「あの方」=烏丸蓮耶=叶才三?
※当記事をお読みいただくにあたっては、『名探偵コナン』の「二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件」(原作23巻、アニメ174話)の内容を把握していることが前提です。一応、記事内で登場人物の概要にも触れるつもりですが、どんなエピソードか忘れてしまったという方は先に漫画もしくはアニメをご覧ください。
烏丸蓮耶の年齢
『名探偵コナン』最大の謎は、黒の組織の「あの方」は誰なのかということであったが、数年前に作中にて結論が出た。烏丸蓮耶こそが「あの方」だと。もっとも、烏丸蓮耶その人が一体誰なんだという状況だから、何の結論にもなっていないのだが。
され、烏丸蓮耶とは誰なのだろうか。原作30巻から烏丸の年齢についての情報をまとめてみる。
・約半世紀前に99歳で謎の死を遂げたとされる
・40年前(黄昏の館での惨劇の際)には100歳をゆうに超えていた
生きていたり死んでいたり、実態が雲をつかむようで判然としないが、全てが謎で包まれた烏丸が仮に現在も存命だとすると半世紀前(50年前)は99歳、40年前は109歳、そして現在は149歳となる。
では20年前は幾つか?129歳である。約130歳だ。
第二の男
ここでもう一人、謎に包まれた人物にご登場いただく。
叶才三
「二十年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件」にて登場した20年前に“影の計画師”と称された怪盗であり、20年前のとある事件によって共犯者に殺害されたとされる男である。
結局のところ生死が確定しなかったこの叶才三というあまりにも謎めいた人物の再登場を私は密かに望み続けていたが、現在に至るまで果たされることはなかった。
ところが、もしかすると叶才三は再登場するどころか、まさかの形でコナンや我々の前に姿を現す可能性があるのではないか。
つまり「あの方」=烏丸蓮耶=叶才三ではないかというのが私の仮説だ。
その名すらトリックの一部だった「叶才三」という名前を、作中のように90度回転させるのではなく分解してみよう。
「叶才三」 ⇒ 「口・十・才・三」
ここで「口」を数字の「0」とすると
「0・十・才・三」
これを更に並び替えると
「十三0才」 ⇒ 「130才」
となりえるのだ。存命なら20年前の時点で約130歳だった烏丸蓮耶に合致してくる。
叶才三は生きていた
もちろん、これだけでは何の証拠にもならないし、かといって他に叶才三=烏丸蓮耶という証拠もない。
ただし、叶才三が仲間割れで狙撃された後も生き延びていたのではないかと示唆する物証ならある。
叶が娘を抱きかかえた写真が入ったロケットである。叶の唯一の遺品として現在は娘が所持しているそれは、肝心の叶才三の顔の鼻から頭の範囲にかけて丸い穴が空いてしまっており、肝心の彼の顔が判らない。
しかし、この穴は何者かが意図的に空けたものではないことは明らかだ。写真では叶の髪型も顎の輪郭も分かるし、口元には笑みを浮かべている。仮に叶の顔を分からなくするために意図的に穴を空けるとすれば、顔の全てを消してしまうだろう。
つまりこの穴は銃弾によるものだと推測できるのだ。仲間に撃たれたときに上着の内ポケットに入れいていたロケットに銃弾が命中して写真に穴が空いたことを意味している。これはロケットが間一髪で叶の急所(心臓)を守り、叶が生き延びていたことを示唆しているのではないだろうか。
“影の計画師”叶才三の実像
烏丸蓮耶であり叶才三を名乗ったその男は、APTX4869の基となった薬を使用することで幾度も若返りを繰り返して人生を何周もしていたのだろう。そして生誕130年目を迎えて20年前、彼は何を思ってか怪盗業をはじめたのかもしれない。130歳という実年齢をもとに叶才三という偽名を作って。
犯行動機は皆目明かされていない。遺品とされるロケットの中の写真に写る娘は心なしか不健康に見えなくもないから娘の病気の治療にかかる資金作りだったのかもしれない。逆にそのような深刻な動機などはなく、単に快楽犯罪だったのかもしれない。
全てが暗転した20年前の事件に至るまで、一連の盗みや強盗といった犯罪のなかで叶才三の行動には幾つかルールがあった。2つ代表例を挙げるなら
・犯行ごとに共犯者を変える
・犯行にあたっては誰の身体にも危害は加えない
仮にも我が子の命がかかっているのなら、誰も傷つけないなどというルールを課すだろうか。たとえ他人の子の身命を顧みずとも自分の子を優先するのではないか。叶自身の視点では犯罪はあくまで高度な知的ゲームであることにより財産面以外での迷惑はかけないという重い縛りを課したのではないだろうか。ちなみに事案ごとに共犯者を変える理由は警察の捜査をかく乱する目的以外に自分の見た目と実年齢が一致しないことが露見しないようにするためだったのかもしれない。
しかし20年前の銀行強盗事件が叶才三の運命をも大きく狂わせることとなる。具体的にどのような事案だったのかは漫画でもアニメでも描写は断片的であり詳細は明かされていないが、判明している情報をまとめると以下のとおりである。
20年前の10月9日のおそらく昼以降、叶才三を主犯とする男4人からなるグループが銀行に押し入って4億円もの現金を奪って逃走した。
おそらく4億円を目の前にしていざ逃走と言う段階だったのだろう。突如、銀行内に防犯ベルが鳴り響いた。叶らの目を盗んで誰かが防犯ブザーを押したのだ。それに驚いてか怒ってか、犯人の一人が拳銃を乱射しはじめた。そして、放たれた銃弾の一つが銀行員に当たってしまった。
若くて美しい女性銀行員だった。何の罪もない彼女はまだ21歳だった。彼女が身体のどこを撃たれたのかは不明である。明らかなのは彼女が事件のその日の夜までに死亡したということだ。実際には現場の銀行でほぼ即死状態だった可能性が高い。だとすると頭部のそれも脳幹、あるいは心臓に銃弾が命中してしまったのだろう。
こうして誰も傷つけないという叶才三のルールは最悪の形で崩壊した。叶と3人の共犯者たちは警察の追手を逃れてどこかの海岸線にたどり着いたものの、予期せぬ悲劇に海千山千の叶は動転してしまい、警察へ自首すると主張したのだろう。そしてそれを良しとしない共犯者3名は叶の抹殺を決意して、銃弾を撃ち込まれた叶の身体は海原への落ちていった・・・。
26歳くらいの男性
以下はその後の叶才三の推論である。
ロケットが銃弾から急所を守ったおかげで辛くも即死は免れた叶才三だったが、他の傷は命にかかわる深刻さだったに違いない。
叶は思ったのではないか。やっぱりまだ死にたくない、と。そして一か八か所持していた薬を服用し、結果は吉と出たのではないか。
しかし叶才三は姿をくらました。警察へも名乗り出ず、娘のもとへも姿を見せない。誤って殺めてしまった女性銀行員の遺族の前に現れるようなこともなかった。
叶は出るに出られない状況だったのではないか。つまり飲んだ薬は命を救ったものの、若返りどころかコナンや灰原同様に6歳から7歳程度の子供の身体になってしまったのだ。
これでは叶才三としての過去を捨てて生きるしかない。そして何があったのかは分からないが、20年の間に黒の組織を形成して何らかの陰謀を画策するに至っているのではないだろうか。
誰も傷つけない叶才三と冷酷非道で人の命を何とも思わない黒の組織のトプとではイメージが合致しないが、常人よりも遥かに長い人生のなかではむしろ、誰も傷つけないというポリシーが特異な期間だったのではないか。謎の薬を繰り返し使って生きてきたのだとすれば、そんな御仁が何の手も汚さずに生きて来れたとは思えない。何らかの壮絶な過去があるはずだ。
・・・この推論に基づけば、烏丸蓮耶であり叶才三である「あの方」の外見および社会的な年齢は26歳+αといったところだろう。
「あの方」=烏丸蓮耶=叶才三だと主張したところで、結局のところ正体が掴めない状況に変わりはない。ところが、彼は実は主要登場人物としてとっくの昔に登場しているのではないか・・・?
これは予想というよりもはや予感や勘にすぎない。しかし『名探偵コナン』であればこれくらいのアッと驚く秘密を用意していても不思議ではない。
私は一時期、白鳥警部に疑いの目を向けたが、現在は候補外である。白鳥は28歳という設定であり条件には合致するし、なによりも何か大きな秘密を隠していそうな雰囲気を感じた。しかし妹がいるという事実が判明した時点で外した。
子供の身体になった叶のその後を想像するに、記憶喪失の子供として孤児院に収容され、やがて子供を授かれなかった夫婦の養子として迎えられたというのが一番可能性が高い。白鳥の場合はきょうだいといっても妹であり、実子がいなかった夫婦に迎えられたものの、思いもよらず義理の両親のもとへコウノトリが降り立ったという可能性も無きにしも非ずだが、妹は白鳥家から晴月家へ嫁いでいる。もしも妹が両親唯一の実子であれば白鳥家の家格からしても婿養子を迎えるのが常道であろう。
他にも26歳の高木刑事や29歳の安室警部も年齢だけみれば候補になりえるが、現時点では年齢以外には全く疑う要素が見いだせない。そもそも作品の性質上、警察関係者ばかり名前が出てくるが、20年前の事件で殺してしまった女性の父親も警察官である。そのような人物と同じ世界に就職するのはやや考えづらくもある。
現時点ではこれ以上の考察はできてないが、今後も検証を続けていく。
7つの子
最後に一つだけ余談を。
「あの方」の携帯電話の着信メロディは「七つの子のメロディ」だと判明している。これが作中でのカミングアウトの以前から烏丸蓮耶が「あの方」なのではないかと散々議論された理由だが、この着信音は叶才三が「あの方」である可能性も示している。
この童謡の歌詞は多くの方がご存じだと思うが
~カラスなぜ鳴くの? カラスは山にかわいい7つの子があるからよ~
というものである。
さて、シンフォニー号の事件で登場した叶才三の娘こと磯貝渚は27歳とのことだった。20年前の渚は7歳である。
もし「7つの子」が「7歳の子」という意味なのだとすれば・・・真相や如何に。