臨機応変の機転
人の気持ちをよく見ぬき、これをこわさぬように微細の注意を払わねばならぬ。
人間の悲憤歓喜は、決して、これという法則的な事象によるものではなくして、まったく主観的な各人、各処、各時独特なものであるから、臨機応変に処してゆく機転がなくてはならぬ。少しのことを気にして、ひとりで腹をたてたり、疑ったり恨んだりしがちなものであるから、よくよくお互いに気をつけ合わねばならぬ。特に商人などは、お客に不快な念をあたえぬように気をつけることが最も肝要である。
「あいつ、自分をバカにしとる」と直ぐ悪い方に考えがちなものである。女などは、どうしても気が繊細であるから、ちょっとほかの話をしていても、すぐに「自分のことをいってるナ」と悪くとりがちなものであるから、よほど気をつけねばならぬ。
世の中につれてわれわれは、実際、気が小さくひねくれているから困ったものである。
『信仰覚書』 出口日出麿著