270度
今度は新幹線に乗っている。
びゅんびゅん流れていく景色をみているのが楽しい。いま鳥の大群が飛んでいるのがみえた。
わたしは新幹線が好きだ。
飛行機も好きだ。
とはいえ、それと関連した所で働きたいかというと別にそうではない。
新幹線が好きなのは、駅が好き、普段と違う場所、ちょっとした非日常が好きだからだと思っている。
新幹線を運転するのに憧れはないし、整備がしたいとかもない。多分駅構内のコンビニなんかで働いたとして、毎日ずっと新幹線が行き来するのをみていたとする。そうしたら私はきっと駅や新幹線をそこまで好きではなくなるだろう。
飛行機に関しても同じだと考えている。
飛行機に乗っているのが好きだ。離陸の時飛び立つ力を溜めている時の音、普段みられないような雲の上からの眺め、あのスピードにもかかわらず飛行機を傾くことなくうまく地上に降り立たせる操縦士の技術、そもそも飛行機という乗り物の形自体好きだ。
ただ、私にとってはそれだけなのである。
操縦したいとはならないし、CAになりたいとも思わない。保安検査場でお客さんと接したいかというとそうではない。
だからな、好きだからそれに関わる仕事がしたいかはどうかは、ほんと全く別物だよな。
自由による不自由を今かなり味わっている。
私は多分いま自由だ。
もう誰がみても若い、というわけではないけど、まあまだ若いほうではあって選択肢がそれなりに多いんだと思う。
例えば結婚しますかしませんかとか、こどもはほしいですかほしくありませんかとか、車は?家は?とか、仕事だけでなくこれから色々決めていける位置にいる。
それは幸せなようで、360度……ではもうないな。270度くらいだろうか。270度くらいに広がっている道のどの方向へ進むべきかわからない人間にとっては、悩ましい状況だ。
これ情報社会の影響、あるよな。
ネットがなかった時代はある程度将来が決まっていたはずだ。
それはやりたいことが明確で目標がある人にとってはただの障害にしかならず最悪だが反面、私のように流されて生きて、目標ややりたいことが少ない人間にとっては楽な時代だったのではないかと思う。
選択肢がないほうがいいだなんて、悲しいよな。自分でもそう思う。
何かをみつけたい。