クリスマスに向けたケーキ研究
久し振りにケーキを作った。
作ろうと思ったキッカケは、某企業の広報誌に記載されていたレシピだ。
『ヨーグルトスフレケーキ』
おうちでクリスマスを楽しもう! という、巣ごもり需要が高まる現在にピッタリな企画内で提案された、さっぱりでヘルシーなケーキ。
そのレシピに、私の目は奪われた。
一人分(1/6量)あたり135カロリー。腰回り腹回り、背中にもついた脂肪が気になる人には有り難い数字だ。ついでに、カロリーだの体重だのの増加などを気にしてスイーツ食べられないよぅ(ぴえん)な人にも有り難い。
別に、十二月二十五日にはケーキを食べないと死んでしまう病を患っているわけではない。
クリスマスを筆頭に、誕生日などの祝い事で必ずケーキを用意していたのは学生時代までだった。社会人になってからは食べたり食べなかったり。ここ数年は専ら「酒と旨い肴があれば良い」
なので、今年もケーキを用意するつもりは皆目無かった。
けれど、まあ偶には作って食べても良いんじゃない? と思ったのだ。
昔は手作り至上主義で頻繁に作ってたなぁと、懐古心が芽生えた──というのもある。
「本番のケーキで失敗したくない」
「見た目は兎も角、美味しくなきゃヤダ」
そう思った私は、取り敢えず一度は練習することに決めた。
何故なら、ヨーグルトを使用したお菓子は初めてだったからである。ヨーグルト入りのパンは経験があるけれど、お菓子、それもケーキは未体験。
ヘルシーケーキ製菓処女の不安は余りにも大きい。
レシピを読む。
プレーンヨーグルト300グラム、それを約半分量になるまで水抜きをする。卵に砂糖、牛乳、薄力粉、トッピングにホイップクリーム、粉糖、お好みのフルーツ……ははぁ、なるほどね。
材料のうち、家にあるのは卵と砂糖(※きび砂糖)だけだった。ケーキを作る前に買い物をする必要があることを知り、心が挫ける。面倒臭い。
しかし序盤も序盤、ハンドミキサーを握る前に「やーめっぴ」するわけにはいかない。買い物に行こう。メモ帳に必要な物を書き出していく。
>豆乳ヨーグルト
>低脂肪牛乳
「薄力粉……は、てんぷら粉を代用すれば良いか。トッピングは肥えるから全部除外。なーんだ、二つだけか。余裕だな」
豆乳ヨーグルトとプレーンヨーグルトは別物だし、普通の牛乳を購入するべきでは? と思われるかもしれない。が、私は身体中についた脂肪も気になるがコレステロール値も気になるので、その辺も抑え目にしていきたいのである。あと単純に、豆乳ヨーグルトは普通のヨーグルトより美味しい。
てんぷら粉での代用は完全なる怠慢です。
プレーンヨーグルトを使わなかった代償か、レシピでは『水切りの所要時間:約一時間』だったのに、実際には約一日半かかった。
豆乳ヨーグルト300グラム、なかなか半分量にならない。ぴえん。
しかし、150グラムにまで萎むと、緩い絹豆腐みたいになって面白い。そして普通に美味しい。ついうっかり醤油を垂らして食べたくなる程度には美味だった。
一日半の水切りを終えて、いざケーキを作ろうぞ! とレシピを読み直したところで問題が発生する。
『160度に予熱したオーブンの天板に湯を張り、生地を流し入れた型をのせて30分。その後140度に落として25分焼く。(竹串を刺して何もつかなくなれば焼き上がり)』
「湯を張……え? 何これ、蒸し焼きなの?」
まさかの蒸し焼きと知り、心が挫ける。めんどくせぇ。
型に流してオーブンで焼けば良いと思っていたのだ。というか、今日までそういうケーキしか作ったことがなかった。蒸し焼きを示唆する表記に本気で面倒臭いと思った。
しかし、水切りまでしておいて「やっぱ作んのやめた!」というのも悔しい。
私は蒸し焼きを回避する方法を必死に探した。
そして、見つけた。答えは大好きなスフレチーズケーキのレシピにあった。
そのスフレチーズケーキの材料は偶然にも、ヨーグルトスフレケーキの材料とそっくりだった。
正確に言えばクリームチーズがヨーグルトに、コーンスターチが薄力粉に変更されただけだった。チーズケーキの方には香り付けのレモン汁と洋酒が必要だったが、問題ない。家にある酒はワインと日本酒と泡盛という、製菓に用いる(それも香り付け)には残念な品揃えだけども、幸いレモン汁はある。
これだ!!!
クリームチーズの分量が300グラムだったのも幸運だった。全ての分量を約半分にすれば良いのだ。なんて簡単なんだ! 挫けた心が回復した。
そんなこんなの紆余曲折があって完成したのが、こちらである。
見た目はアレだけれど、大事なのは味。文句は食べてから言うべき!
って、蘭ねぇちゃん(@『名探偵コナン』)がレモンパイを作った回で誰かが言ってた気がする。
個人的には大満足の大成功。
スフレチーズケーキに必要な砂糖が90グラムだったのでカロリーオフ目的で60グラムに変更。更に半分量の30グラムしか入れなかったので、甘さが劇的に控えめである。あまーいスイーツを満喫したい人に喧嘩売ってるレベルで甘くない。
けれど、レモンの爽やかな香りと酸味はしっかり味わえるので、満足感はある。
フォークを刺し入れるとシュワシュワ〜ぷちぷち〜と音がする程に空気を含んでいて、超絶柔らかい。ふわっふわ食感。まるで泡を食べているように軽い舌触りで、解けるように無くなってしまう。最早、歯が要らない。
全体的に、口に入れた瞬間「めっちゃヘルシー!!」となるケーキに仕上がった。
改善点……というか、次回作る時は是非とも洋酒を入れたい。ラム酒でもブランデーでも、コアントローでも良い。あと、もうちょっと砂糖を増やしても大丈夫かなーと思いました。
このケーキは本気で、冗談じゃなく『いくらでも食べられるケーキ』だと胸を張って言える。
除外したホイップクリームや粉砂糖をかけても、これなら小さい罪悪感で済みそうだ。ジャムを付けても良いし、フルーツのソースを垂らしても美味しそう。トッピングの幅が広がって、結局ハイカロリーになりそうだなぁ……。
(了)