アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない1〜6話」を見て【全体的に地味】※原作/コミカライズのネタバレ注意。辛口です。
初めに、私は「魔導具師ダリヤはうつむかない」のweb版(小説家になろう公開中)、コミカライズ(MFブックス版・角川版)、ノベライズ既読勢です。
魔ダリ(とファン層には略されてます)シリーズのガッツリファンです。
その上で、今季アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」が一区切りついたので感想と意見を纏めようと思いました。
正直なところ辛口感想にしかなさなさそうで、こんな事をわざわざ纏めるべきか迷いました。
でも、色味も展開も表現も地味なアニメになってしまっていて、ファンとしてはガッカリと言わざるを得ない作りになっていて、流石に残り半分になってこのペースとなると…と考えると、もっとちゃんとした制作会社と脚本家にリライトして欲しいと思ってしまいます。
因みに、いわゆる『改変アニメ』では有りません。端折ってる部分はありますが、MFブックスのコミカライズ版に準拠した形になっております。
※原作からは順番が変わってますので注意。
それでは、改めて整理を兼ねて感想を述べていきます。
【本題】6話終了時点の私の率直な感想
正直に申し上げて、私はこのアニメは面白いか面白くないかで言えば面白くないです。
コミカライズ準拠のアニメな割に、全体的に表現が地味で、主人公が生業にしている「魔導具師」とはどういう物なのか、ヴォルフの所属する「魔物討伐隊」とはどういう仕事なのか、知りたい・理解したいのであればコミカライズを見た方が早い&表現もアニメより派手で分かりやすいです。
何故動くアニメの方が地味なのか……防水布の時点で嫌な予感はしていましたが、6話の妖精結晶の眼鏡の表現には愕然としました。
これが『魔力付与』だと…?
脚本家はせめてコミカライズ版を読み返して欲しい。
◆問題点①圧倒的にテンポが悪い。
アニメ6話終了時点で、コミカライズ2巻分に相当します。
巻数だけ聞くと『まぁこんなものでは?』と思うかもしれませんが、MFブックス版の魔ダリは一つ一つの絵のコマが大きく、普通の漫画本に比べたら1話1話の話は短めの作りになっています。
(見開きいっぱい使って2、3コマなんてのもザラで、それが派手な表現に繋がっているのです)
Web版原作で言えば、大体30話分(各話が文庫本1頁半〜2頁くらいです)になります。
正直、話数の使い方としてはかなり遅い方だと思います。これが『ただ遅いだけ』ならじっくり丁寧に表現してくれてるんだな、で終わるんですが、今後に繋がるはずの大事な『お仕事(魔導具に魔力付与)』部分を端折り、婚約周辺を長々とやり、謎のイヴァーノ早出しというオリジナルをぶっ込み、「ああ、この脚本家はダリヤを『ただの婚約破棄から前世の記憶で一発逆転快進撃』を書きたいのかな」って思ってしまいましたね。
原作やコミカライズファンなら分かると思うんですが、魔ダリって「婚約破棄からの逆転ざまぁ劇」でも「前世の記憶で無双して成り上がり劇」でもないんですよ。
確かに『婚約破棄』『知識チート』という要素は持っていますが、ダリヤには成り上がり根性は低く、もっと地に足ついた生き方を望みますし、何より誰かの陰に隠れて権利報酬で無難に生きる自分を辞めて、『魔導具師』が楽しいから・人に喜んで欲しいから魔導具を作る、そういう意味で「うつむかない人生」を送ろうとする物語なんです。
話は戻りますが、そういうダリヤだからこそ、婚約から婚約破棄までのただの俯かない人生の起爆剤でしかない話に3話も使ったのは冗長でしかないですし、(序盤は)端役のトビアスじゃなくて、とっととメインヒーローのヴォルフを出すべきだと思いました。その為には、アニメ化するなら最初は原作通りに婚約破棄から始まるべきだったのではと思います。
◆問題点②魔導具師の仕事を端折るorダイジェスト
私はこれが1番問題だと思っているんですけど、この話は『ダリヤの成り上がり』物語ではなく、『魔導具師ダリヤ』の物語なんです。
なので、魔導具師とはどういう仕事なのか、魔導師とはどう違うのか、その説明がアニメには圧倒的に足りないです。
ダリヤは前世日本人だった記憶を持って生まれました。ですが、それは父のカルロにすら話していません。(何故かは原作でも語られていませんが、恐らく前世はそこまで重要じゃないからです)
ダリヤとして生まれ変わった国は中世ファンタジー風の王国で、5大要素(水・風・火・土・氷)を基本動力とした魔力や魔石が流通しています。雷は存在しません。
ダリヤ達魔導具師は魔力を使って魔物素材から魔道具の形を精製し、魔石から魔力回路を組み、ドライヤーなど生活に便利な機器を作るのが魔導具師の仕事です。ちなみに、ドライヤーは風と火の魔石をつかって温風を出すという仕組みです。
パイプからドライヤー型に整形したのはカルロ。
そこからダリヤは火の魔石の火力設定を誤った為、火炎放射器を生み出してしまい、小火を起こしました。その後、カルロが火の魔石の火力を下げたり、直列回路から並列回路などに組み直します。
この様にダリヤ自身は日本の家電製品の記憶がある為、発想力だけなら父カルロよりも誰よりも上です。しかし、その発想をどう魔導具に落とし込むのかが難しい(魔物素材の魔力反発などがあるため、単純に回路を組むだけでは魔導具が完成しない)ので、そこまで知識無双感はありません。
(魔導具は魔力を使う道具なので、同じように魔力がある魔導師も魔導具を作れます。魔導師は一般的に魔力が高いので、生活用品よりも魔物討伐や国防向けの道具、つまりファンタジーの魔法の道具のような物を作ります。作中にヴォルフが使った防音魔導具は魔導師が作る魔導具です。属性剣などの魔剣もそれに当たります。
ざっくりと言えば、魔導具師→生活用品専門、魔導師→魔法具専門という感じで、魔導師は魔導具師の上位互換。かなり高い魔力がないとなれない職業です。
この世界で高い魔力持ちは殆ど貴族の血筋なので、必然的に魔導師は貴族が多くなります。一方で、魔導具師は多少の魔力が有ればなれるので、魔導師からは下に見られている節があります。)
そして、防水布の発明です。ダリヤの人生において一番の発明になりますが、スライムの魔力付与に関しては、原作でもなかなかの難しさである事は後々語られます。平面の長い反物に均一に魔力を流してスライムを定着させるというのは、並の魔導具師には難しい魔力操作です。(鉛筆で真っ直ぐに線を平行に書き連ねる感覚を想像してくれれば分かりやすいかと思います。均一でないと色むらが出来ます。色むらのある反物なんて、買いたくないですよね)
そういう魔力付与という肝心の魔導具師の仕事描写がダイジェスト気味で、魔力付与が1枚絵で終わってしまったのがすごく残念です。
なお原作では、妖精結晶の眼鏡の話の前に、他にも泡ポンプの発明などダリヤは次々と発明品を作っていくのですが、この辺はコミカライズの改変で順番が前後しているので、今回アニメで端折られるのは仕方ないとは思ってます。
◆問題点③ヴォルフの描写不足
次にヴォルフの容姿です。魔物討伐隊の割にガタイが貧弱……鍛えてるはずなのに、筋肉薄そうに見えます。てか身長も低すぎる時がある。
(因みに、容姿描写は他のキャラにも気になるところがあって、マルチェラもガタイの貧弱さを感じました。彼は運送ギルド所属のガテン系運送マンなのにヒョロイ。イヴァーノは中年っぽく中肉中背なのに寧ろ痩せ型っぽい。若者トビアスとあまり体型変わらないのが変など)
何より、ヴォルフの問題の金の目がところどころ金色じゃないのがめちゃくちゃ気になるんです。
ヴォルフの金の目は例えるなら魔眼みたいに魅了(チャーム)があるかの如く存在感があるのですが、めちゃくちゃ地味色なのが気になる。
トパーズ色じゃなくて、イエローダイアモンド色を想像してたのに……
ヴォルフの交友関係の話なんて、亡くなった母も含めてめちゃくちゃドロドロで複雑なのに、めっちゃ軽く端折られたせいで「イケメンの自慢」にしか見えないのも、もうちょっとなんとかならんかったのかって思います。
◆問題点④作画が淋しい。色がとにかく地味。
これはもう制作会社ガチャに恵まれなかったと言って良いかもしれませんね。
とにかく作画がやばい。街中を歩いてても人が居ない。静か。ガヤの声すらないのがなんとも…
そして、謎の斜め右上から常に挿す影。
そのせいで余計に色が暗い。
もう2度とうつむかないと決めた彼女が再起を決意した時にあの影も消えて、街が色鮮やかになれば、もっと分かりやすく違う人生を表現できたのに、全然彩度も明度も上がらない作画にしんどさを感じる。
せめてOPやEDみたいに明るい作画やったら良かったのに。OP/EDとの落差に風邪引きそう。
◆問題点⑤このアニメで描きたい主題or盛り上がりポイントis何?全てが中途半端。
第6話にて妖精結晶の付与がありました。まさかの秒で終わったのがびっくりでした。
問題点①〜④にも関係する話ですが、このアニメで盛り上げたいポイントってどこなんでしょうか?
トビアス含む人間関係の話?その割に対比になるはずのヴォルフの描写不足(省略)が酷く、下手すればヴォルフがただの自意識過剰マンに。
対して、6話途中でトビアスが兄のイレネオと会話が挟まれてましたけど、トビアス可哀想とか思わせたいのかな?
原作でのトビアスは序盤、婚約破棄からずっと最低行為を続けます(婚約破棄した癖にダリヤをまだダリヤと呼んだり、ダリヤとヴォルフの交友関係を疑ったり)
そんな行動があったからこそ、ダリヤからトビアスの信頼度はゼロに。未練なんかありませんでした。
しかし、そんな彼をダリヤは全く責めない。ガブリエラは街から追放を命じても良いくらいと言っても、兄弟子でかつ彼を弟子にした亡き父の名誉を守る為、大事にしないとしたのが彼女の選択でした。
そして、原作でトビアスとの和解はずっと先の話です。つまり、トビアス周辺の関係清算を中心に話を作るのは最初からこのアニメには無理があるのです。
トビアスの最低行為・エミリヤの迷惑行為を端折り、序盤のダリヤの人生転落は中途半端。
そこから出会ったヴォルフは同じく恋愛不信の似た者同士として交友スタートするが、亡き母の話はチョロっと、金の目に対する話も一言二言。そこからの狂った令嬢らの迷惑行為もあっさり終了。
彼の過去話も中途半端で、とにかくダリヤとヴォルフの人間関係が浅い。
たった3回しか会ってなくても、ヴォルフは休みを返上してまで城下に下りて苦手な人混みを抜けて会いに来るんですよ。
たった3回の逢瀬でダリヤはヴォルフを家に招き、しんどい魔力付与(魔力がほぼ空になる)を汗まみれになりながら連続で行うんですよ。
それだけの意気投合を、男女の友情を、たった3回で2人は成し遂げるんです。
なのに2人のカタルシスが中途半端で、特にヴォルフが全くただの一目惚れ、みたいな書き方になってたので残念以外の何者でもない。
では、人間関係清算じゃなく、盛り上がるポイントはタイトル通り魔導具師の話でしょうか?
もしそうだとしたら、妖精結晶の付与表現はあんな風にならなかったでしょう。
あんなBパートの一瞬で終わり、それに何かに咬まれる表現も訳がわからなくて、一緒に見てた人も「あれってどういう意味?」って真顔で聞かれました。
私はどう答えたら良いのか分かりませんでした。
一応補足しておくと、あのダリヤが咬まれる表現ですが、あれは妖精結晶に宿った妖精の最期の記憶を追体験しているというものです。コミカライズではちゃんと分かりやすく狼のような魔犬に追われる妖精達が最期噛まれて〜という表現をしてました。
妖精は魔物から身を隠す為に認識阻害を結晶に掛ける⇒その結晶を妖精結晶と呼びます。妖精結晶は大概、身を隠した妖精の最期の隠蓑だったりするので、ダリヤが見たみたいに最期の瞬間を記憶して結晶化する事があります。
妖精が「虹の向こうに連れてってくれるなら」と言うのは、その最期の記憶から救い出してくれるならという事です。これは私の推測ですが、結晶から認識阻害の魔力を吸い出し別の物に付与することで、妖精の辛い最期の記憶もまた昇華されるという事なのかなと思います。
また、コミカライズ版では妖精を虹の向こうへ送り出したあと、彼女の背後に亡くなったはずのカルロの気配を感じます。妖精が願いを叶えてくれたダリヤにお礼の為か、或いは気まぐれか、幻惑のカルロに思わず振り向きたくなるダリヤを引き留めたのは思い出の中のカルロの「余所見をしない!手元に集中!」という魔導具師の師匠としての言葉でした。
魔力付与は繊細で、本当に終わったと思えるまで付与に集中しないと失敗します。
ダリヤの目的は妖精を虹の向こうに送り届ける事ではなく、妖精が残した認識阻害の魔力を眼鏡に付与する事です。もし、あそこでカルロの方を見ていたら、途中で集中を切らして失敗していたかも……
幻でも大好きな父の顔がまた見たいという娘の思いと亡き師匠の教えの元、歩みを止めない魔導具師の弟子という葛藤を乗り越え、作り上げたのが妖精結晶の眼鏡です。
ヴォルフにメガネを渡すときに「父のイメージが入っちゃって」と言ったのはこの為です。
父を思って付与したので、認識阻害のイメージにカルロの面影が入ってしまったということ。
アニメではカルロのくだりが全カットされていたので、「父のイメージが〜」って言われても意味不明でしたね。何故端折った。
本当に、このアニメの脚本書いた人は魔導具師の魔力付与を深く掘り下げる気はないらしいです。
もう一度問います。このアニメの盛り上がりポイントってどこですか?
妖精結晶は割と大きな分岐点だったと思うんですが、コレがあんな描写で終わられてしまって、正直次のおすすめポイントどこでしょうってなってます。
魔剣?その話するの?でも、魔剣は妖精結晶よりギャグ寄りの話なんですが、それで盛り上がるの?
あとはヴォルフの討伐隊の話ですが、残りの話数的に絶対に尺足りないと思うんですが……
ランドルフ、ドリノは出ないのかなぁ…もっと話が進み良ければ面白い奴らなのに。
もし、このあと5本指靴下の話を安易にぶっ込んできたら、真面目に脚本家の人のセンスを疑いそう。
あの話、今の進行速度で行ったら絶対残り6話じゃ尺足りない。
◆総評
相変わらず、長々と感想を書いてしまいました。
ここまでお付き合いいただいた読者の皆さまには感謝申し上げます。
アニメ「魔導具師ダリヤはうつむかない」は私にとってテンポ悪い・地味表現・描写不足の残念3拍子が揃っていて、折角の原作の面白さを全く表現出来ていないと思いました。
アニメから入った人は是非、ピッコマとかで無料でMFブックス版の漫画が読めるのでそっちを読んで欲しいです。きっと世界観がよりイメージし易くなると思います。そして面白いので、気になった人は是非漫画・小説買いましょう!
因みにweb版も現在絶賛更新されていて、全部で500話を超えています。そちらは勿論無料ですので、長丁場ですが是非是非読んでみてください。
モノづくりが好きな人はきっとハマると思います。
ここまで述べた事は、一ファンによります感想及び愚痴であります。中には意見を異にする読者様もいらっしゃるでしょう。
どうか、ただ1人の戯言とご容赦くださいますようにお願いいたします。
戯言ついでに、私が魔ダリアニメの脚本を書いていたとしたら、の妄想↓
第一話:婚約破棄⇒婚約破棄までの清算(合間にトビアスとの過去をコマで挟む)⇒もう俯くのは止める(終)
第二話:トビアス再び⇒森に出かける⇒ヴォルフとの出会い⇒またねダリ⇒小型魔導コンロの権利問題発覚(終)
第三話:オルランド商会へ⇒トビアスと決裂(父カルロや兄弟子としてのトビアスの過去を挟む)⇒イヴァーノによるカルロの話⇒ロセッティ商会発足⇒女の人に言い寄られつつ、ダリを探すヴォルフ(終)
第四話:商会長ダリヤとしての初仕事(買い物)⇒買物後に街で一人昼食(父の意に沿わず婚約破棄を父が生きてたらどう思うかを考える)⇒トビアス・エミリアとの遭遇/一方的に絡まれる⇒ヴォルフとの再会⇒別の店に飲み直し⇒オタク同士の語り合い⇒魔導具店の見学の話⇒お休みなさい、良い夢を(終)
第五話:トビアスの再訪問⇒ヴォルフと『女神の右目』へ⇒ヴォルフの金の目の話⇒女神の右目店主オズヴァルド⇒色んな魔導具をコマ送り紹介⇒ヴォルフ、所用で席はずし⇒女神の右目会員証⇒オズヴァルトとカルロの昔話⇒退店⇒ヴォルフ、オズヴァルトがダリヤを口説く可能性を危惧⇒オズ、カルロに「娘さんが大きくなったら嫁にくれ」発言(終)
第六話:ヴォルフの回想⇒女神の右目からの帰り道に屋台食⇒ダリヤ、エール買い足しに⇒金の目について再び回想⇒ダリヤ、ナンパされる⇒フリージングリングについて、からの魔剣の話⇒コマ送りで武器屋へ⇒ダリヤの家で夕食⇒ダリヤの警戒心の無さについて⇒ヴォルフの交友関係について⇒友情の破綻についてコマ送り漫画⇒お互いの恋愛事情からの後、お友達でいましょう宣言⇒金の目を大嫌いというヴォルフ⇒魔女ではなく、魔導具師として少しはお役に立てるかも(終)
第七話:Aパートかけて妖精結晶をメガネに付与⇒妖精結晶の眼鏡完成⇒難しい付与の成功を祝して乾杯⇒次の日、街中を眼鏡をかけて歩くヴォルフ(途中、過去の出来事(悪魔)を挟む)⇒ダリ(ダリア)との出会いの回想⇒これは恋じゃない、でも彼女の隣にありたい⇒眼鏡の効果の報告等々をしに緑の塔へ⇒ダリヤ、魔導具師のやり甲斐・醍醐味を改めて実感(終)
こんな感じでしょうか。
妖精結晶の話は序盤の盛り上がりポイントだと思うので、Aパートしっかり使って書いて欲しかった。