなに頑張っても報われない、そう感じ、静かに心が疲弊していった。
販売員から遠ざかった理由
それが、私がしばらく販売の仕事から離れた理由だった。
「あなたはもっとやれる」という言葉はいつしかプレッシャーになり、私を苦しめていた。
マネジメントの視点では、 「より高い目標を提示する」 ことは、会社の存続や、部下の成長を促すためにも必要なことである。
でも、私にとって大切だったのは、目の前のお客様に喜んでもらうこと。
ただそれだけでよかった。
ただそれだけが、やりがいだった。
「もっとやれる」というプレッシャーは、時に仕事に対する喜びを奪ってしまう。
でも、あの時「まだやれる」「あなたはできる」そう言われ続けたおかげで、私は仕事について、より深く考えるようになった。
自分に対して満足せず、常に改善し、成長するという精神はその時に培われたものだ。
今フリーランスとして仕事が途切れず続いているのも、そのスピリッツがあるからこそ。
アパレルフリーランスになって複数の店舗で働くことは、適応力を求められる。そんな時も試行錯誤して、接客と向き合った過去が今となっては私を救ってくれている。
どんな経験も決して無駄にはならないのだと、そう、つくづく思う。
フリーランスになって気づいた本当の価値
私の仕事は、ただ数字を積み上げることではない。
お客様の「この服と出会えてよかった」という笑顔や、「あなたの接客が心地よかった」という言葉こそが、本当の価値だと実感できるようになった。
今でも自分に問いかけることはある。
「もっとやれる?」
でも、その答えを決めるのは、もう私自身なのだ。
「好き」だからこそ、生まれる信頼とやりがい
わたしのモチベーションは、今では揺るぎないものになった。
それは、「今日もありがとう」――その言葉が、わたしを支えているから。
フリーランスになった今、わたしのクライアントは2つになった。
ひとつは目の前のお客様、もうひとつは一緒に働く企業の方々。
どちらからの信頼も、次の仕事につながる大切なものである。
新たな出会いをひとつずつ積み重ね、その信頼を育てていく。それこそが、わたしの働き方となった。
どんなに頑張っても報われなかった時期があった。でも、あの経験があったからこそ、今のわたしがいる。あの頃の自分に伝えたい。「大丈夫、その先に道はある」と。
そしてこれからも――わたしはこの道を歩き続けていく。