M&Aにおける独占交渉権とは!?
M&Aにおける独占交渉権についてを解説!
M&Aにおける独占交渉権とは、買い手が売り手との交渉を独占できる権利で、独占交渉中、売り手は他の買い手候補との交渉は禁止されます。
まさに読んで字の如くではありますが、独占交渉権ついては、M&A特有の論点もあり、売り手、買い手どちらにも深く理解いただきたい部分です。
今回は、M&Aにおける独占交渉権についてを深堀して解説して行きます。
✅M&Aにおける独占交渉権とは?
冒頭記載したとおり、M&Aにおける独占交渉権とは、買い手が売り手との交渉を独占できる権利で、独占交渉中、売り手は他の買い手候補との交渉は禁止されます。
売り手が買い手へ独占交渉権を付与したことにより、相互に集中し本腰を入れた交渉が開始され、いよいよM&A交渉は佳境に入ってきます。
※M&Aマッチングサイトを利用している場合、独占交渉中にステータスを変更すると他の買い手からのマッチング(アプローチ)が不可となる仕様になっているので、覚えておきましょう。
✅独占交渉権と優先交渉権との違い
優先交渉権とは、複数の買い手候補が存在する場合に、他の買い手候補よりも優先してM&Aの交渉を行うことができる権利のことをいいます。
あくまで「優先」であり「独占」ではありません。
売り手が複数先に優先交渉権を与えてしまえば、優先交渉権のない買い手候補よりは優先的な交渉ができますが、優先交渉権が与えられた買い手候補同士の中での優劣はありません。
つまり、売り手としては、優良な買い手候補を絞り込んだ形となりますが、買い手としては、まだまだ予断を許さない交渉が続くわけです。
しかし、スモールM&Aにおいては、優先交渉権は、めったに活用されることはありません。
交渉が具体的に進展すれば、売り手は買い手へ独占交渉権を付与し、条件調整が順調に進めばそのまま成約に至るのが通例となっています。
✅独占交渉権の法的拘束力
独占交渉権には、法的拘束力を持たせることが一般的です。
買い手としては、他の買い手候補と接触されることは避けたいと考えるので当然とも言えます。
スモールM&A上は、独占交渉期間が短いため滅多に行われませんが、買い手が法的拘束力を強化するため、売り手が独占交渉を反故にした場合、一定の違約金を買い手に支払う取り決めにする場合がありますので、注意が必要です。
✅独占交渉権の期間
独占交渉権の期間は、通常3~6か月間ですが、スモールM&A場合は、1~2か月が一般的です。
期間の根拠は、独占交渉権付与からM&A成約までの工程に要する期間を逆算して決定しています。
独占交渉権付与以降の工程については、「独占交渉中に行われるM&Aプロセス」でご説明します。
✅独占交渉権を付与するタイミング
独占交渉権を付与するタイミングは、売り手と買い手が基本合意書に署名・捺印した時に付与されます。
M&Aにおける基本合意書とは、今までの交渉における合意事項の内容を書面にした合意書の事でLOI(Letter of Intent)と呼ばれることもあります。
売り手と買い手の合意事項を整理し書面にすることで、M&Aの成約に向けて双方の認識を整えるために行われます。
M&Aアドバイザーに業務委託している場合、ここで中間報酬が発生するのが一般的です。
中間報酬については、成功報酬同様、各M&Aアドバイザーによって異なりますので、アドバイザリー契約(M&Aにおける業務委託契約)を締結する際にM&Aアドバイザーに必ず確認をして下さい。
✅独占交渉中に行われるM&Aプロセス
独占交渉中に行われる一般的なM&Aプロセスは、以下となります。
・デューデリジェンス(DD・買収監査)
デューデリジェンスとは買収監査とも呼ばれ、売り手先から提供された資料に基づいて調査を行い、その会社の実態や問題点を監査することです。
M&A界隈の人間は、略して「DD(ディーディー)」と呼んでいます。
スモールM&Aにおいては、期間は1~3週間程度です。
・最終条件の調整
デューデリジェンスの結果を受け、売り手、買い手間で最終条件の調整を行います。
基本的には基本合意書に記載された内容で調整しますが、監査結果により微調整をする必要も出て来ます。
調整期間は、スモールM&Aだと1~2週間ほどになります。
・譲渡契約書の作成、リーガルチェック及び読み合わせ
最終条件の決定後、その内容を反映した譲渡契約書を作成し、弁護士によるリーガルチェック後、両者で読み合わせを行います。
これで問題なければ後日、譲渡契約を締結し無事にM&A成約となります。
期間は1~2週間です。
前述した「独占交渉権の期間」の話しに遡りますが、上記M&Aプロセスを逆算し、独占交渉期間を決定している訳です。
✅独占交渉における買い手・売り手の注意点
独占交渉権を付与する事より、お互いに集中した交渉ができる反面、その弊害も生じます。
独占交渉における注意点を買い手側、売り手側に分けてご説明します。
・独占交渉における買い手の注意点
独占交渉状態に入り、いよいよデューデリジェンス(DD・買収監査)を実施しますが、この費用については買い手が負担します。
デューデリジェンスの結果により致命的な瑕疵があった場合、M&A交渉は破断してしまいますが、デューデリジェンスにかかった費用は戻ってきません。
(ちなみに通常、譲渡契約書のリーガルチェック費用も買い手負担となります。)
また、M&Aアドバイザーに中間報酬を支払った場合、これも返金されないのが一般的です。
さらにデューデリジェンスで問題がなかったとしても、最終条件の調整が整わない事や、譲渡契約書の条項に合意できない等の要因で、M&A交渉が破断する可能性もあります。
ここまで時間も労力も費やして進めてきたM&A交渉です。
独占交渉権を付与されたからと言って、M&Aが無事に成約するまで油断は禁物です。
・独占交渉における売り手の注意点
独占交渉権を付与したことによる売り手の最大のリスクは、他の買い手候補との交渉が禁止される事以外に他なりません。
なぜならば、独占交渉権を付与した買い手よりも好条件で交渉できる買い手が現れる可能性があるからです。
独占交渉期間が設定されているとはいえ、数ヶ月はロックされた状態となりますし、譲渡契約が締結されず期間が満了したとしても、その後、好条件で交渉できる買い手が再度現れるかどうかは分かりません。
それだけに独占交渉権の付与は、慎重に吟味しなければなりません。
売り手側としては、
基本合意書を取り交わす=譲渡契約を締結する
くらいの覚悟で独占交渉権を付与しましょう。
まとめ
以上、「M&Aにおける独占交渉権とは!?」を、解説しました。
冒頭記載した通り、独占交渉権については、M&A特有の論点もあり、よく知った上でM&A交渉に臨むようにして下さい。
また、通常のM&AとスモールM&Aでも若干、論点が異なりますので、こちらも併せて理解しておきましょう。