
インロックで都会の迷い子になった話
冬の早朝、私はいつものように車を停め、荷物を降ろしていた。
急いでいたため、鍵をポケットに放り込むのを忘れて、車のドアを閉めてしまった。そして、その瞬間、私は自分の愚かさに気づいた。
ガチャン。
「しまった、鍵を車の中に置き忘れてしまった!」
一瞬何が起きたか分からず、数秒後に事態を理解した。
焦る気持ちと、冷や汗が止まらない。
車のドアはしっかりとロックされ、鍵は助手席のシートに置かれたままだ。
携帯電話と財布も車内にある。
近所の人々に助けを求めようかと考えたが、引っ越ししたばかりで知り合いはいない。
賃貸で隣近所に挨拶をする意味をこの時始めて理解した。
緊急時こそ頼れる知り合いが必要なのだ。
「これはマズいッ!」と焦りながら
まずは一呼吸置いて、手元にある荷物を確認した。
ポケットにハンカチ1枚
そして車内にあるものは
キーケース(車の鍵・家の鍵)
財布
スマートフォン
キーケースに家の鍵が付いているため、家に入ることは出来ない。
入れても固定電話と現金はない。
もし、公衆電話があっても現金がないので電話は出来ないのだ。
完全に詰んだ。
都会の中で漂流することになったのだ。
しばらくウロウロと町を徘徊し、交番へ行くことを思いついた。
困ったときは公共サービスを利用するに限る。
しかし、地元ではないため交番の場所が分からない。
場所を調べるためのスマフォも車内にあるので、検索手段がない。
泣きそうになりながら考えていると、1つの妙案が降りてきた。
「車のディーラーへ行こう」
半年前に車を乗り換えるために近場のディーラーを訪ねていたのだ。
セールスマンに事情を説明すると
「車の保険会社(ソニー損保)がインロックの解錠サービスも行っている」
と教えてくれた。
電話をお借りし、2時間後に車は無事解錠された。
ハイテクな機械で解錠すると思いきや、ハイエースに乗った鍵師さんが30分かけて開けてくれた。
こうして半日に渡る漂流経験は幕を閉じた。
教訓とした学んだのは
近所に知り合いを作ること
スペアキーは取り出せる場所に入れること
鍵は鞄に入れずにポケットに入れること
交番と公衆電話の場所は把握しておくこと
以上である。