妄想とは

妄想とは
定義
一般的に患者の教育的、文化的、社会的背景に一致しない誤ったゆるぎない信念や観念のこと

妄想と真想の差、相違点
妄想では明らかな反証があっても確信が保持されることだが、その区別は患者が主体的に行うものではなく、外部のものが妄想的か真の信念であるかを判断される
→その内容がありえないことであることに対する患者の判断が誤っているとされる場合、その確信は”妄想”とされる

DSM-5による定義
強固に維持される誤った信念
不正確な推論に基づく
証拠や反証に関わらず維持される
その人の文化的背景に反している

WHOとしての定義
”現実とも、また患者の背景や文化が有する社会的に共有された信念とも一致しない、誤った訂正不能な確信ないし判断”

一次妄想(真正妄想)
患者の生活史、パーソナリティから本質的に了解可能
妄想気分、妄想着想、妄想知覚

二次妄想(妄想様観念)
心理学的に了解可能であり、病的および他の精神状態、たとえば感情障害や猜疑心から生じる

一次妄想
妄想気分
何かが起きているというただならぬ気配を感じ、それに巻き込まれていると感じるが明確にわからない
外的事象に対する漠然とした意味づけ(自己関係付け経口)が生じてはいるが、特定の意味づけはされていない
統合失調症の急性期の最初の症状であることが多い
自己関係付けに特定の意味が伴うと妄想知覚が形成される
統合失調症の前駆期における緊迫した気分はそれを外界の事象に関連付ける傾向が生じやすい点が異なる

妄想知覚
合理的にも感情的にも了解可能な動機なしに真の知覚に異常な意味が付与されるもの
(例えば:自宅前に車が止まっていたら「自分を狙っている組織があり見張られている」と考えるもの)
付与される意味はほとんどは被害的自己関連付けだが、あらゆる了解可能な意味の背後に無人称的な他者(例えば:”組織”など)が出現するのが特徴
統合失調症に必ず認められる徴候ではなく、器質性、中毒性の病態でも出現しうる
妄想知覚は二分節性である
→知覚された対象に対する了解可能な意味解釈までからなるにいたる第一分節(例えば:自宅の前に車が止まっている)
 了解可能なあらゆる意味解釈の背後で始まる合理的にも勘定的にも了解可能な意味付けである第二分節(例えば:自分を狙っている組織がある)

妄想着想
着想が突然に生じて直ちに確信される
内容は自己に関する(心気、血統、召命など)もの、他者に関する(被害、嫉妬など)もの、ものに対する(発明など)ものなどさまざま
着想はきっかけなく生じることもあれば、何かを見た刺激となって生じることもある(例えば:警察を見て”自分は指名手配されている”と着想)
妄想知覚との区別は知覚に”異常な意味づけがされない”こと
統合失調症の前駆期にみられる自生思考は内容が不特定、多岐にわたり妄想的確信を伴わないため区別される

二次妄想
患者の現在の状況(他の精神病症状、気分状態、生活史、帰属する集団、パーソナリティなど)に由来するものとして発生的了解が可能な妄想
統合失調を含むあらゆる精神病性障害、重度うつ病、躁病にみられる
不安や不信といった特定の気分変調に基づく解釈が妄想化するものは妄想反応とよばれる(例えば:職場での失敗を思い悩む人が”同僚から避けられている”と被害妄想をする)
妄想反応はその内容が基本的に了解可能であるため妄想知覚と区別される
妄想反応は不安などに基づく妄想的誤解釈として生じることがあり、その場合妄想知覚との区別が難しくなる

妄想の内容
被害妄想
自己あるいは身近な人に対する他者の悪意が感じられるという被害的内容は妄想内容として最もよく見られる
対象はあいまいなこともあれば、特定ないし、不特定の人ないし、集団のこともある
注察妄想、追跡妄想、被毒妄想は講義の被害妄想に含められる
一次、二次妄想としても生じ、統合失調症を含むあらゆる精神病性障害のほか、重度うつ病エピソード、躁病エピソードにも見られる

関係妄想
周囲の人の言動、出来事、TVやインターネット上の言葉などを自分に関するものと確信する妄想
異常な意味づけがされ妄想知覚となることもある
内容はあてつけや中傷など被害的なものが多い(被害関係妄想)
対照的に関係念慮はその場限りのものであり、妄想的確信には至らない

誇大妄想
肥大した自己評価を内容とする妄想の総称
内容によって、血統妄想、宗教妄想、発明妄想などと呼ばれる
一時的な誇大妄想は妄想着想として統合失調症に生じることが多い
二次的な誇大妄想は気分に一致した妄想として躁病エピソードの誇大感から生じるほか、統合失調症では幻声や被害妄想に基づいて生じる

微小妄想
自己評価の低下を内容とする妄想の総称
罪業妄想や貧困妄想、心気妄想など
罪業妄想:社会規範や倫理に反したという妄想的確信
     二次的なものとしては被害妄想から生じることもあれば、統合失調症では被害的な内容の幻聴に基づいた自己非難、あるいは加害妄想から生じることもある
貧困妄想:事実に反して経済的に困窮しているという妄想的確信
心気妄想:重大ないし、不治の病気にかかてちるという妄想的確信
虚無妄想:否定妄想とも言う
     自分の心、からだ、あるいは周りの世界の存在を否定するもの

身体妄想
自己の身体の外見や機能を主題とする妄想
心気妄想、醜形妄想、自己臭妄想など
醜形妄想:自分自身の身体部位の形状の醜悪さ、異形性に関する妄想的確信
自己臭妄想:自分自身から発する不快なにおいのことを他人が言動でほのめかし、他人が自分を避けるという関係妄想および忌避妄想からなる

妄想性人物誤認
人物誤認は妄想的確信を伴うことが多い
カプグラ症候群:よく知っている人がうりふたつの別人に取って代わられると思い込むこと
フレゴリ症候群:身の回りにいる種々の人は実は同一人物が変装して姿を変えたものと思い込むこと
相互変身妄想:周囲の人々が相互に入れ替わると思い込むこと
自己分身症候群:自分そっくりの分身がいると思い込むこと


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