魔女の子供はやってこない【ネタバレあり】
『タコピーの原罪』関連のツイートを漁っている際に見つけた作品。
表紙からマンガだと思いkindleで購入したら、なんと小説。
ツイートに「短編小説」と書いてあるのに、読み飛ばした自分の注意散漫ぶりを反省。
ただ、この作品はKindle Unlimitedでは無料で読めるためセーフ。
レーベルが角川ホラー文庫という時点でジャンルは推測できるが、想像を超える中身だったので書評を書いてみた。
正直『タコピーの原罪』よりも過激な内容で、一度読んだら忘れられない作品だと思う。
ちなみに表紙絵は『となりの801ちゃん』が有名な小島アジコ氏。
作品の内容的には10年以上前に更新されていた『orange star』の雰囲気にマッチしている。
(まだHPが残っていることに驚いた)
1.あらすじ
主人公の少女(小学生)は、砂場で魔法のステッキを拾う。
魔法のステッキには住所が書かれており、落とし物を届けるために主人公は友人と共にマンションを訪れる。
導入部分はマンガにありそうな展開。
ファンタジーのようなものを期待させるが、マンション内部の絵面はかなり汚い。
散らかった部屋と老婆、号泣しながら脱糞する青年男性。
そして、恐ろしく読みにくい文章。
冒頭から延々と「でした」や「ました」で終わる文章が続き、リズムが非常に取りにくい。
小説を読み慣れていない人は、数ページで脱落すると思う。
魔女の家に着いてからはテンポが早いため、スラスラ読めるが、作者のクセの強い文体が読み手に負担をかけているのは間違いない。
さらに、第3話目『雨を降らせば』では主人公たちが薬をキメるシーンがあり、読みにくい文体にトリップした描写が合わさり、何を読まされているのか分からなくなる。
久しぶりに挫折しそうになった。
2.Twitterで推されていた4話目
Twitterで推されていた4話目について。
簡単に言えば、アトピー性皮膚炎をホラーに転化した話。
自分はアトピー持ちなので分かるのだが、痒いと言う感覚は我慢するのがホントにツラい。
しかも、症状を抑えるためには掻くのを我慢しなくてはならない。
慢性的に身体のどこかを蚊に刺されている感覚だ。
我慢ができるはずがない。
そして、この話は掻きむしる描写とセリフがひたすら怖い。
作者もアトピー持ちなのでは?と思わせるくらい患者の言葉も重い。
掻いちゃいけないけど、掻いてしまう気持ちは分かる。
しかし、オチも含めてここまで過剰な描写にしなくても、と思わるほどの破壊力がある。
ホラー作品としての濃度が4話目でいきなり上がるのが凄い。
Twitterで宣伝していた理由も納得した。
幽霊やモンスターが出てくるホラーよりも、現実と地続き感のある話が一番怖い。
3.個人推しの5話目
友人の結婚式に参加するため、1週間ほど故郷の沖縄へ帰りたい主婦。
願いを叶えるために主人公は主婦の姿に変身して家事をこなす。
家事の大切を知るための作品だと予想して読んでいたが、オチはそんな良い話ではなかった。
ホラーからのサスペンス。伏線も回収されていて、話の完成度が抜群に高い。
特に「外からは幸せな家庭に見えても内側は違う」というよくあるテーマを扱いながらも、作者の悪意が光る演出が良い。
「主婦の大変さが分かった」と言う主人公に対して、いきなりキレ散らかすシーン。
家庭を持ったことで、自分の時間を奪われ、描いていた絵の精彩さも失われたところが非常にリアル。
よく考えると主婦で自分の部屋を持っている人は少ない。
そんな事実に気づいて気持ちが重くなった。
この話は、ミステリーとしても完成されているのでダウン後にパンチを喰らう衝撃があった。
4.まとめ
タコピーと魔女のこどもは
人間界の常識がない善意の生き物
魔法が使える
という点は似ていると思った。
異星人とのファーストコンタクトものとしては、どちらもブラックユーモアがあって面白いと思う。
ただ、作品としてはタコピーの方が一般受けする仕上がりとなっており、マンガというコンテンツなので物語に入りやすい。
さらに、タコピー以外は割と常識人なので、感情移入もしやすい。
魔女のこどもは読み手が引くほどの狂気を感じさせるが、文体が読みにくいためハードルが高い。
作者が鬼才であることは間違いないが、話の最後まで読み切れる人は少ないと思う。
狂ったシナリオの中の緻密さと、メッセージ性が伝わらないのが残念だ。
両作品を読んで、自分は魔女のこどもを推したいが、恐らくマニア向けの奇書として消えていくだろう。
(既にAmazonでは新品が手に入らない)
この作品の感想を誰かと共有したいのだが、リアルで人に勧めにくいのも悲しいところだ。
やはり、テーマに対して描写がキツ過ぎる。
最後に、記憶に残ったセリフを貼っておく。
13人がハイライトしていたので、みんなの心に響く言葉なのだろう。
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