【人生ノート 276ページ】まず三十歳前後になるまでは、一切は修業であると覚悟して
真の力
いろんな事をやってみねば、いろんなことは分かりません。この地上にはピンからキリまで、極美から極醜まで、それぞれの物事が存在しています。それですから、いやしくも、この地上で大偉業をなさんとするものは、若い間にできる限り諸種の体験を経ておかねばなりませぬ。
ところが、若い間は、とかく、生意気に走りやすく、少しく何か仕事でもでき出すと、もう、一人前になったようなつもりで、すぐに他人を下に見おろしたがり、真の力をたくわえることを怠るものです。誰でも自分の思っていること、行っていることは正しいと、つい、知らずしらずの間に思い込みがちのもので、虚心坦懐どんな人の言をでも、素直に受けいれるということがなかなかできにくいのです。
まず、どんなに利(き)れる人でも普通三十歳に達するまでは、とうてい「世の中」は分かりっこはないといってよろしいと思います。ですから、まず三十歳前後になるまでは、一切は修業であると覚悟して、小さいことにも一々内省して、霊を磨く修行とするように心掛けねばなりません。
(大正一四、一二、八)
『信仰雑話』 出口日出麿著
#信仰 #哲学 #人生 #学び #エッセイ #教育