「脳は否定形を理解できない」をPRに活かす
「脳は否定形を理解できない」という言葉ご存じでしょうか。
書籍や記事で多く紹介されていることなのでご存じの方もおおいかもしれません。今回の記事は「脳は否定形を理解できない」をPRに活かすにはを考えてみます。
簡単な自己紹介✋
「脳は否定形を理解できない」それはどういうことか
「ピンクのクマを想像しないでください。」
今、ピンクのクマが、頭に浮かんだのではないでしょうか。
これは、「脳は否定形を理解できない」という概念を表す典型的な例で、否定形の命令が脳にどのように作用するかを示しています。つまり、否定形を使った命令は、逆にその行為や対象を強調してしまうという現象です。
「脳は否定形を理解できない」のはなぜか
この現象の背景には、心理学的および神経科学的なメカニズムがあります。1987年に行われたウェグナーらの「シロクマ実験(※)」がこの現象を科学的に証明しました。この実験では、「シロクマのことを考えないでください」という指示が逆効果であり、被験者はシロクマのことをより考えてしまうという結果が得られました。この現象は「皮肉過程理論」と呼ばれ、脳が否定形の指示を処理する際に、その内容をまず肯定形で認識してしまうことが原因とされています。
(※)シロクマ実験
確かに、脳は否定形を理解するのに時間がかかったり、誤解が生じやすかったりする傾向があります。しかし、脳が完全に否定形を理解できないという説は、どうやら誤解があるようです。
1. 認知心理学における研究
認知心理学の研究では、否定形の処理には、肯定形の処理よりも多くの認知資源が必要であることが示されています。
例: 「猫を見ないでください」と言われると、「猫」という概念を一度思い浮かべてから、「見る」という行為を抑制する必要が生じます。一方、「猫を見てください」と言われる場合は、「猫」という概念を思い浮かべるだけで済みます。
この処理の複雑さゆえ、否定形は誤解を受けやすくなります。例えば、「ピンクの象のことを考えないでください」と言われると、多くの人が一瞬「ピンクの象」を想像してしまうでしょう。
2. 脳科学における研究
脳科学研究においても、否定形の処理には前頭前皮野という脳領域が大きく関与することが分かっています。前頭前皮野は、計画、抑制、注意などの高次認知機能を司る領域です。
fMRI研究: 否定文を処理する際、前頭前皮野の活動が活発になることが観察されています。
脳損傷研究: 前頭前皮野に損傷を受けた人は、否定文の意味理解に困難さを示すことが報告されています。
これらの研究結果から、脳は否定形を理解するために、前頭前皮野という高度な脳領域を働かせていることが分かります。
3. 否定形理解の個人差
否定形理解の能力には個人差があることもわかっています。
子供: 幼児は大人よりも否定形を理解するのが苦手です。これは、前頭前皮野の発達が未熟だからと考えられています。
文化: 文化によって、否定形の使用頻度や理解度が異なる場合があります。
4. 脳は否定形を「二重否定」として処理
脳は否定形を「二重否定」として処理する可能性があります。
例: 「私は行かない」という文は、「私は行く」という文を否定していることになります。
脳: 脳はまず肯定文である「私は行く」を処理し、その後、否定情報を追加処理することで、「私は行かない」という文の意味を理解します。(私は行くことをしないという順番での理解になります。
この二重否定処理が、否定形理解の複雑さや誤解を生みやすい一因と考えられています。
「脳は否定形を理解できない」をPRに活かすには?
では、この「皮肉過程理論」をPRにどのように活用できるでしょうか?
否定形の使用を避ける
脳が否定形を理解できないのであれば、やはり広告やPRメッセージにおいて、「○○しないでください」といった否定形のメッセージは避ける!
例えば、「遅刻しないでください」というメッセージよりも「時間通りにお越しください」という肯定的な表現の方が効果的です。
ポジティブなメッセージの強調
製品やサービスのメリットを伝える際にも、ポジティブな表現を心がける。例えば「壊れにくい」よりも「頑丈で長持ちする」といった肯定的な言葉を使うことで、受け手の脳にポジティブなイメージを強く刻みます。
心理的な反発で心を動かす
「押すなよ」「あけないで」「みないで」と言われると、つい逆のことをしたくなるのが人間です。このように、逆張りを誘う否定的訴求が効果を発揮することがあります。人は制限されることを嫌う性質があり、「押すなよ」と言われると、「押してはいけないのか、ならば押してみたい」という心理的な反発が生まれます。
また、人間の好奇心は非常に強く、「あけないで」や「みないで」といった禁止表現は未知への好奇心を刺激します。「何が隠されているのだろう?」「どんな秘密があるのだろう?」という気持ちが湧き、さらに見てみたくなるのです。
全段で話した「脳が否定形を理解できない」ことから、禁止表現を聞くと、脳の前頭前皮質という意思決定や抑制に関わる領域が活性化されることもわかっていて、このような脳の反応が、逆に人の行動を引き起こすのです。
逆張りを利用する事で誤解を生まない、大衆に不快感を与えないないは絶対条件としてあるうえで、否定や逆張りを利用したPR訴求は、人間の脳の構造的にも効果があると言えるのではないでしょうか。
例えば、体験型アトラクションで「絶対に、押さないで」というフレーズを使った場合、押しに行きたくなっちゃいますよね。
まとめ
今回は「脳は否定形を理解できない」というフレーズについて、その科学的根拠とPRへの応用について解説しました。
脳の特性を理解し、否定形の使い方に注意することで、効果的なPRメッセージを作成することができます。ポジティブな表現を中心に据えつつ、逆張りの心理をうまく活用することで、より強力な訴求力を持つPRに活かせるかもしれません。
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